建築設備は今後、どうなっていくのか

設備は建築費用の1/4-日建連の実態調査結果から

 日本建設業連合会(日建連)は、8回目となる「設備工事実態調査報告書」をまとめました。今回は2019年のデータとなっています。それによると、設備工事高を一括工事完成工事高で割った「設備工事比率」は26・3%となり、前年を0・4ポイント上回りました。

 2010年からの数字を見ると、2010年が28・3%、11年が29・2%、12年が30・7%と上昇を続けてきましたが、13年には一転して29・1%と30%を割り込み、以降、14年は27・2%、15年は28・0%、16年は25・4%、17年は27・1%、18年は25・9%という比率になっています。全体的に見て、建築費の4分の1は建築設備が占めているといえるでしょう。

 19年の設備工事高を建物用途別に見ると、住宅が10・0%、事務所が24・1%、商業施設が11・5%、医療施設が6・7%、生産施設が14・8%、その他が32・9%という内訳になっています。前年と比べると、医療施設、生産施設の割合が下がり、その他が上がっています。

設備技術者の状況

 同調査では、設備技術者についても調べています。同会に加盟している企業のうち26社の設備技術者は6,759人で、全技術者に占める割合は15・5%でした。

 設備技術者のうち施工に携わっている人が3,215人と約半数(47・6%)を占め、以下、設計1,793人(26・5%)、見積476人(7・0%)、海外272人(4・0%)、研究・開発201人(3・0%)、その他802人(11・9%)と続いています。

 全設備技術者のうち女性の割合は約1割の630人でした。そのうちの260人(41・3%)が設計、205人(32・5%)が施工に従事しています。男性6.129人のうち、施工が3010人(49・1%)、設計が1,533人(32・5%)であるのとは、やや対照的な感があります。女性の見積は53人(8・4%)、研究・開発は28人(4・4%)、その他84人(13・3%)でした。男性で4・4%いた海外はゼロとなっています。

 設備技術者に占める女性の割合は、13年が2・0%、14年が2・2%、15年が2・7%、16年が2・8%、17年が3・1%、18年が3・6%、19年が3・8%と、毎年伸びています。(10年から12年のテータはなし)。現在では、この比率はさらに高くなっていることは、容易に想像がつきます。

コストオン、分離発注はどうなっている

 コストオン設備工事の比率は19年で6・8%と、前年を0・9ポイント下回りました。この数字は10年と同じです。10年に6・8%だったのが、翌11年には9.3%となり、12年には8・6%、13年に9・5%となったのを最後に17年までコストオン率は下がり続けています。具体的には14年8・6%、15年8・3%、16年7・6%、17年7・2%となりました。

 一方、分離発注の工事比率(設備分離発注の建築工事高を建築工事高で割った値)は、19年で13・17%でした。前年よりは1・43%アップしていますが、10年からは2番目に低い数値となっています。ピークは12年の22・53%でしたが、その後、下降傾向をたどりました。設備工事業団体が、公共発注機関やそれに準ずる発注者に対し、分離発注の優位性を訴え、分離発注促進運動を展開していますが、13%という数字をどう見るか、難しいところです。

建築設備技術と設備技術者の行方を占う

 建築設備のコストはかつて、建築費の2割程度といわれていました。今回の日建連の調査では、設備の比率がアップしてきていることが示されました。ただ、この調査の対象となった時期と現在では、社会情勢に大きな違いが出てきました。その要因となったのは「カーボンニュートラル」という動きです。産業用が大幅に地球温暖化ガス、つまり二酸化炭素の排出量を減らしたのに対し、ビルなどの民生用は増えているという実態があることです。

 近年、ZEB(ネット・エネルギーゼロ・ビルディング)やZEH(同ハウス)という言葉が頻繁に使われるようになってきました。再生可能エネルギーを随所に導入することで、化石燃料由来のエネルギー消費を限りなくゼロに近づけよう、あるいはエネルギー収支としてプラスに持っていこうという動きです。そのためには、個々の設備機器のエネルギー利用の高効率化はもちろんのこと、熱や電気をどう効率的に使っていくのか、熱源をどこから効率よく持ってくるかといったことや、躯体や窓などの開口部の熱貫流をどう抑えるかといった課題も出てきています。つまり、設備が単独でエネルギー使用量削減を図るのではなく、躯体や建材との取り合いが求められてきているということです。

 また、医療施設や高齢者介護施設では、新型コロナウイルスに代表されるような感染症の予防対策が、よりいっそう求められるようになりました。それを設備面から解決する必要性が高まってきていますし、快適で生産性を向上させ、しかも健康でいられる「ウェルネス」ということも評価の対象に加えられるようになってきました。

 建築設備に求められるニーズは、複雑になってきました。それにどう対応するか、建築設備技術者の腕の見せどころです。最新の知見を備え、また、意匠担当者、構造技術者、設備機器メーカーとの協働によって、より高品質な建築設備を作ることが必要となります。設備技術者は建築に対するオールマイティーな力を付ける必要があるのではないでしょうか。

服部 清二 氏 執筆者 
株式会社日刊建設通信新聞社
常務取締役コミュニケーション・デザイン局長
服部 清二 氏

中央大学文学部卒業。設備産業新聞社を経て建設通信新聞社へ。
国土庁(現国土交通省)、通産省(現経済産業省)、ゼネコン、建築設備業、設備機器メーカー、鉄鋼メーカー、建設機械メーカーなどの取材を担当。特に建築設備業界の取材歴は20年以上にわたる。
その後、中部支社長、編集局長、企画営業総局長、電子メディア局長兼業務総局長を歴任、2019年6月電子メディア局の名称変更に伴い、現在のコミュニケーション・デザイン局長に就任。建設通信新聞「電子版」、「月刊工事の動き」デジタル、講演集や各種パンフレットの作成、協会機関誌の制作、DVD撮影などを行う部署を管轄している。

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