ジョイント・ベンチャーについて

1. はじめに

 ジョイント・ベンチャーとは本来、複数企業が共同で出資を行い、新規事業を立ち上げる合弁企業「Joint venture」を指しますが、今回は建設業におけるジョイント・ベンチャー(共同企業体とも呼ばれますが、以下「JV」とする。)についてその概要や独特の慣行、会計処理についてまとめてみました。

 

2.JVの概要

 共同企業体運営指針によると「共同企業体は、複数の構成員が技術・資金・人材等を集結し、工事の安定的施工に共同して当たることを約して、自主的に結成されるものである。」とされています。JVは民法上の組合と考えられており、権利義務の帰属主体となるのはJVではなく各構成員となります。

 JVを設立することによるメリット・デメリットは以下のようなものがあります。

(1)メリット

  • 大規模構造物のうち得意分野のみで受注することが出来るための技術の拡充・強化
  • 資金面や経営不振、天災等のリスク負担の軽減
  • 業者同士の連携、協力、連帯責任により工事の施工の確実性
  • 工事の受注可能性の拡大

(2)デメリット

  • 各構成員間における調整が必要
  • 代表業者における他のJV業者に対する定期的な進捗状況の報告義務
  • 工事が小規模である場合は非効率
  • 完成後における瑕疵責任の所在

3.JVの種類

 JVはその目的、施工方式によりいくつかの種類に分類されます。以下でそれぞれの特徴をまとめてみました。

(1)その目的に応じた区分

①特定建設工事共同企業体

 工事毎に結成される企業体となります。大規模かつ技術的難易度の高い工事の施工に際して、それぞれの技術力等を集結することにより工事の安定性を確保するために結成する共同企業体です。

 具体的な対象工事は高速道路、橋梁、トンネル、ダム、空港等の大規模なものであり、少なくとも5億円は下回らないものに限られます。

【構成員の要件】

 その構成員においても資格があり少なくとも次の3要件を満たす必要があります。

イ、当該工事に対応する許可業種につき、営業年数が少なくとも数年あること

ロ、当該工事を構成する一部の工種を含む工事について元請として一定の実績があり、当該工事と同種の工事を施工した経験があること

ハ、全ての構成員が、当該工事に対応する許可業種に係る監理技術者又は国家資格を有する主任技術者を工事現場に専任で配置しうること

【代表者の選定】

 代表者は施工能力の大きい者で出資比率は構成員中最大とされています。

②経常建設共同企業体

 中小・中堅建設企業が継続的な協業関係を確保することにより、その経営力や施工力を強化する目的で結成するJVを言います。

 ただし、近年では下記の地域維持型建設共同企業体などの影響もあり、経常建設共同企業体結成による組織規模の拡大が必ずしも受注機会の増大につながらない事例も見受けられるため、経常建設共同企業体を解散するケースもあります。

【構成員の要件】

 その構成員においても上記同様に資格があり少なくとも次の3要件を満たす必要があります。

イ、登録部門に対応する許可業種につき、営業年数が少なくとも数年あること

ロ、当該登録部門について元請として一定の実績を有することを原則とする

ハ、全ての構成員に、当該許可業種に係る監理技術者となることが出来る者又は当該許可業種に係る主任技術者となることができる者で国家資格を有する者が存し、工事の施工に当っては、これらの技術者を工事現場毎に専任で配置しうること

【代表者の選定】

 代表者は、構成員において決定された者とし、その出資比率は、構成員において自主的に定めるものとします。

③地域維持型建設共同企業体

 建設投資の大幅な減少等に伴い、地域の建設企業の減少、小規模化が進み、地域における最低限の維持管理までもが困難な地域が生じかねない状況にあります。そのような地域の複数の建設企業の共同を促すことにより、施工の効率化と必要な施工体制の安定的な確保を図り、地域の維持管理が持続的に行われるよう、地域維持事業の実施を目的に、地域精通度の高い建設企業で構成される共同企業体をいいます。

【構成員の要件】

 その構成員においては、4要件を満たす必要があります。

 3要件は上記2共同体とほぼ同じですが、更に「地域の地形・地質等に精通しているとともに、迅速かつ確実に現場に到達できること」とされており、他の2共同体とは異なる点を有しています。

【代表者の選定】

 代表者は、構成員において決定された者とし、その出資比率は、構成員において自主的に定めるものとされています。

(2)施工方式による区分

 またJVをその施工方式によって分類すると、以下に分類されます。

  • 共同施工方式(甲型共同企業体)

 共同施工方式とは、共同企業体協定書において各構成員企業の出資割合を取り決め、これに応じて資金、人員、機材などを拠出して施工を行う方式をいいます。この場合、出資割合(JV比率)に応じた損益項目が、各社の決算に取り込まれることになります。

  • 分担施工方式(乙型共同企業体)

 分担施工方式(乙型共同企業体)とは、共同企業体協定書において各構成員の分担工事額を取り決め、工事箇所別などに分担してそれぞれ施工する方式をいいます。一般的には、JV全体での損益計算や実行予算の作成などは行われません。

 ただし、分担施工方式においても、各構成員は工事全体に対して連帯責任を負い、この点においては共同施工方式との違いはありません。

 具体的な処理の方法としては、共同施工方式の場合は、工事全体を出資割合で乗じて、完成工事高、工事原価を計算することとなります。一方、分担施工方式の場合は、分担した工区ごとでの請負金額で完成工事高を計上し、その工区で発生した原価を工事原価として計上します。共通経費の配分はありますが、基本的にはそれぞれの工区で発生した原価が工事原価となります。

 このように、共同施工方式では工事全体にそれぞれの出資割合を乗じて計算するのに対し、分担施工方式ではそれぞれの担当工区部分のみをそのまま計上するという点が主な違いとなります。

4.おわりに

 今回はJVの概要や種類について、簡単にまとめてみました。JVはその目的に応じて自主的に結成している組合となります。JVを結成することによるメリット、デメリットは法人ごと、工事ごとによりそれぞれ異なりますので、事前に綿密な協議をすることが重要かと思われます。今回はあまり触れられなかったのですがJVにおける会計処理は大規模工事であることが多いため、その影響が大きくなります。そのためその処理方法において事前に取り決めをしておくことが肝要になります。次回はJVの会計処理についてお話させて頂きたいと思います。

maekawa_100 執筆者 
汐留パートナーズグループ 汐留パートナーズ株式会社 代表取締役 公認会計士(日米)・税理士 前川 研吾 氏 北海道大学経済学部卒業。公認会計士(日米)・税理士。 公認会計士試験合格後、新日本有限責任監査法人監査部門にて、建設業、製造業、小売業、金融業、情報サービス産業等の上場会社を中心とした法定監査に従事。 また、同法人公開業務部門にて株式公開準備会社を中心としたクライアントに対する、IPO支援、内部統制支援(J-SOX)、M&A関連支援、デューデリジェンスや短期調査等のFAS業務等の案件に数多く従事。 2008年4月、27歳の時に汐留パートナーズグループを設立。 税理士としてグループの税務業務を統括する。

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掲載日 2017年04月20日

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