給与と外注費の取り扱いにおける留意点

1.建設業と外注費の関わりについて

 建設業において社外協力者との連携による外注費の発生は不可避です。外注費は他の法人に対する支払いや独立した個人事業者に対する業務委託をした上で発生する原価又は費用であり、その計上は通常何ら問題のないものであります。
 人件費を内部の人材で賄うために要する費用としては、社会保障の安定財源の確保及び財政健全化の達成を目的に、2014年4月から消費税増税が実施されました。また、2019年10月からは更なる引き上げが予定されています。
 加えて社会保険に関しては、パートタイマーへの適用範囲拡大や建設業従事者の加入促進に向けた取り組みが進められています。
 このような状況の中で、コスト削減の目的から事実上の「給与支給者」を「個人事業主」として独立させ、「外注」として契約する対策を実施または検討している会社もあると思います。外注扱いとすることで、消費税や社会保険料を削減するためです。しかし、安易な給与支給者の外注化には注意が必要です。
 今回は、この給与と外注費の関係性について説明していきたいと思います。

2.給与支給者と外注費の関係性について

 形式上は請負契約を締結する等していても、その実態により給与支給者と判断される可能性があります。事実上の給与支給者を外注とすることにより問題となりやすいのが、業務の遂行中や現場までの移動中にケガをした場合、もしくは、会社から一方的に契約を解除されたような場合です。外注としてお互いに合意していたとしても「実態は給与支給者であった」との申し出が行われることがあり、それが認められれば労働基準法や労働者災害補償保険法の適用を受けることとなります。場合によっては、会社の責任が問われることがあります。税務調査により源泉所得税・消費税の追加納付が発生する可能性もあります。
 このように、実態とは異なる外注化は、一時的にコストを削減できるかもしれませんが、万が一の際、大きな損失を被るリスクを孕んでいます。では、実際に税金面から外注費を給与認定された場合どのような事態が生じるのか見ていきたいと思います。

3.外注費の危険性

 外注費は、建設業の他にも、ソフトウェア業、美容業などでよく目にする勘定科目なのですが、給与と似たものと考えられがちです。しかし、この2つの取り扱いを間違えると、「源泉徴収漏れ」、消費税が原則課税であれば「消費税仕入税額控除過大」など税務的に大きな問題が生じる可能性があります。

例)
 月額の報酬40万円(乙欄)の場合 
  源泉税の徴収漏れ 85,700×12月=1,028,400円
  消費税の納税額  400,000円×8/108×12月=355,548円
合計1,383,948円

 外注費が否認され、給与であると税務調査で判断されますと、1年間でこれだけの金額が納税になります。調査期間が3年間であった場合、その金額も3倍になります。加えて社会保険の加入について指摘される可能性も生じてきます。 税務調査でもよく争点になることからその区分は非常に難しいところですが、次は給与と外注費の違いについてご説明していきます。

4.給与と外注費の判断基準

 結論から申し上げますと、100%明確な区分をする方法はございません。
 そのため、税務調査などが入った際に争点になりやすいのですが、今までの判例などから、留意すべき点を挙げていきます。
 まず、基本的な考え方としましては、

 ・給与は「給与所得」として雇用契約に基づくもの
 ・外注費は「事業所得」として請負契約に基づくもの

 この場合の請負契約を結ぶ事業者は、自己の計算において独立して事業を営んでいる者をいいます。よって、一人親方などを常用工として雇っている場合に、雇用契約またはそれに近い契約に基づいているときは、給与として取り扱われる事があります。

 では、「独立して事業を営んでいる」とはどのように判断するのでしょうか。
消費税法基本通達1-1-1では、「…区分が明らかでないときは、例えば次の事項を総合勘案して判定するものとする。」とされております。

(1) その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか。
 外注であればA社に業務委託できなくとも代わりにB社に依頼し業務を遂行することが可能であるという事です。その人以外の他の人にもできる仕事であれば、外注費としての性格が強くなります。

(2) 役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか。
 給与支給者であればその会社により時間的、空間的な制約を受けているかどうかで判断されます。指揮監督を受けずに独立してその委託された仕事をしているのであれば、外注費としての性格が強くなります。

(3) まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか。
 例えば、A社がBさんに工事を依頼し、Bさんが災害などで工事等を完了できず、引き渡せない場合に、Bさんが独立して事業を営んでいるのであれば、BさんはA社に報酬を請求できません。この場合には外注費としての性格が強くなります。
 ただし、Bさんが社員のような立場だと、働いた分の報酬は請求することができますので、この場合には給与としての性格が強くなります。

(4) 役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか。
 作業にあたっての材料や用具を自分で用意していれば、外注費としての性格が強くなります。

5.実務上のポイント

 実態に即した取扱いをしている限り問題は生じないはずではありますが、冒頭で申し上げた通り、外注費ならば源泉徴収の必要はなく、原則課税であれば課税売上分の消費税額から外注にかかる消費税額を控除することができます。また、給与ですと、源泉徴収が必要な上に、消費税も控除することができません。そのような取り扱いがなされている以上、外注費として計上するためにはその事実関係を整理しておくことが重要になってきます。
 上記の4要件は判断の指針となるものですので、これらを満たしていなくても、直ちに給与になるものではありませんし、満たしたからといって、必ずしも否認されないものではありません。
 外注費と給与の判断は、非常に難しいもので、個々の状況に応じた判断が必要となります。ただ、請負契約書の作成や、労災保険など、本人が負担すべきものを本人に負担させるようにすることなど、自社の従業員とは区別し、一事業者として取扱うことが、全体を通して外注費として認められるための基本的な考え方となります。
 それぞれの契約の実態に応じて適切に処理することが最も重要となります。


maekawa_100 執筆者 
汐留パートナーズグループ
汐留パートナーズ株式会社 代表取締役
公認会計士(日米)・税理士 前川 研吾 氏

北海道大学経済学部卒業。公認会計士(日米)・税理士。
公認会計士試験合格後、新日本有限責任監査法人監査部門にて、建設業、製造業、小売業、金融業、情報サービス産業等の上場会社を中心とした法定監査に従事。
また、同法人公開業務部門にて株式公開準備会社を中心としたクライアントに対する、IPO支援、内部統制支援(J-SOX)、M&A関連支援、デューデリジェンスや短期調査等のFAS業務等の案件に数多く従事。
2008年4月、27歳の時に汐留パートナーズグループを設立。
税理士としてグループの税務業務を統括する。

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