建設産業をめぐるIT施策の動向と今後の戦略

東京
2017/03/15

2017年2月14日に開催しました株式会社日刊建設通信新聞社 取締役 編集局長 秋山 寿徳 氏の「建設産業をめぐるIT施策の動向と今後の戦略」セミナーについてレポートいたします。

建設産業をめぐるIT施策の動向と今後の戦略
建設産業をめぐるIT施策の動向と今後の戦略

【目次】
◆国土交通省 i-Construction
◆建設産業とIT施策は「切っても切れない関係」の訳
◆IT施策による建設産業の未来像とは

 建設業界は、人口減少と高齢化に伴う将来の担い手確保・育成を見据え、処遇改善や生産性向上に本腰を入れて行政や関係機関と連携した取り組みを進めております。
「担い手確保・育成」「生産性向上」は、喫緊かつ最重要の大命題となっており、現場にはIT を活用した新たな潮流が示されております。
 本セミナーでは、建設産業をめぐる施策の動向とゼネコンなどの今後の戦略について株式会社日刊建設通信新聞社・編集局長の秋山様よりお話をいただきました。

建設産業をめぐるIT施策の動向と今後の戦略

▲ 株式会社日刊建設通信新聞社
  取締役 編集局長 秋山 寿徳 氏

国土交通省 i-Construction

生産性向上に関する経緯

 昨年、平成28年1月の会見で、国土交通大臣が「生産性革命元年」を表明しました。
そして「生産性革命プロジェクトの推進」を打ち出しました。

国土交通省生産性革命プロジェクトの推進

生産性革命プロジェクトの推進」の中で、経済成長は生産性と労働者等によって成り立っており、今後の労働者の減少を上回る生産性革命に取り組むとしています。

国土交通省生産性革命プロジェクトの推進

出典:国土交通省「i-Constructionの推進」より

生産性革命プロジェクト13

 具体的には「生産性革命プロジェクト13」で、社会ベース、産業側、未来型、3つの切り口で13のプロジェクトを掲げています。
例えば首都圏の高速道路料金や、民泊まで入っています。なぜこんなに網羅的かというと、そのような名称を掲げないと予算確保が難しいからです。
要は「インフラのストック効果」プラス「新しい投資」で経済成長につながることを安倍政権、省内、財務省に理解してもらうためのものです。

 生産性革命プロジェクト13 -国土交通省生産性革命本部(本部長:石井大臣)決定 

(1)「社会のベース」の生産性を高めるプロジェクト

  • 生産性革命に向けたピンポイント渋滞対策
  • 首都圏の新たな高速道路料金の導入による生産性の向上
  • クルーズ新時代に対応した港湾の生産性革命プロジェクト
  • コンパクト・プラス・ネットワーク~密度の経済で生産性を向上~
  • 土地・不動産の最適活用による生産性革命

(2)「産業別」の生産性を高めるプロジェクト

  • 本格的なi-Constructionへの転換
  • 新たな住宅循環システムの構築と住生活産業の成長
  • i-Shippingによる造船の輸出拡大と地方創生
  • オールジャパンで取り組む「物流生産性革命」の推進
  • トラック輸送の生産性向上に資する道路施策
  • 観光産業を革新し、我が国の基幹産業に(宿泊業の改革)

(3)「未来型」投資・新技術で生産性を高めるプロジェクト

  • 急所を事前に特定する科学的な道路交通安全対策
  • インフラ海外展開による新たな需要の創造・市場の開拓
    ~成長循環型の「質の高いインフラ」の積極的海外展開~

出典:国土交通省「i-Constructionの推進」より

最近の政府の取組(働き方改革と未来への投資)

 もう一方の話として働き方改革があります。こちらの一番のポイントは「未来投資会議」です。
第1回会議が昨年の9月12日に開かれ、「建設業の未来投資と課題」がテーマとなりました。
ここが最大の変換点であるといわれています。

 最近の政府の取組(働き方改革と未来への投資) 

働き方改革実現会議

  • 働き方改革の実現を目的とする実行計画の策定等に係る審議に資するため、働き方改革実現会議を設置
  • 働き方改革は、一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジ。多様な働き方を可能とするとともに、中間層の厚みを増しつつ、格差の固定化を回避し、成長と分配の好循環を実現するため、働く人の立場・視点で取り組むとしている。

【第1回会議(9月27日)における総理発言(抜粋)】

  • 『働き方改革』のポイントは、働く方に、より良い将来の展望を持っていただくこと
  • 働き方改革こそが、労働生産性を改善するための最良の手段
  • ロボットからビッグデータ、AIまで、デジタル技術の活用が進む中で、働き方も間違いなく変わってきます。

未来投資会議

  • 第4次産業革命をはじめとする将来の成長に資する分野における大胆な投資を官民連携して進め、「未来への投資」の拡大に向けた成長戦略と構造改革の加速化を図る
  • 「産業競争力会議」及び「未来投資に向けた官民対話」を発展的に統合した成長戦略の司令塔として設置。

【第1回会議(9月12日) テーマ】
建設業の未来投資と課題
※石井国土交通大臣がi-Constructionの取組を説明。

出典:国土交通省「i-Constructionの推進」より

第1回未来投資会議総理発言(9月12日)

 第1回会議での安倍総理の発言では、
「第4次産業革命の考え方に基づいて建設現場の生産性革命をします。」
「そして建設現場の生産性を2025年までに20%向上させます。」
「そのために3年以内に橋・トンネル・ダム、あらゆるものについてICTを導入します。」
「簡単に職人を育てられるようにし、結果的に人手不足も解消します。」という内容がありました。
この発言によって建設産業のIT施策の取り組みがほぼ決定的になったのです。

第1回未来投資会議総理発言(9月12日)

出典:国土交通省「i-Constructionの推進」より

i-Construction ~建設業の生産性向上~

 一方で、「i-Construction ~建設業の生産性向上~」という話があります。
これは、「生産性革命プロジェクト13」とは別に、今の建設業が置かれている状況から建設産業界と取り組まなければならない話からきているもので、より具体的になっています。
測量・施工・検査、よくいわれている一気通貫のビジネスモデルを提供していこうということです。

i-Construction ~建設業の生産性向上~

出典:国土交通省「i-Constructionの推進」より

ICTの全面的な活用(ICT土工)

 また、ICT土工の全面的な活用も掲げています。
なぜ橋梁やダムでなくて土工なのか。なぜ地元の建設業を対象にしているのか。
それは、中小企業がIT化を進めなければ全てが進まないからです。
中小企業のIT化を取っ掛かりとして全面展開していくことが望ましいのです。
少なくとも大手ゼネコン、準大手、中堅などの上場企業については自分たちでやっていけるからです。

ICTの全面的な活用(ICT土工)

出典:国土交通省「i-Constructionの推進」より

i-Constructionの拡大に向けて

 土工以外でも3年以内に橋梁・トンネル・ダムについてもICT活用を拡大し、公共工事に3DデータやAI、ロボットを活用していくとしています。
これは、民間ではとっくに進んでいたものですが、ようやく公共が後追いで対応のための基準類の整備を始めたところである。というのが実状です。

i-Constructionの拡大に向けて width=

出典:国土交通省「i-Constructionの推進」より

工種別の生産性の現状

工種別の生産性の推移を見ると、土工については50年間ほぼ横ばいです。
生産性が向上していないところから取り掛かると非常に数値が上がったように見えるし、成果が見えます。
土工と同様、生産性向上が進んでいないコンクリート工も、工場生産でプレキャストのコンクリートを拡大していくという話です。

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出典:国土交通省「i-Constructionの推進」より

i-Construction トップランナー施策

 例えば橋梁・トンネルについて5年に1回の点検を義務づけていて、1,800の全自治体が工物管理者として全て点検しなければいけません。
ところが法律上はドローンを使って検査結果が出たとしても、最後は必ず目視で点検しなければいけません。二重の手間ではないでしょうか。
恐らく今後法改正されていくと思いますが、このような改善が順次行われていくと思います。

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出典:国土交通省「i-Constructionの推進」より

i-Construction トップランナー施策の着実な推進

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出典:国土交通省「i-Constructionの推進」より

建設業とIT施策「切っても切れない関係」

建設業とIT施策「切っても切れない関係」の理由1

 建設業とIT施策は切っても切れない関係。とはどういうことなのか。
 1つ目の理由はこのIT施策が、国土交通省や業界の問題というのではなく、国策であるという点です。
根底には人口減少、高齢化があり、先進国でこの2つが同時進行で進んでいるのは初めてだといわれています。
人口が減ることのデメリットをどう考えるか。主導しているのは経済産業省です。
昨年「新産業構造ビジョン」の中で、その後の成長戦略にも謳われている第4次産業革命、IoT、ビッグデータ、AI、ロボットを打ち出しています。
このビジョンの最大の特徴は、産業は新陳代謝しても延命は認めないということです。
淘汰もあるかもしれないがそれは止むを得ない、経済産業省のこのビジョンやその中の議論でもそのような話になっています。

 建設産業とIT施策「切っても切れない関係」の訳 その1 

IT施策と生産性向上は「国策」

  • 根底には日本の人口減少と高齢化(先進国のモデルケースに)
  • 初めて直面する「人口ボーナス」から「人口オーナス」
     ⇒経産省主導で、上記を踏まえた新たな成長戦略を安倍政権が決定
  • 2016年春に「新産業構造ビジョン」。その後の日本再興戦略(成長戦略)に反映
  • 第4次産業革命 IoT・ビッグデータ・AI・ロボット
     ⇒ビジョン最大の特徴
  • 「産業は新陳代謝 延命認めず」

出典:日刊建設通信新聞社「建設産業とIT施策」より

建設業とIT施策「切っても切れない関係」の理由2

 2つ目の理由として、先ほどのビジョンの中に7つの対応方針がありますが、ここでも地域経済と中小企業の関係をどうするかが最大の焦点でした。
経産省は中小企業庁を抱えていますから中小企業政策は彼らの問題だという意識です。
ところが、国土交通省も同じことを抱えています。

 国土交通省は、工事や業務の委託も含めて発注する発注行政という役割があります。
それと建設業許可を所管していますから規制官庁です。
ところがこの30年来もう1つ、建設産業界を健全に発展させる産業行政という視点を自分たちでつくりました。
今は、産業行政と発注行政という2つの視点があります。

 産業行政の視点で中小企業、地方の建設業を守るというのが今の国土交通省のスタンスです。
ですから先ほどの経産省の動きに連動するような形で、IT化はもう止むを得ない、生産性も上げなければいけない、その中で自分たちは中小企業をなんとか支援したい。
国のほうで淘汰もありうるかもしれないと言ったとしても、認めるわけにいかないという姿勢が前面に出ているわけです。
これが過去との大きな違いだと思います。

 建設産業とIT施策「切っても切れない関係」の訳 その2 

「国策」 これから7つの対応方針

  1. 1. データ利活用促進に向けた環境整備
  2. 2. 人材育成・獲得、雇用システムの柔軟性向上
  3. 3. イノベーション・技術開発の加速化(Society5.0)
  4. 4. ファイナンス機能の強化
  5. 5. 産業構造・就業構造転換の円滑化
  6. 6. 第4次産業革命の中小企業、地域経済への波及
  7. 7. 第4次産業革命に向けた経済社会システムの高度化

出典:日刊建設通信新聞社「建設産業とIT施策」より

建設業とIT施策「切っても切れない関係」の理由3

 3つ目の理由として、なぜ建設産業がトップランナーになのかが関係します。
1つは成果が手っ取り早いからであり、もう1つは労働生産性が高度成長期以降向上していないからでもあります。
ビッグデータやAIやロボット、あらゆるものが建設工事に適用できることも関係します。

 交通流量を含めたビッグデータの活用の話もあります。
それから今国内産の準天頂衛星を飛ばして、アメリカのGPSに頼らずに非常に高度な位置確認ができるようすると、自動車の自動運転が可能になるといわれています。
ロボットは介護と同じで補助システムのようなものです。
AIについても一部のゼネコンで研究開発が始まっていますが、例えば生産工程、職人たちの段取りや知恵を追跡して自動解析し、新人の教育に利用するシステムであったり
AIを使って事故につながらない行動の分析、生産性の上がる段取り等の開発が進んでいます。

 また、インフラの老朽化が本当に待ったなしの状態です。
新設を含め、民間と違ってある程度費用を負担できる「公共工事」がこの部分で牽引しやすいこともあります。
目先と将来の人材確保の懸念もありますから、生産性向上の必要性を建設産業界全体が自覚しています。
さらに、既存の建設産業とIT企業などの新規参入企業とが競合関係にないということです。
これについては、裏を返せば、今までどおりだと新規参入企業に利益を奪われる可能性があるということでもあります。

 建設産業とIT施策「切っても切れない関係」の訳 その3 

手っ取り早い成果として「建設産業」をトップランナーに

  • 労働生産性が高度成長期以降、向上していない
  • ICT、ビッグデータ、AI、ロボット全てで適用が可能
  • インフラ老朽化対応、新設整備含め公共がけん引しやすい
  • 目先と将来の人材確保懸念と生産性向上の必要性を産業界も自覚
  • 既存建設産業とIT企業など新規参入企業で競争がない

出典:日刊建設通信新聞社「建設産業とIT施策」より

IT施策による建設産業の未来像

今後も確実なこと

 建設産業の未来像、将来像はどういうものなのになるでしょうか。

 1点目に言えるは、人口が減るのですから1人当たりのGDP額は必ず向上させる必要が出て来ます。
向上できなければ国の経済力が落ちてしまいます。

 2点目としては、個別企業についても上記の考えが必要になります。
ポスト五輪といわれる2020年以降に市場が縮小均衡に転じたとしても、個社にとっての売上が増えなくても利益を追求しなければいけません。
そのためには生産性向上に取り組まざるを得ません。

 3点目、「働き方改革」により、今まで適用除外だった建設・運輸にも残業上限60時間の規制がかかることをどう考えるか。
現場によっては、設計部隊、構造計算、設計事務所、コンサル含めて月の残業時間が100時間越えるのは結構当たり前に起きています。
ところが電通の事件以降、特に話題に上がる残業時間について規制がかかるわけです。
果たして現実的に対応できるのか。
建前上は建設業界のリーディングカンパニーが率先して4週8休を含めて残業時間の規制にも取り組むと思います。
大きな会社は対応できますが、対応できないような中小企業、業務を請け負っているコンサルタント、設計事務所の一部もあります。
この対応をどうするのかが、これから課題になるだろうと思います。

 4点目は、人材獲得で今も建設業は産業間競争に負けていることです。
最初の獲得で負けて、入社後3年の離職率が非常に高いのも建設業の特徴です。
処遇改善でいうと賃金、休日、具体的には4週8休。そのためには業務効率を上げなければいけない。
つまり生産性向上が最大の課題になるということです。

 5点目、行政が動き出したこのIT施策の歯車はもう止まらない。ということです。
国策として、新しい産業・新しい業態を打ち出さなければいけないのです。
もう1つの生産性向上についても各産業界で考えなければ労働力減を賄えないわけですから、この歯車はもう止まらないということです。

 6点目が、公共がIT施策に舵を切った以上、大手から中小・零細企業まで影響は避けられないということです。
ここで問題なのは、全国で700件程度のICT土工のほとんどの工事は企業側が「やりたいです」といって受注する手挙げ方式です。
手挙げですから自前で設備投資していますが、年間1件あるかないかの工事でその投資を回収できるのか、直轄だけで賄えるのかどうか、自治体がやってもらわなければ困ります。
東京都の場合は多摩地区を除いてドローンも飛ばせませんし、電波状況の問題もあり、そういった案件があるかどうか。も重要になります。 地方の場合には自治体が踏み切れるかどうかも関係するでしょうし、踏み切れるまでかかるだろう期間、企業が耐えられるかどうか。と言う問題もあります。
国土交通省がどれだけ目配りできるかもポイントとなって来ます。

 IT施策による建設産業の未来像 今後も確実なこと 

今後も確実なこと

  1. 1. 短中期で国の経済力(GDP)を維持・向上するためには、1人当たりGDP額を向上しなければならない。
  2. 2. 上記の考えは個別企業にとっても同様。仮に市場が縮小均衡に転じても、生産性向上で対応が可能。
  3. 3. 働き方改革 残業上限など規制は確実に強化
  4. 4. 処遇改善が進まず人材獲得の産業間競争に負けている
  5. 5. ICT土工など動き出した施策の歯車は「止まらない」
  6. 6. 公共がIT施策に舵を切ったことで、大手から中小・零細企業まで影響は避けられない

出典:日刊建設通信新聞社「IT施策による建設産業の未来像」より

IT施策は建設産業に何をもたらすのか

 IT施策は建設産業に何をもたらすのか。
これは個人的な考えですが基本的に第4次産業革命、IoTは究極の囲い込みではないのでしょうか。
囲い込みというのは、まず一気通貫で顧客を囲い込む「囲い込み」があります。
もう1つは構造として、元請け側のゼネコンが、今後の市場の縮小・労働力の減少を見据えた場合に、供給力を維持するため是が非でも一定程度の組織を強固にする必要からの「囲い込み」です。ゼネコンでいうとまさにこれが囲い込みです。
このように「囲い込み」が今後更に強くなるだろうと思います。

 ほかに、発注者・顧客の変化が建設業界を変えていくということがあります。
例えば一品受注生産だ、屋外生産だ、労働集約型生産だ、こういう産業特性だから生産性が進まないと、よく言い訳で言われます。
ただしこれからの生産は、先ほどの生産性革命の中のPC化のライン生産性を含めてもっと自動化ができないのか、ロボット化やAIの活用ができないのか。
すでに国土交通省がここに着目して、規格・基準の見直しで製品の拡大を打ち出しています。
3年を目処にということですからまだ少し時間がありますが、いずれにしてもここらへんは全部変わってくると思います。

 IT施策による建設産業の未来像 

①囲い込み方はさまざま

  • ICT土工で建機メーカーが本来の商品以外として別サービスとして、調査・測量から設計、施工、検査、維持管理、更新までの一気通貫でクラウドサービス提供。
  • BIM(ビルディングインフォメーションモデリング)拡大に伴い、ソフト開発企業が囲い込み。
  • 元請けの建設業は実際の建設工事を担う専門工事会社との組織「協力会組織」強固にして供給力維持。

出典:日刊建設通信新聞社「IT施策による建設産業の未来像」より

 もう1つ、これは民間の発注者と請負い側との関係で大きく変わってくる話です。
よく言われるのが「コンカレント・エンジニアリング」というもので、設計から製造までのさまざまな業務を同時並行で進め、業務の短期化をする手法です。
これと同時に今ゼネコンに何が求められているか。単純に施設の計画をして建設をして引き渡す役割だけではありません。
どう資金調達をしたらいいのか、できたあとの最適なメンテナンスはどうしたらいいのか、いつ設備の更新をしたらいいのかを含めて、最初の計画に織り込んでいく必要があります。

トータルのマネジメント能力が問われるのです。ゼネコンの役割でこの要求水準に応えられません。

一番の鍵は設備です。設備も大きく分けて電気、管、空調とありますが、すべてを揃えていないとこの要求水準に応えられません。
設備企業を抱えているゼネコンもありますが、「資金調達」「メンテナンス」「更新計画」の3つ全てを持った企業は存在しません。
手っ取り早いのは、欠けている業態をM&Aで強化していくこと、もしくは既存の設備企業との連携を強化していくこと、2つに1つです。
こうしたことに対応できるのはスーパーゼネコンといわれる5社プラス数社しかないと思います。
これからは価格だけではなく、こういう要求水準に応えられる企業とそうでない企業が出てきます。
要求水準に応えられない企業ではどうするかということが、これからのポスト五輪を含めて大きな話になると思います。

 IT施策による建設産業の未来像 

②顧客(発注者)の変化が建設産業を変える

  • これまでは「一品受注生産」「現地屋外生産」「労働集約型生産」の産業特性
     しかし⇒ライン生産、自動化、ロボット化、AI活用も視野に規格・基準の見直しでPC製品拡大。職人の段取りや技能、安全などの経験値もAIが吸収し、現場に展開を目指す企業も
  • 製造業で広がるコンカレントエンジニアリング(設計から製造までのさまざまな業務を同時並行で進め業務の短期化をする手法)に対応できるかどうかが、受注のカギ。
     ⇒3次元のBIMやCIMへの対応はトータルの一部。建設業は施設建設だけに止まらず維持管理・更新まで含めたトータルマネジメント提案能力が求められている。そのためには、ゼネコン・設備の棲み分けも必要ない時代に

出典:日刊建設通信新聞社「IT施策による建設産業の未来像」より

 次に、最大の企業数を誇る中小企業をどうするのかという話です。
今、関東地整でいうと利根川のあたりで試行工事をしています。
河川や、田舎のほうでこのうような工事が進むことが考えられます。

 もう1つ、国際会計基準(IFRS)を日本基準に適用させることが既に決まっています。
そもそも論については、もうパブリックコメントが出ていますが、基本的に中小企業に対しては日本の中小企業会計との整合性をどうするのか。
もう1つは、国土交通省の経営自己審査の前提は単体重視ですが、IFRSが導入された場合に連単は分離ということもあるかもしれない。
でもそうすると連結と単体で収益にかなりの差が出てくる可能性も出て来ます。
これはIT施策とは別に、国土交通省がこれから知恵を悩ませなければいけない話です。

 次に、設備投資による生産性向上の果実を実感できるかどうか。
きちんと設備投資した分、収益に寄与できるかどうか。また、取り組みによって人材確保と育成にも効果が出るのかどうか。
ここがこれからの建設業界、建設業個社にとって最大の問題だと思います。

 IT施策による建設産業の未来像 

③IT施策に中小企業はどう対応

  • だから直轄C等級対象にICT土工を開始
     ⇒ただ全地整で今年度700件程度。今後も河川流域中心に。ただ都内での導入は上空規制や電波問題で無理。
     ⇒IT施策とは別の要因でIT取り組みが必要になる要因
  • IFRS(国際会計基準)の日本基準適用で、今後中小企業向け会計基準にも影響可能性。現行の完成工事基準がどうなるか。
  • 設備投資による生産性向上の果実を実感できるかどうか
  • 取り組みによって人材確保と育成にも効果がでるのかどうか

出典:日刊建設通信新聞社「IT施策による建設産業の未来像」より

さいごに

 最後の結論は「個社のそれぞれの対応が分かれるのは確実」ということです。
国や業界団体が様々な取り組みをしたり様々な案を出したりすると思いますが、最終的にはそれぞれの個社の対応になってきます。
国土交通省も過去のように全てを救うことを目指しているわけではありません。手挙げ方式にしたのはそういう理由です。
これから手挙げ方式でICT土工を指定する案件が増えてきます。
そうすると最初に導入した企業はそのインセンティブでどんどん工事が取れていく仕組みが出てくるはずです。
ですからやはり、個社それぞれの対応が分かれていくのが確実ではないか。というのを私の最後の結論といたします。

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