建設業は地球温暖化対策でアドバイザーになる

排出削減量が1・7倍に

 環境大臣の諮問機関である中央環境審議会の小委員会と、経済産業大臣の諮問機関である産業構造審議会のワーキンググループの合同会議は、新しい地球温暖化対策計画をまとめました。この計画では、建設業を含めた産業部門のエネルギー起源二酸化酸素(CO₂)の排出削減量を、2030年度に2013年度比で45%削減するという数値を設定しました。2015年7月にわが国が、地球温暖化対策として、国連気候変動枠組条約事務局に提出した「日本の約束草案」で示した26%減の約1・7倍という数字になります。

 合同会議では、45%削減達成に向けた施策の評価指標の1つとして、バイブリッド建設機械の導入台数を、30年度に約4万7,000台(13年度は約2,000台)にするという目標を掲げました。ガソリン自動車から電気自動車へという流れが、建設機械の分野にまで広がってきたかっこうで、建機メーカーにとっては朗報となるのではないかという見方ができそうです。

住宅・建築分野は約4割

 2013年度のエネルギー起源CO₂排出量実績を見ると、全体の排出量は12億3,500万トンでした。その内訳は「産業部門」が4億2,900万トン(全体に占める割合は34・7%)、「住宅・建築物分野」が4億8,000万トン(38・9%)、「運輸部門」が2億2,500万トン(18・2%)、「エネルギー転換部門」が1億100万トン(8・2%)となっています。さらに「住宅・建築分野」では「業務その他部門」が2億7,900万トン(22・6%)、「家庭部門」が2億100万トン(16・3%)という内訳になっています。

 最初の計画では、それぞれ 「産業部門」を7%、「住宅・建築分野」を40%(うち、「業務その他部門」が40%、「家庭部門」が39%)、「運輸部門」を28%、「エネルギー転換部門」を28%削減することになっていました。CO₂だけだと25%の削減にとどまりますが、これに非エネルギー起源CO₂、一酸化二窒素、メタンなどを含めて26%を達成することにしていました。今回の目標では、これのさらに倍増に近い数値を達成することが求められることになります。

 住宅・建築物分野で最もCO₂を排出するのは建築設備ですから、この部分をどう省エネルギー化するかが問われることになるわけですが、単に設備機器の省エネ化だけでは達成は難しいとの判断もあり、躯体構造や再生エネルギー利用といった面からのアプローチが不可欠となりました。

省エネ法の改正

 地球温暖化対策に係る「パリ協定」の目標達成のため「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(省エネ法)」が一部改正され、4月1日から施行されました。その内容は①省エネ基準に適合していなければ建築確認ができないという建築物の対象の延べ面積の下限を2,000㎡から300㎡に②省エネ性能向上計画の認定(容積率特例)の対象に、複数の建築物の連携による取り組みを追加③マンション等に対し省エネ基準に適合しない新築等の計画に対する監督体制を強化④小規模(延べ面積300㎡未満)の住宅・建築物の新築時における設計者から建築主への説明義務付け⑤大手住宅事業者が供給する戸建住宅等へのトップランナー制度の全面展開――の5点です。

 建築物で使われるエネルギー量は、例えば執務室や給湯室など、部屋の用途ごとに基準値が決められています。それらの総和が。その建築物で使われる総エネルギー量であり、その値を1割削減しなければ「省エネ適合性判定」をクリアすることができず、建築確認申請ができない仕組みになっています。対象建築物の延べ面積下限が300㎡となったことで、判定機関には多くの判定申請が出されることになり、その結果、着工遅れにつながるのではないかという懸念も生じます。省エネ判定士の人数も気になるところです。

既存建築物をどうするか

 新築物件は省エネ適判を受けることになるわけですが、問題は既存の建築物です。温暖化対策としてCO₂排出量を45%削減するために、「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」や「ZEH(同ハウス)」「ZEF(同ファクトリー)」化を図ることは避けて通れません。新築物件のように最初から計画できれば、比較的「ZE」化は進めやすいといえるでしょう。一方、既存建築物は設備更新などに大きな制約があり、また、再生エネルギー利用にも限界があるのではないかと考えられます。

 例えば新築の場合は、躯体の貫流熱を低減するような材料や建材を使うことで、使用するエネルギーの削減を図ったり、再生エネルギーが使いやすいような設備システムを、当初から組む込むことが可能です。一方で、既存建築物の場合は、かなり大幅なリニューアルが必要となります。その結果として、リニューアル市場が今以上に大きくなってくることは、容易に想像できます。建物に対して「面倒見のいい会社」が、リニューアル市場の「勝ち組」となっていくのではないでしょうか。

 加えて言うならば、エネルギー消費は、建物の使われ方によってかなり変動するとされています。効率的なエネルギーの使い方のために、建物の使い方をアドバイスするという役割も、建築を生業とする業者にはあるのではないかと思われます。ハードだけでなくソフトの問題です。そのためには「幅広い知識」が求められることになります。エネルギー消費に関する「生活アドバイザー」としての役割が、今後の建築業界に求められてくるのではないでしょうか。

服部 清二 氏 執筆者 
株式会社日刊建設通信新聞社
顧問
服部 清二 氏

中央大学文学部卒業。設備産業新聞社を経て建設通信新聞社へ。
国土庁(現国土交通省)、通産省(現経済産業省)、ゼネコン、建築設備業、設備機器メーカー、鉄鋼メーカー、建設機械メーカーなどの取材を担当。特に建築設備業界の取材歴は20年以上にわたる。
その後、中部支社長、編集局長、企画営業総局長、電子メディア局長兼業務総局長を歴任、2019年6月電子メディア局の名称変更に伴い、コミュニケーション・デザイン局長に就任。建設通信新聞「電子版」、「月刊工事の動き」デジタル、講演集や各種パンフレットの作成、協会機関誌の制作、DVD撮影などを行う部署を管轄した。2021年7月から現職。

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