SDGs(持続可能な開発目標)と建設業界②

1.はじめに

 前回は、SDGs(Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標))について、概要や日本での認知度、世界と日本での取り組み状況、建設業界との繋がりについてみてみました。今回は建設業界における企業の取り組み事例を取り上げ、どういった取り組みがSDGsの達成につながるのかなど、より具体的な視点でみていきます。

2.SDGs取り組み事例

 企業の取り組み事例をいくつかご紹介する前に、今一度、SDGsの17の目標を以下に示します。

17の目標
17の目標

(出典)外務省 SDGsの概要及び達成に向けた日本の取組
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/2001sdgs_gaiyou.pdf

 前回のコラムにて、17の目標は各々独立して達成していくものではなく、連関しているものであることを述べましたが、以下に挙げる取り組み事例を見ても、複数の目標に関連しているものが多いことがわかります。

 SDGsの推進にあたっては、情報共有が重要な役割を有するという観点から、経団連のSDGs事例集、外務省のSDGs取組事例などで多くの取り組み事例が紹介されています。今回は主に経団連のSDGs事例集の中から、建設業界に関わるもので、かつ、比較的最近のものについて、いくつかピックアップしました。詳細やその他の取り組みについては、各企業HPやSDGs事例集に掲載されたリンクから見ることができます。

清水建設㈱

バリアフリーストレスフリーの街づくりに向けて

内容 屋内外音声ナビゲーション・システムにより、スマートフォンに目的地を話しかけるだけで、最適な移動経路だけではなく、階段や手すりなど、施設・設備の詳細についても音声案内が可能。階段や段差のない移動経路を示すことができる上、移動経路が画面表示されるので、健常者にも使いやすいシステム。バリアフリーな街づくりに向け、視覚障がい者、車イス利用者向けのほか、外国語にも対応する。
時期 2020年~。2017年2月に日本橋室町地区(日本橋コレド、銀座メトロ地下鉄三越前駅地下歩道、江戸桜通り地下歩道の一部)において実証実験を実施。
関連する
主なSDGs目標
③保険、⑧成長・雇用、⑩不平等、⑪都市

大成建設㈱

国内初 テナントオフィスビルでZEBを実現

内容 福岡市博多区において竣工したJS博多渡辺ビルが、国土交通省が主導する建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)のZEB Ready(1次エネルギー消費の削減量が50%以上)及び「最高ランク☆☆☆☆☆」の認証を、テナントオフィスビルとして国内初取得。市場性のあるZEB化建築物の普及展開を推進。
時期 2018年2月~
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主なSDGs目標
⑦エネルギー、⑧成長・雇用、⑨イノベーション、⑪都市、⑬気候変動、⑰実施手段

㈱竹中工務店

BIMやIoT・ロボット化による建設業の生産イノベーション

内容 BIM(Building Information Modeling)による設計~施工段階の情報一元化、設計施工一環プロセスにおけるフロントローディングの推進や、省人化工法、IoT、ロボット技術の展開等により抜本的な生産性の向上を実現。
時期 2017年10月~
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主なSDGs目標
⑧成長・雇用、⑨イノベーション、⑪都市、⑫生産・消費

㈱大林組

米国シリコンバレー技術開発拠点における将来にむけた取り組み

内容 「現場監督の目」に代わるデジタル技術をコンセプトとした「次世代型の自動品質検査システム」を開発。高度な自己位置推定技術をベースに、点群データ生成機能、BIM(Building Information Modeling)との連携機能、MR(Mixed Reality:複合現実)技術などを組み合わせることで、品質検査の画期的な効率化を実現。
時期 2019年4月~
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主なSDGs目標
⑧成長・雇用、⑨イノベーション、⑪都市、⑫生産・消費

戸田建設㈱

農業6次産業化を目指す取り組みの展開

内容 常総市が中心となって進める「常総市圏央道常総IC周辺地域整備事業(アグリサイエンスバレー構想)」の一環として、施設園芸事業の推進等を目的とする実証ハウス「TODA農房」が稼働開始。いちごの高設養液栽培を実施し、栽培技術の開発、栽培環境測定・制御データの蓄積など技術的な取り組みを実施すると共に、農作物の栽培・出荷・販売を通じて、農業経営に関して必要なデータ・ノウハウを蓄積。
時期 2017年3月~
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主なSDGs目標
⑨イノベーション、⑪都市、⑫生産・消費、⑰実施手段

大和ハウス工業㈱

仕事と子育てを両立できる次世代型多機能物流施設

内容 千葉県流山市で、親子で通勤ができ、緊急時でも保護者がすぐに対応できる「職育近接」の労働環境を備えるマルチテナント型大規模物流施設群「DPL流山」を整備。保育施設を完備すると共に、免震システムや非常用自家発電機を設置するなど、BCPにも対応した防災配慮設計を施し、8,000人の雇用を目指す。物流の効率化・自動化を実現するため、AIやロボットなどの最新技術を取り込んだ次世代型多機能物流施設となる。
時期 2018年5月~
関連する
主なSDGs目標
⑤ジェンダー、⑧成長・雇用、⑨イノベーション

㈱熊谷組

学校建設を通じた国際貢献

内容 NPO法人BAJと協働し、小中学校を建設する「KUMAGAI STAR PROJECT」を開始。熊谷組が建設する学校調査、BAJが見積・建設を行うスキームで、ミャンマーで小中学校の建設を実施。民間企業が自社の活動地において調査し、取り組むスキームはミャンマー初。
時期 2016年2月~
関連する
主なSDGs目標
④教育、⑧成長・雇用

 今回取り上げた事例では、SDGs目標の内、「目標8 働きがいも経済成長も」に関連するものが最も多く、続いて「目標9 産業と技術革新の基盤をつくろう」、「目標11 住み続けられるまちづくりを」が多い結果となりました。今回紹介した以外の事例においても、この3項目を達成している取り組みは数多くあります。これからSDGsに関する取り組みを行う企業にとって、他社の取り組みが多い目標を目指すことは、無理なくSDGsの取り組みを始める一つの方策となるでしょう。

3.おわりに

 全2回にわたり、SDGsについて、概要から取り組み事例まで順に見てみました。SDGsは地球が持続していくための世界共通の目標であり、私たちが今後、SDGsを考慮せず、自らの利益のみを追求していくと、地球が立ち行かなくなるという切実な目標です。それゆえに現在、先進国を中心に急速に注目が高まっているといえます。

 欧米の多くの企業は既に企業目標にSDGsを取り入れており、日本でも大企業を中心にこの動きが広まっています。当コラムがSDGsの理解と、取り組みへの参考となれば、幸いです。


maekawa_100 執筆者 

汐留パートナーズグループ
汐留パートナーズ株式会社 代表取締役
公認会計士(日米)・税理士 前川 研吾 氏

北海道大学経済学部卒業。公認会計士(日米)・税理士。
公認会計士試験合格後、新日本有限責任監査法人監査部門にて、建設業、製造業、小売業、金融業、情報サービス産業等の上場会社を中心とした法定監査に従事。
また、同法人公開業務部門にて株式公開準備会社を中心としたクライアントに対する、IPO支援、内部統制支援(J-SOX)、M&A関連支援、デューデリジェンスや短期調査等のFAS業務等の案件に数多く従事。
2008年4月、27歳の時に汐留パートナーズグループを設立。
税理士としてグループの税務業務を統括する。

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