建設産業の最新動向 生産性向上や働き方改革への取り組み

NEW 東京
2017/11/08

2017年9月15日に開催しました株式会社日刊建設工業新聞社 事業本部 取締役待遇 事業局長 田野口 美秋 氏の「建設産業の最新動向 生産性向上や働き方改革への取り組み」セミナーについてレポートいたします。

建設産業の最新動向 生産性向上や働き方改革への取り組み
建設産業の最新動向 生産性向上や働き方改革への取り組み

【目次】
◆我が国の建設投資の現状等
◆生産性革命
◆◇i-Constructionの推進  
◆◇インフラメンテナンス革命

 国土交通省は2017年を「生産性革命元年」と位置づけ、生産性革命に取り組む姿勢を打ち出しました。
 人口減少、急速な高齢化が進む中で、賃金水準向上、休日拡大などによる働き方改革とともに、生産性の向上が不可欠です。国土交通省では、すべての建設生産プロセスでICTを活用するi-Constructionを打ち出し、建設現場の生産性向上を図ろうとしています。
 本セミナーでは、建設産業の最新動向、生産性向上や働き方改革への取り組みについて株式会社日刊建設工業新聞社・事業局長の田野口様よりお話をいただきました。

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▲ 株式会社日刊建設工業新聞社
  事業本部 取締役待遇
  事業局長 田野口 美秋 氏

我が国の建設投資の現状等

建設業界の現状と社会資本の老朽化

 建設投資額はピーク時の1992年度84兆円から、リーマンショック後の2010年度は42兆円にまで落ち込みましたが、その後、増加に転じ、2016年度には52兆円になりました。建設業者数は2016年度末で47万業者、ピーク時の1997年から実に23%も減りました。建設業就業者は1997年が685万人で、2010年は498万人、2016年は492万人、横ばいのように見えますが、そのうち技能労働者は326万人に過ぎません。
 建設就業者の高齢化も進行しています。55歳以上が約34%なのに対し、29歳以下は11%、しかも今後10年間で、かなりの数が引退します。それを補う若年労働者を確保できません。入社しても定着しないという問題があります。
 一方、社会資本の老朽化は一段と進んでいます。高度成長期以降に整備された道路、橋、トンネル、河川、下水道、港湾など建設後50年以上経過する施設が今後は加速度的に増えていきます。

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出典:国土交通省「建設業の現状について」より

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出典:国土交通省「建設業の現状について」より

生産性革命

2017年を「生産性革命元年」と位置づけた

 国土交通省は、こうした状況・データを踏まえ、2016年3月7日、生産性革命本部を立ち上げました。狙いは労働者の減少を上回る生産性の向上を果たし、経済成長を実現させようというもので、2017年を「生産性革命元年」と位置づけました。国土交通省を挙げて生産性革命に取り組む姿勢を打ち出したわけです。
 三つの切り口があります。一つ目は「社会のベース」の生産性を高めるプロジェクト、二つ目は「産業別(業種別)」の生産性を高めるプロジェクト、三つ目は「未来型」の投資・新技術で生産性を高めるプロジェクトです。
 具体的には、「社会のベース」はピンポイント渋滞対策、高速道路を賢く使う料金、クルーズ新時代の実現、コンパクト・プラス・ネットワーク、不動産最適活用の促進、インフラメンテナンス革命、ダム再生、航空インフラ革命、「産業別」はi-Constructionの推進、住生活産業の新たな展開、i-Shippingとj-Ocean、物流生産性革命、道路の物流イノベーション、観光産業の革新、下水道イノベーション、鉄道生産性革命、「未来型」はビッグデータを活用した交通安全対策、「質の高いインフラ」の海外展開、クルマのICT革命、気象ビジネス市場の創出で構成されています。

i-Constructionの推進

建設現場の宿命を打ち破る三つの視点

 建設現場は「一品受注生産」「現地屋外生産」「労働集約型生産」という宿命があり、自動化・ロボット化などの生産性向上策に取り組むのが難しいとされてきました。こうした宿命を打ち破る視点として国土交通省は「建設現場の工場化」「建設現場へのサプライチェーンマネジメントの導入」「建設現場の二つの『キセイ』の打破」の三つを打ち出しました。キセイとは書類による納品などの「規制」と年度末に工期を設定するなどの「既成概念」を意味します。

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出典:国土交通省「i-Construction~建設現場の生産性革命~参考資料」より

建設現場へIoT を導入

 建設現場の宿命を打破するために建設現場へIoT を導入します。具体的には第1 に衛星測位技術、ICT情報通信技術を使って建設プロセス全体のシームレス化を図り、効率的なサプライチェーンマネジメントを導入することです。現状は設計と現場の不一致が目立ち、「こんな図面では施工できませんよ」といったことが日常茶飯事です。こうした問題・課題を解決するために調査・測量→設計→施工→検査→維持管理・更新の建設生産プロセスの各工程を滞りなく円滑に進めるとともに、サプライチェーンマネジメントを導入し、全プロセスを統合的に管理していこうということです。調査・測量から維持管理・更新までのプロセスが鎖のようにつながっているので、サプライチェーンと呼びます。

あらゆる建設生産プロセスで3次元データを導入

 第2 に、あらゆる建設生産プロセスに3次元データを導入することで、ICT建機など新技術を活用し、コンカレントエンジニアリングやフロントローディングの考え方を取り入れていくことです。難しい言葉が並んでいますね。コンカレントエンジニアリングとは、すべての部門の人材が集まり、みんなで討議しながら作業を進めていくこと、フロントローディングとは後工程で起こりそうなことを前倒しで、いろいろ想定して検討を進めておくことです。設計と現場の不一致が少なくなります。

設計段階に全体最適設計の考え方を導入

 第3 に、工場や現場の作業を最適化するサプライマネジメントを実現するため、設計段階に全体最適設計の考え方を導入することです。

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出典:国土交通省「i-Construction~建設現場の生産性革命~参考資料」より

すべての建設生産プロセスでICTを活用

 建設業は社会資本の整備の直接的な担い手であり、社会の安全・安心の確保も担い、国土保全のうえで必要不可欠な地域の守り手でもあります。人口減少、急速な高齢化が進む中で、こうした役割を果たすためには賃金水準向上、休日拡大などによる働き方改革とともに、生産性の向上が不可欠です。そこで、国土交通省では、すべての建設生産プロセスでICTを活用するi-Constructionを打ち出し、建設現場の生産性向上を図ろうとしています。

i-Constructionのトップランナー施策

 i-Constructionのトップランナー施策としてICTの全面的な活用(ICT 土工) 、全体最適の導入(コンクリート工の規格の標準化など)、施工時期の平準化の3 つがあげられています。

インフラメンテナンス革命

ICTの全面的な活用

 すべての建設生産プロセスでICT を活用します。3次元測量データを活用するための15の基準や積算基準も整備されました。時間はかかってもデータを入力してしまえば、施工や維持管理の工程でも使えるので、先に苦労して後で楽をする流れになっています。ICT土工で頑張れば、費用の計上や工事成績評点で加点評価されるという、おまけもついています。

ICT土工の効果は抜群

 ICT土工の実施現場である埼玉県の荒川西区宝来下広野築堤工事と中部横断自動車道八千穂インターチェンジ改良4工事を取材。どちらの建設会社も異口同音に「生産性向上に結びついた」と述べていました。別の現場では「設計データ作成業務に時間とお金を費やしても、その分の見返りは十分にある」と語っていました。起工測量から完成検査までのプロセスを比べると、平均で23.4%の削減効果がありました。

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出典:国土交通省「i-Construction~建設現場の生産性革命~」より

全体最適の導入

 現場打ち、コンクリートプレキャスト(工場製品)それぞれの特性に応じて、施工の効率化を図る技術の普及により、コンクリート工全体の生産性向上を図ります。

施工時期の平準化

 適正な工期を確保するための2か年国債やゼロ国債を活用することなどにより、公共工事の施工時期を平準化し、建設現場の生産性向上を図ります。

i-Bridge(アイ・ブリッジ):橋梁分野における生産性向上

 i-Bridge(アイ・ブリッジ)と橋梁事業の調査・測量から設計、施工、検査、維持管理までのあらゆるプロセスにICTを活用し、生産性向上を図るものです。2017年度はECI方式を活用した3 次元設計・施工などの導入に努めています。ECIとは工事施工予定者に設計段階から参加してもらい、施工をイメージしながら設計することで工事費を抑制し、工事期間短縮を図るための方法です。

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出典:国土交通省「建設マネジメント技術 2017年 6月号」より

3次元による設計・施工計画

 2016年度から土工を中心にi-Constructionのトップランナー施策であるICTの全面的な活用が先行的に始まりました。土工の現場で、測量・設計・施工・検査の各段階で3次元データやCIMを活用できる環境を整備し、試行しながら検証を進めてきました。「CIM導入ガイドライン」も整備され、CIMの活用が本格化します。
 第1ステップは活用効果が見込まれる業務・工事からCIMを導入していくという段階で、2017年度から始まっています。第2ステップとしてはCIMの活用の充実に向けた検討を2017年度から2020年度まで行います。第3ステップはCIMの活用を充実させてCIMモデルを用いた維持管理にまで拡大しようというもので、2025年度をメドとしています。

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出典:「第3回 CIM導入推進委員会議事次第」より

i-Construction推進コンソーシアム

 i-Constructionを強力に進めるにあたっての組織が推進コンソーシアムです。2017年1月30日に設立総会を開き、「技術開発・導入」「3次元データ流通・利活用」「海外標準」の三つのワーキンググループが立ち上がりました。

建設業における時間外労働規制の見直し

 建設業界に限らず、企業を取り巻く環境は激変しています。こうした環境変化に適切に対応して生き残っていくためにはどうしたらいいのでしょうか。企業戦略の一環として働き方改革が求められています。
 2017年3 月に決定された政府の「働き方改革実行計画」では「労働基準法」を改正し、特別条項でも上回ることができない時間外労働時間を設定することになっています。建設業の場合、施行後5年間は現行制度を適用し、5年後以降は一般則を適用することになりました。ただし、災害からの復旧・復興については例外が認められています。

「建設業の働き方改革に関する協議会」を設置

 2017年6 月には「第1 回建設業の働き方改革に関する関係省庁連絡会議」が開かれ、7 月には関係団体が参加する「建設業の働き方改革に関する協議会」も設置されました。国として相当気合を入れて取り組んでいることが、こうした動きからもわかります。

さいごに

「適正な工期設定等のためのガイドライン」を策定

 8 月に行われた第2 回の関係省庁連絡会議で「適正な工期設定等のためのガイドライン」が策定されました。時間外労働の上限規制の適用に向けた基本的な考え方が示されています。今後、フォローアップを実施し、適宜、改訂されるとのことで、近い将来、もう少し細かいものが出てくると思います。
 働き方改革については各方面・業界で、いろいろな取り組み・検討が急ピッチで進んでいます。建設業界でも実現に向けた取り組みが本格的に始まりました。
 建設業は過去の悪しきしきたりからの脱却、リーマンショックからの経営浮上など、さまざまな自助努力・改革を重ね、苦難を乗り越えてきました。そうした経験があったからこそ、経営面でいいますと比較的安定した状況を築けたのだと思います。
 今後も東京オリンピック開催を経て、5年後、10年後を見据えた場合、建設業を取り巻く状況が著しく悪化するとは思えません。いよいよ本日お話ししたi-Constructionと働き方改革への取り組みが求められていると思います。こうした改革なくして持続可能な建設業はありえません。

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 講師ご紹介 

株式会社日刊建設工業新聞社
事業本部 取締役待遇 事業局長
田野口 美秋 氏

株式会社日刊建設工業新聞社に記者として入社後、国土交通省担当として長く行政の動向を取材。関東支社長、事業局長代理を経て現職に至る。 事業局に所属してからは、ゼネコン・設備業者・専門団体など建設業界全体を見通しながら企画営業・取材等をする立場となる。

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