工事契約に関する会計基準の適用指針について

1.はじめに

 今回は、建設業の施工者の工事収益及び工事原価の会計処理において重要な指針となっている企業会計基準適用指針第18号「工事契約に関する会計基準の適用指針」(以下、「適用指針」、という。)を、改めて適用指針に沿った形で見ていきたいと思います。以下、適用指針の項目順に取り上げていきます。

2.適用指針

1.成果の確実性の事後的な獲得及び喪失
  (工事完成基準⇔工事進行基準の変更)

 工事進行基準の適用が認められる場合は、次の各要素について、信頼性をもって見積ることができなければならないとされています(企業会計基準第15号「工事契約に関する会計基準」(以下、「基準」という。)第9項)。

  • ● 工事収益総額
  • ● 工事原価総額
  • ● 決算日における工事進捗度

 工事完成基準から工事進行基準への変更は下記の通り整理されています。

認められない場合 工事の完成が近づいたこと(時の経過)
認められる場合 契約条件が明確になったこと

 逆に、その後の事情の変化によって工事進行基準の適用要件を満たさなくなった場合は、工事完成基準への変更が必要となります。この場合、過去の会計処理の修正は不要ですが、別途計上されている未収入額について貸倒引当金を設定する必要があるか、検討が必要となります。

2.工事契約の変更の取扱い(基準9項の各要素の変更)

 工事契約の変更によって、工事収益総額、工事原価総額、決算日における工事進捗度の見積りに影響を与える場合には、その影響額を変更が生じた期の損益として処理します。ただし、当該変更が、既存の契約部分とは独立した認識単位となる場合(請求権が独立している場合)は、本項の適用には該当しません。
 例えば、下記に示す通り、当初契約額10,000の工事が、x2年度末に10,500に変更になった場合、x2年度の収益計上額(5,060)には、x1年度の差額125が含まれることとなります(4,935+125)。

合計 x1 x2 x3
進捗度 25% 72% 100%
当初契約額 10,000 (a) 2,500
変更後 10,500 (b) 2,625 (c) 4,935 2,940
差額 125
収益計上額 10,500 2,500 (d) 5,060 2,940

(a) = 10,000*25%
(b) = 10,500*25%
(c) = 10,500*72%-(b)
(d) = (b) + (c) – (a)

3.工事契約から損失が見込まれる場合の取扱い
  (工事損失引当金の見積りデータ)

 工事損失引当金の計上に当たっては、合理的なデータに基づいて見積り行うことが要求されています。合理的なデータとは、実際の施工を担当する建設会社等が詳細設計後に作成する仕様書・作業工程及び原材料単価等に基づいて策定された実行予算を指し、受注時の見積金額を算定するために用いられたデータは信頼性や合理性に欠けるものが多いと考えられます。

4.工事契約に複数の通貨が関わる場合の取扱い
  (為替変動が会計処理に影響を与える場合)

 工事原価が複数の通貨で発生する場合、為替相場の変動によって、各期の工事原価の金額が変動する可能性があります。工事進捗度の見積りに、原価比例法を用いている場合、為替相場の変動が進捗度の見積りに影響を及ぼすことになります。このような場合は、工事契約の内容や状況に応じて、為替相場変動の影響を排除するための調整が必要となります。
 なお、原価比例法は工事進捗度を見積る手段の一つであって、為替相場が大幅に変動する場合のように、実際の工事の進捗を合理的に反映しない場合には、より合理的な見積り方法の検討が必要となります。
 また、工事損失引当金の検討に当たっては、為替相場変動による影響を含める必要があります。

5.四半期決算における取扱い
  (工事原価総額見積りの簡便的な取扱い)

 工事原価総額が著しく変動している場合を除き、四半期会計期間末においては、前事業年度末又は直前の四半期会計期間末に見積もった工事原価総額を踏襲することができます。なお、工事の完成が間近であれば、工事原価総額を容易に見積ることが可能な場合も多いと考えらますので、四半期会計期末においても、事業年度末と同様の取扱いが求められることとなります。

3.おわりに

 適用指針は会計基準を適用するにあたって論点になりやすいトピックを予めピックアップし、具体的に設例等も用いて説明しているものであるので、会計基準本体よりも実際の事象に照らしてイメージがわきやすい内容になっています。会計処理で論点となるものが生じた際には同様のトピックが適用指針にて記載されていないか、一度適用指針に戻ってみるとよいと思います。

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