改正建設業法10月から施行 ~働く人にやさしい建設業に~

改正建設業法10月から施行 ~働く人にやさしい建設業に~

改正建設業法の概要

 「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律」が、2019年6月12日に公布され、2020年10月1日から建設業法施行令の一部を改正する政令が施行されました。

 その主な内容は▽著しく短い工期の禁止▽工事現場の技術者の配置要件に関する規制の合理化――の2項目で、技術者配置要件の規制合理化は「監理技術者の専任義務の緩和」と「下請負人の主任技術者の配置が免除される特定専門工事」の2点からなっています。

①著しく短い工期の禁止

 まず、①の著しく短い工期の禁止についてですが、国土交通省の発表資料によれば「建設工事の注文者に対して、著しく短い工期による請負契約の締結を禁止し、これに違反した発注者に対して、国土交通大臣等は、必要があると認められるときは、勧告等をすることができることとする」としています。「勧告等の対象となる建設工事の請負代金の額の下限ついては、500万円(建築一式工事にあっては1,500万円)とする」としています。この場合の「発注者」には、下請に発注するゼネコンなどの元請も含まれます。

②工事現場の技術者の配置要件に関する規制の合理化

 ②工事現場の技術者の配置要件のうち、「監理技術者の専任義務の緩和」では、「元請の監理技術者に関し、これを補佐する者を置く場合は、元請の監理技術者の複数現場の兼任を容認する」こととしました。兼任できる現場数は2現場です。監理技術者を補佐する者の要件としては、「主任技術者要件を満たす者のうち、監理技術者の職務に係る基礎的な知識及び能力を有する者であること等とする」とし、この「基礎的な知識及び能力を有する者」を施工管理技士の1次試験合格者としています。

 また、「下請負人の主任技術者が免除される特定専門工事」では、「専門工事のうち、施工技術が画一的である等として政令で定めるもの」を「特定専門工事」として定め、元請の主任技術者が行うべき施工管理を併せて行うことができる」こととし、その特定専門工事を「下請代金の合計額が3,500万円未満の鉄筋工事及び型枠工事とする」としました。

 この他、所定の規定の整備を行うことも明記されました。

取引ルールの改正

 「著しく短い工期の禁止」という新しいルールが新設されたことに合わせ、他の取引ルールの見直しも行われ、「建設業法令遵守ガイドライン」が改訂されました。

 改訂の概要は、発注者(元請負人)は、請負契約を締結するまでに、工期や請負代金に影響を及ぼす地盤沈下などの事象があると認める時は、それらの情報を建設業者(下請負人)に提供することが義務づけられたことを踏まえ「見積条件の提示等」に関する項目の記述を改訂しました。契約書面に「工事を施工しない日または時間帯の定めをするときは、その内容」を契約締結に際して書面に記載しなければならなくなったことから「書面による契約締結」の項目の記述も改訂されました。さらに、元請負人が下請負人に支払う工事代金のうち、労務費相当部分については、現金支払いするよう適切に配慮する「支払手段」に関する項目が新設されました。

 ガイドラインが改正されたことを踏まえ、「建設企業のための適正取引ハンドブック」も改訂され、国土交通省のホームページからダウンロードできるようになっています。10月中旬からは、ガイドライン改定の概要資料と新しいハンドブックの説明付き動画が、やはり同省のホームページにアップされています。

法改正は何を目指すのか

 一言で言ってしまえば「働き方改革」への対応ということではないでしょうか。他の産業と違って、建設産業は残業時間の上限制限の適応が猶予されてきました。その背景には2020東京オリンピック・パラリンピックに向けた施設整備が急がれたことがあったとも言われています。その「緩和策」も2024年3月末で失効します。つまり、他の産業と同じように、月45時間かつ年360時間という制限に違反した場合には、事業主は罰則を受けることになります。

 ただ、残業時間には「原則」として45時間、360時間という「決め」があったのですが、これとは別に「特別条項」として「臨時的で特別な事情がある場合、延長に上限なし(年6カ月まで)」というものがあるのですが、建設業の場合は、この適用を除外されてきました。そのことが日常的な長時間労働ということに結びついていたとも言われています。しかし、労働基準法の改正によって、特別条項でも上回れない年間労働時間が設定されました。それに対応していくためには、超短期工期や人の配置の問題に加え、生産性を高めることで、建設労働者不足に対応していくことが強く求められているわけです。

本当に建設業の労働時間は長いのか

 国土交通省が、厚生労働省の「毎月勤労統計調査」の年度報から作成した資料によると、建設業の年間労働時間は2007年度が2065時間、2016年度が2056時間と9時間しか減少していません。同期間の製造業は1993時間から1951時間と42時間、調査産業計では1807時間から1720時間に87時間減少しており、いかに建設業の労働時間が長いかを如実に示しています。

 同様に年間出勤日数は、建設業の2007年度が256日、2016年度が251日と5日減となっています。製造業は238日が234日と4日減ですが、もともと出勤日数が少なく、調査産業計では233日が22日と11日減となっています。この点でも建設業の「働き過ぎ」が見て取れます。今の若者は「給料よりも休みを」という指向が強いと言われています。建設業の、この働き方では若者が敬遠するのも頷けます。

2017年3月28日「働き方改革実現会議」の決定事項

 当時の安倍晋三総理は「業界に担い手を確保するためにも、長年の慣行を破り、猶予期間を設けた上で、かつ、実態に即した形で、時間外労働規制を適用する方向としたい」と述べていました。その発言を受けて「適用除外となっていた建設業についても、改正労働基準法施行の5年後に罰則付き上限規制の一般則を適用」することとし、発注者を含めた関係者で構成する協議会の設置など必要な環境整備を推進することとし、4つの今後の取り組みを明記しました。

待ったなし・・・期待される着実な歩み

 働き方改革実現会議の決定を受けた後の、建設業界での集まりで、役所担当者の挨拶には必ず「5年という猶予は長いようで短い。今からしっかり準備を」という文言が入っていました。今回の建設業法改正は、その実現に向けて道筋を作ったといえますが、一方で、発注者側の団体との意見交換では「工期設定は元請がするものであって、我々にはわからない」といった意見も出されるなど、まだまだ調整が必要な部分もあることは事実でしょう。

 同時に、働き手の減少は今後必至であり、その減少分を補う生産合理化技術の開発が不可欠となってきていますし、外国人労働者との共存ということも考えなければならない、大きなテーマです。特に後者は「不法就労助長罪」に問われないよう、厳しく在留資格をチェックすることが必要です。雇い主にとっては手間のかかることですが、罪に問われるよりはましです。

 いずれにせよ、若者に魅力ある建設業となるために、たゆまぬ着実な歩みが求められることになります。

服部 清二 氏 執筆者 
株式会社日刊建設通信新聞社
常務取締役コミュニケーション・デザイン局長
服部 清二 氏

中央大学文学部卒業。設備産業新聞社を経て建設通信新聞社へ。
国土庁(現国土交通省)、通産省(現経済産業省)、ゼネコン、建築設備業、設備機器メーカー、鉄鋼メーカー、建設機械メーカーなどの取材を担当。特に建築設備業界の取材歴は20年以上にわたる。
その後、中部支社長、編集局長、企画営業総局長、電子メディア局長兼業務総局長を歴任、2019年6月電子メディア局の名称変更に伴い、現在のコミュニケーション・デザイン局長に就任。建設通信新聞「電子版」、「月刊工事の動き」デジタル、講演集や各種パンフレットの作成、協会機関誌の制作、DVD撮影などを行う部署を管轄している。

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