改正建設業法が施行、著しく短い工期の禁止とは

改正建設業法が施行、著しく短い工期の禁止とは

10月1日に改正建設業法が施行

 改正建設業法が10月1日に施行されました。公共工事の入札者に経営事項審査(経審)を義務化した1994年以来の大幅改正と言われますが、内容が今ひとつ分からないという人もいます。特に働き方改革に伴う「著しく短い工期の禁止」について、どういう運用がされるのかよく分からないという意見も聞かれます。施行されたばかりで、凡例を積み重ねていかないと、どのような事例が違反になるのかまだ不明な点もありますが、改正されたガイドラインなどを通じてできるだけ分かりやすく解説してみます。

著しく短い工期の禁止とはどういうもの?

 改正建設業法は▽許可基準の見直し▽許可を受けた地位の継承▽著しく短い工期の禁止▽下請け代金の支払い方法▽監理技術者の専任義務の緩和▽主任技術者の配置義務の見直し▽技術検定制度の見直し▽建設資材製造者などに対する勧告や命令-などを規定しています。このうち、技術検定制度の見直しは2021年4月の施行となりますが、残る規定はすべて施行済みです。

 著しく短い工期の禁止は、中央建設業審議会(中建審)が7月に作成・実施勧告した「工期に関する基準」(以下、工期基準)で示した事項が考慮されているかどうかが、著しく短い工期の判断材料の一つになるとされています。違反した発注者に対しては、国土交通大臣等が勧告等を行うことができます。勧告等の対象工事は、請負代金額の下限が500万円(建築一式工事では1500万円)とされています。

 では、中建審が出した工期基準はどうはいうものかというと、工期を設定するにあたって「工程全般にわたって考慮すべき事項」「工種別に考慮すべき事項」などが記載されています。

 具体的に見ていきます。「工程全般にわたって考慮すべき事項」では▽自然要因▽休日・法定外労働時間▽イベント▽制約条件▽契約方式▽関係者との調整▽行政への申請▽労働・安全衛生▽工期変更▽その他(施工時期や施工時間などの制限)-の10項目について、工期設定の留意事項が示されています。

 例えば「制約条件」では鉄道近接、航空制限などの立地にかかる制約条件、車両の山積み制限、搬出入時間の制限、道路の荷重制限、スクールゾーンにおける搬出入時間の制限によって工期・行程の見直しが必要となる場合に要する時間、周辺への振動、騒音、粉塵、臭気など作業や搬出入時間の制限、荷揚げ設備による制約などがある場合、工期の設定・見積もりに配慮することを求めています。

 一方、工種別に考慮すべき事項では、資機材調達・人材確保などの「準備」や、基礎工事や土工事、躯体工事など各工事の「施工」、完了検査や原型復旧条件などの「後片付け」の各段階で工期を設定する際の留意事項が明記されています。これらの考慮すべき事項が適正に行われているかどうかが、適正な工期設定の基準となります。

業法違反に該当するケースはどんなもの

 では、どのようなケースが建設業法違反に該当するのでしょうか。国土交通省は建設業法改正に併せ、「建設業法令順守ガイドライン」や「建設業許可事務ガイドライン」なども見直しています。このガイドラインには、業法に抵触するおそれのある行為事例を提示しています。

 改正建設業法では注文者(発注者)に対し、建設工事の施工で通常必要な期間と比べ、著しく短い工期での請負契約の締結を禁止しています。ガイドラインでは、違反行為の例として▽発注者が、早期引き渡しを受けるため、受注予定者に対して一方的に通常よりもかなり短い工期を示し、請負契約を締結したケース▽受注予定者が、発注者から提示された工事内容を適切に施工するため、通常必要と認められる期間を工期として提示したにもかかわらず、それよりもかなり短い工期で請負契約を締結したケース▽受注者の責任ではない理由で工期変更する際、通常よりもかなり短い工期で請負契約を締結したケースの3ケースを挙げています。

 これは発注者と受注者(元請企業)との請負契約の事例ですが、元請企業と下請企業にも当てはまります。発注者を元請負企業に置き換えた場合、受注者は下請負企業に変わり、請負契約は下請契約となります。

工期短縮が現場労働者に長時間を強いている

 著しく短い工期の禁止規定は、現場の第一線で働く建設労働者の長時間労働の是正が最大の目的です。これを実現するには、発注者や元請企業の理解がなければできません。違法性のある工期の判断は、単に定量的な期間の短さではなく、工期短縮が現場の作業者に長時間労働を強いているかどうかということがポイントとなります。現場を閉所しなくても、工期基準の内容を踏まえた工期設定が行われ、現場の作業者がきちんと長時間規制の枠内で収まっていれば問題がないということになります。

 改正労働基準法による罰則付きの時間外労働の上限規制は、2024年4月1日から建設業にも適用されます。時間外労働時間は原則、月45時間、年間360時間とされ、これを超えると罰金などが科されます。これまで建設業界は工期厳守というのを大命題として作業を行ってきました。また、短工期での施工が受注競争の一つの武器にもなっていました。もちろんロボット化や新技術開発などで生産性を向上させ、他社よりも短い工期で施工するのであれば問題ありません。

 ただ、現場の作業員に法定以上の長時間労働を強いて、工期を短くするというやり方は今後通用しなくなります。ガイドラインでは上限規制を上回る違法な時間外労働時間を前提として設定された工期は、たとえ発注者(元請負人)と受注者(下請負人)の間で合意している場合でも著しく短い工期と判断するとしています。

受・発注者間、元・下請負業者間は対等な立場で

 改正建設業法では、現場で働く作業者に対し、長時間労働だけでなく、下請代金のうち労務費相当分は、元請企業が下請企業に対し、現金で支払うよう適切な配慮を求めています。ガイドラインでは、建設業法上望ましくない行為事例として「下請代金の支払いを全額手形払い」「労務費相当分に満たない額を現金で支払い、残りを手形支払い」を明記しています。

 受・発注者間、元・下請負業者間の契約は対等な立場が基本になります。「請け負け」という言葉が建設業界では長年使われていますが、発注者や元請業者が優位な立場となり、片務的な契約は今後なくしていかなければなりません。これが出来なければ、担い手の確保はどんどん難しくなるでしょう。

坂川 博志 氏 執筆者 
日刊建設工業新聞社
常務取締役編集兼メディア出版担当
坂川 博志 氏

1963年生まれ。法政大社会学部卒。日刊建設工業新聞社入社。記者としてゼネコンや業界団体、国土交通省などを担当し、2009年に編集局長、2011年取締役編集兼メディア出版担当、2016年取締役名古屋支社長、2020年5月から現職。著書に「建設業はなぜISOが必要なのか」(共著)、「公共工事品確法と総合評価方式」(同)などがある。山口県出身。

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