建設業事業主等に対する助成金について

はじめに

 建設業界では、技能者の約3分の1が55歳以上という状況にあり、依然として他産業と比べて高齢化が進んでいます。

 それゆえ、若者や女性の建設業への入職・定着の促進、働き方改革の更なる促進、魅力ある職場環境の整備により、中長期的に人材確保・育成を進めていくことが急務となっています。国土交通省と厚生労働省は連携して、建設業の人材の確保・育成に向けた取り組みを進めており、その取り組み一つとして、助成金制度があります。今回は「建設事業主等に対する助成金」について昨今の改正点も踏まえつつ、見ていきたいと思います。

建設事業主等に対する助成金

 「建設事業主等に対する助成金」とは、雇用管理改善や人材育成に取り組む中小建設事業主等に経費や賃金の一部を助成するものであり、目的別に、「人材確保等支援助成金」、「人材開発支援助成金」、「トライアル雇用助成金」の3つに分類されます。各々の助成金を受けるためには対応する助成コースを受ける必要があります。(参照:コラムvol.25 建設業界の人材確保にかかる助成金について①

 各助成金に対応する助成コース、助成金の概要、助成額をまとめると以下のようになっています。
 また下表に記載されている「生産性要件」とは、労働者1人当たりの利益のことであり、具体的な計算方法については、コラム vol.26 建設業界の人材確保にかかる助成金について②にて紹介しています。

建設事業主等に対する助成金

助成金 コース 概要 助成額
<>内は「生産性要件」を満たした場合
トライアル雇用助成金 若年・女性建設労働者トライアルコース 若年者(35歳未満)又は女性を対象として、一定期間試行雇用した中小建設事業主に対して助成。
※トライアル雇用助成金(一般・障害者トライアルコース)の支給を受けた場合
1人あたり月額最大40,000円(最長3ヵ月間)
人材確保等支援助成金 雇用管理制度助成コース(建設分野) 【目標達成助成】若年者及び女性の入職率目標を達成した中小建設事業主に対して助成。
※人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)の支給を受けた場合
第1回:57万円<72万円>
第2回:85.5万円<108万円>
【登録基幹技能者等の処遇向上支援助成】建設キャリアアップシステムにおけるレベル4相当に該当する者の賃金テーブルを年間2%以上かつ5万円以上(資格手当の増額改定の場合は賃金テーブル引上げ同等額以上)増額した中小建設事業主に対して助成。 1人あたり年額66,500円<84,000円>
又は33,200円<42,000円>(最長3年間)
若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野) 若年者及び女性労働者の入職や定着を図ることを目的とした事業を行った建設事業主に対して助成。
-対象となる取組事例-
現場見学会、体験実習、インターンシップ等の建設業の魅力を伝える取組
(中小建設事業主)
支給対象経費の60%<75%>
(中小建設事業主以外の建設事業主)
支給対象経費の45%<60%>
作業員宿舎等設置助成コース(建設分野) 【作業員宿舎等設置助成】被災三県に所在する作業員宿舎、作業員施設、賃貸住宅を賃借した中小元方建設事業主に対して助成。 支給対象経費の66.7%
【女性専用作業員施設設置経費助成】自ら施工管理する建設工事現場に女性専用作業員施設を賃借した中小元方建設事業主に対して助成。 支給対象経費の60%<75%>
人材開発支援助成金 建設労働者認定訓練コース 【経費助成】認定訓練を行った中小建設事業主に対して助成。
※広域団体認定訓練助成金の支給又は認定訓練助成事業費補助金の交付を受けた場合
広域団体認定訓練助成金の支給または認定訓練助成事業費補助金における補助対象経費の16.7%
【賃金助成】雇用する建設労働者に有給で認定訓練を受講させた中小建設事業主に対して助成。
※人材開発支援助成金(特定・一般・特別育成訓練コースのいずれかのコース)の支給を受けた場合
1人あたり日額3,800円
【生産性向上助成】
1人当たり日額<1,000円>
建設労働者技能実習コース 【経費助成/賃金助成】雇用する建設労働者に有給で技能実習を受講させた建設事業主に対して助成。 【経費助成】
(20人以下の中小建設事業主)
支給対象費用の75%
(21人以上の中小建設事業主)
〇35歳未満
支給対象費用の70%
〇35歳以上
支給対象費用の45%
(中小建設事業主以外の建設事業主)
支給対象費用の60%
【生産性向上助成】
支給対象費用の<15%>
【賃金助成】
(20人以下の中小建設事業主)
1日あたり日額7,600円(8,360円)
(21人以上の中小建設事業主)
1日あたり日額6,650円(7,315円)
※()内は、受講者が建設キャリアアップシステム技能者情報登録者である場合の単価
【生産性向上助成】
(20人以下の中小建設事業主)
1人あたり日額<2,000円>
(21人以上の中小建設事業主)
1人あたり日額<1,750円>

最近の改正点

 最近の主な改正点としては、以下の2点が挙げられます。

①人材開発支援助成金(建設労働者認定訓練コース、建設技能者技能実習コース)については、令和元年度から生産性要件の適用が成果主義へ変更されました。即ち、人材開発支援助成金の各コースについては、訓練開始日が属する会計年度の前年度と、その3年度後の会計年度の生産性を比較し6%以上伸びている場合のみ、助成額を増額することになり、生産性向上助成は3年後に支給されることになっています。

②人材開発支援助成金(建設労働者技能実習コース)の賃金助成において、建設キャリアアップシステム技能者情報登録者の場合、単価が増額されます(令和2年度まで延長)。

おわりに

 建設業界おいて、人材確保と育成、維持は、依然として大きな課題です。この課題に対処すべく、若年者や女性を含む新たな人員雇用、人員定着のための施策、従業員のスキルアップや処遇向上、作業員施設設置などを計画・実施する企業にとって、コスト面で後押しする助成金は経営上大きな助けとなります。助成金は要件を満たせば、誰でも受給可能です。助成金の種類や要件を再確認し、自社の方針に合致するものがあれば、積極的に活用していただきたいと思います。


maekawa_100 執筆者 

汐留パートナーズグループ
汐留パートナーズ株式会社 代表取締役
公認会計士(日米)・税理士 前川 研吾 氏

北海道大学経済学部卒業。公認会計士(日米)・税理士。
公認会計士試験合格後、新日本有限責任監査法人監査部門にて、建設業、製造業、小売業、金融業、情報サービス産業等の上場会社を中心とした法定監査に従事。
また、同法人公開業務部門にて株式公開準備会社を中心としたクライアントに対する、IPO支援、内部統制支援(J-SOX)、M&A関連支援、デューデリジェンスや短期調査等のFAS業務等の案件に数多く従事。
2008年4月、27歳の時に汐留パートナーズグループを設立。
税理士としてグループの税務業務を統括する。

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