SDGs(持続可能な開発目標)と建設業界①

SDGs(持続可能な開発目標)と建設業界①

1.はじめに

 昨今、「SDGs(エスディージーズ)」という言葉を見聞きすることが増えてきました。建設業界でも日本建築学会が、2020年4月に「SDGs対応推進特別調査委員会」という特別委員会を設置し、SDGsに対する貢献策を検討し、具体的な指針を示すと共に、2022年までに成果報告をする予定となっています。今回から二回に分けて、建設業界でも注目が高まっている「SDGs」について、概要を確認し、建設業界との繋がりや具体的な取り組み事例を見ていきたいと思います。

2.SDGsとは

 SDGs(エスディージーズ)とは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称であり、2015年9月の国連サミットで採択された、国連加盟193カ国が2030年を年限として世界全体で達成を目指す目標のことをいいます。世界には、貧困や飢餓、人種やジェンダーによる差別、気候変動、環境破壊など様々な問題があります。SDGsでは、こうした世界規模の問題を解決するために、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」という共通理念のもと、17の目標と、それを達成するためのより具体的な169のターゲットを設定しています。

 SDGsのもとになったのは、2000年9月の国連ミレニアム・サミットで採択されたMDGs(Millennium Development Goals:ミレニアム開発目標)です。MDGsは、途上国の貧困削減、保健、初等教育普及等を掲げた世界共通の開発目標であり、2015年までという期限付きの8つの目標と21のターゲットにて構成されていました。SDGsではMDGsで達成できなかった目標を引き継ぐと共に、新たな項目を追加し、途上国・先進国の括りなく世界共通の目標として見直されたものとなっています。MDGsとSDGsの目標を比較してみると、以下の通り、SDGsの方が広範囲に渡っていることがわかります。

SDGsとMDGsの目標比較

SDGsの目標 MDGsの目標
1 あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる 1 極度の貧困飢餓の撲滅
2 飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する
3 あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する 4 乳幼児死亡率の削減
5 妊産婦の健康の改善
6 HIV/エイズ、マラリア及びその他の疾病の蔓延防止
4 すべての人々へ包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する 2 普遍的初等教育の達成
5 ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う 3 ジェンダーの平等の推進と女性の地位向上
6 すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する 7 環境の持続可能性の確保
7 すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する
8 包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある人間らしい雇用を促進する
9 強靭(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る
10 各国内及び各国間の不平等を是正する
11 包摂的で安全かつ強靭(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する
12 持続可能な生産消費形態を確保する
13 気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる
14 持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する
15 陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する
16 持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する
17 持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する 8 開発のためのグローバル・パートナーシップの推進

(出典)独立行政法人国際協力機構(JICA)SDGsの目標:MDGsとの比較
https://www.jica.go.jp/aboutoda/sdgs/SDGs_MDGs.html

3.SDGsの現状

①日本での認知度

 2018年12月に経済産業省関東経済産業局が、中小企業のSDGs認知度・実態等の調査結果を発表しました。ここでは「SDGsについて全く知らない」という回答が84.2%、「SDGsという言葉を聞いたことがあるが、内容は詳しく知らない」という回答が8.0%となり、日本での一般的なSDGsの認知度の低さが顕著に表れました。この調査から1年以上経過した現在、SDGsの社会的認知度は高まってきているとはいえ、実際にSDGsに関するアクションを起こしている企業は限定的と言えるでしょう。

②世界と日本の達成状況

 国際連合が発表している「持続可能な開発に関するグローバル・レポート2019」や「持続可能な開発目標(SDGs)報告2019」によると、17の目標毎に世界全体での進捗状況については、改善に向かっている目標も多い一方、達成までには程遠く、悪化している項目もあります。例えば「目標2 飢餓をゼロに」については、栄養不良の人々が2015年の7億8,400万人から、2017年の8億2,100万人へと増加している状況です。世界は未だSDGsの目標を達成するための軌道には乗っておらず、目標達成には革新的な変化と、取り組みの加速が求められています。

 世界の国別のSDGsの達成状況はSustainable Development Solutions Network (SDSN)とドイツのBertelsmann Stiftungによって毎年公表される「Sustainable Development Report」が参考になります。 2019年版によると、上位はデンマーク、スウェーデン、フィンランド、フランス、オーストリア、ドイツなど欧州諸国で占められおり、下位にはアフリカ諸国が多くなっています。GDP世界第1位のアメリカは35位、第2位の中国は39位となっており、世界への影響力が大きい消費大国であるがゆえに、積極的な国際協調と対応が求められています。

 日本については15位と比較的上位にいると言えますが、達成できている目標は「目標4 質の高い教育をみんなに」と「目標9 産業と技術革新の基盤をつくろう」の2つで、「達成には程遠い」とされている項目は「目標12 つくる責任つかう責任」をはじめとして4つあります。

 このように、SDGsの目標達成のためには、国際協調を高めながら各国による取り組みの強化、加速化が求められています。

4.建設業界とのつながり

 建設業界は、人々の生活の基盤である住環境の提供やまちづくり、経済活動の基盤であるインフラ構築・整備、防災、衛生、省エネルギー、環境保護など、事業そのものがSDGsと直結する業界であり、上記17の目標のあらゆる局面に大きく関わり、影響力を有していると言えます。それゆえ、SDGsを牽引していくべき業界として期待されています。また、17の目標は独立しているものではなく、連関し、同時に達成することができるもの、同時に達成することが求められるものも多くあります。SDGsへの関与度の高い建設業界は同時達成も目指しやすいと言えます。

 例えば、「目標11 住み続けられるまちづくりを」を達成するために、

  • ・道路等の整備やインフラ構築・改良を省エネルギーに配慮して進める
  • ・経済成長への積極的な雇用創出
  • ・政府・企業・個人で協同する

といった取り組みを行うことで、「目標7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに」、「目標9 産業と技術革新の基盤をつくろう」、「目標8 働きがいも経済成長も」、「目標17 パートナーシップで目標を達成しよう」といった多くの目標達成に寄与できます。

 一方で開発にあたって森林伐採が進めば「目標15 陸の豊かさも守ろう」の達成は遠ざかることになります。SDGsに関する取り組みでは、このように相互に関連する目標を併せ考えることが重要になります。

5.おわりに

 今回は、建設業界でも注目が高まっている「SDGs」について、概要や日本での認知度、世界と日本での取り組み状況など、世界・国単位での大きな視点で見ると共に、建設業界とSDGsの繋がりについて考えてみました。次回は日本の建設業界でのSDGsへの取り組み事例を取り上げ、より具体的な視点でSDGsを見ていきたいと思います。

maekawa_100 執筆者 
汐留パートナーズグループ
汐留パートナーズ株式会社 代表取締役
公認会計士(日米)・税理士 前川 研吾 氏

北海道大学経済学部卒業。公認会計士(日米)・税理士。
公認会計士試験合格後、新日本有限責任監査法人監査部門にて、建設業、製造業、小売業、金融業、情報サービス産業等の上場会社を中心とした法定監査に従事。
また、同法人公開業務部門にて株式公開準備会社を中心としたクライアントに対する、IPO支援、内部統制支援(J-SOX)、M&A関連支援、デューデリジェンスや短期調査等のFAS業務等の案件に数多く従事。
2008年4月、27歳の時に汐留パートナーズグループを設立。
税理士としてグループの税務業務を統括する。

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