建設不況の予兆なのか、建設業倒産が9・2%増加/公共事業の執行の遅れや資材高騰が背景に

 東京商工リサーチが発表した建設業の倒産件数によると、2022年上半期(1~6月)の倒産件数は前年同期比9・2%増の576件となった。上半期としては14年ぶりに前年同期を上回った。負債10億円以上の倒産件数は2件(前年同期比66・6%減)で、今のところ1億円未満(13・0%増)が全体の8割近くを占める。零細・中小企業の倒産が多いようだが、足下では資材の急騰や公共工事の執行の遅れなどもあり、今後中堅・大手の建設会社に広がる可能性もある。下請企業の中には元請企業の経営状況をしっかりと注視しないと、「しわ寄せを受ける可能性もある」という。建設業の現況を整理してみた。

倒産理由は受注不振が全体の7割

 東京商工リサーチの倒産状況によると、建設会社の倒産に伴う負債総額は3・5%減の509億0800万円で、前年同期の比べ額としては大きくない。倒産件数の内訳を見ると、業種別は総合工事業が265件(前年同期比13・7%増)、職別工事業が196件(2・0%減)、設備工事業が115件(22・3%増)となる。

 原因別は「受注不振(販売不振)」が385件(5・2%減)と全体の7割程度を占めた。次いで「既往のしわ寄せ(赤字累積)」が100件(13・6%増)、「その他(偶発的原因)」が28件(86・6%増)、「他社倒産の余波」が18件(5・8%増)の順となっている。これらの原因とも一部重なっている「新型コロナウイルス関連倒産」は123件(36・7%増)だった。

 地域別では前年同期を下回った関東と同数の中国を除き、ほぼ全国的に倒産増加の兆しがうかがえた。東京商工リサーチは建設市場を取り巻く現状について、新型コロナによる経済停滞の影響が軽減し、都心部や地方主要都市の再開発工事が下支えする形となって足元の受注環境が回復してきていると分析している。

 一方、労務費や燃料費の高止まりに加え、資材価格の高騰が経営を直撃していることも指摘。中小・零細を中心に自助努力も限界に達している企業が多いとして、こうした規模の企業を中心に倒産や廃業が増える可能性も高いと警戒している。

伸びない公共事業、21年度請負額は8・6%減

 特に心配なのが公共事業に頼る地方の建設業者だ。建設業はコロナ禍でも工事を止めることなく、旅行・観光業、交通・運輸業、飲食業などに比べ比較的影響が少ない業種と言われてきた。ただ、今年4月に北海道、東日本、西日本の公共工事前払金保証事業会社3社がまとめた2021年度の保証実績をみると、影響が少ないとは言い切れない状況にある。

 2021年度の3社の前払い金保証を扱った工事などの請負金額は前年度比8・6%減の14兆0503億円となり、3年ぶりに15兆円台を割り込んだ。全国9ブロック別では、東日本大震災の復興工事がおおむね完了した東北のマイナス幅が35・5%減と大幅に落ち込んだ。保証件数も5・2%減の23万1514件となった。

 発注者別の請負金額をみると、国が11・8%減の2兆5811億円、独立行政法人などが14・3%減の1兆4276億円、都道府県が4・1%減の4兆4474億円、市区町村が8・1%減の4兆7458億円、地方公社が6・8%増の1521億円、その他が15・9%減の6963億円となっている。

 全国9ブロックのうち、請負金額は九州を除く8ブロックが減少。東北は35・5%減の1兆5286億円と大幅なマイナスとなった。復興事業や福島第1原発事故で被災した福島県での中間貯蔵施設整備などが進み、その反動で減少した。残る7ブロックの減少率は1桁台で収まっているものの、国土強靱化関連の工事などが思うように執行されていない可能性もある。また、東北地区は震災前の水準を下回っており、業界内には先行きに対する危機感が漂う。

第1四半期も請負額4・2%減、進まない発注

 2022年度も公共事業は低調に推移している。東日本建設業保証が7月12日発表した2022年度第1四半期(4~6月)の公共工事の動向によると、請負金額は前年同期比4・2%減の2兆7067億円。第1四半期として過去10年では2012年度(約1・9兆円)、2013年度(約2・4兆円)に次ぐ低い水準となった。全体の取扱件数は3・5%減の3万3235件、保証金額は4・7%減の1兆0316億円となっている。

表 2022年度第1四半期の発注者別保証実績      (単位:百万円,%)

区分 第1四半期(4~6月) 前 年 同 期 比
発 注 者 件 数 請負金額 件 数 請負金額
5,445 821,605 85.8 89.7
独立行政法人等 1,420 798,081 90.7 92.6
都道府県 22,204 1,251,811 91.2 93.6
市区町村 27,980 1,726,354 98 99.3
地方公社 536 48,537 96.6 97.4
その他 1,334 283,205 102.1 111.1
合計 58,919 4,929,596 94 95.6

 発注者別の請負金額は、国が7・0%減の3926億円、独立行政法人などが15・1%減の4113億円、都道府県が2・8%減の7502億円、市区町村が0・9%増の9594億円、地方公社が15・2%減の289億円、その他が1・0%増の1641億円。国は国土交通省で442億円減少し、環境省が190億円増加した。国土交通省は中部地方整備局(前年同期比269億円減)の工事件数が減り、環境省は福島第1原発事故に伴う環境再生工事が増えた影響を挙げている。

 都道府県は岩手県が158億円減少。県発注の道路工事が減ったという。地区別の請負金額は、東北が8・0%減の5591億円、関東が1・1%増の1兆1409億円、甲信越が3・1%減の2617億円、北陸が20・2%減の1759億円、東海が5・3%減の4758億円となっている。

 3保証会社の2022年度第1四半期(4~6月)の公共工事の動向をみても、請負金額は前年同期比4・4%減の4兆9295億円、件数は同6・0%減の5万8919件となっており、全国的にみても低調に推移している(表1)。工事の平準化を進める上でも第1四半期の発注は重要になるが、工事発注が思うように進んでいないのが分かる。

身の丈にあった堅実な受注活動が鍵になる

 ある業界関係者は工事発注の遅れを「資材の高騰で積算業務に手間取っているのではないか」と指摘する。資材高騰分を加味した適正な積算をしようとするあまり発注者側の作業量が増え、発注業務が遅れているのではないかと推測する。また、別の関係者は「残業時間の短縮など働き方改革の影響で、測量や設計などの川上業務に遅れが出ている」と分析。受発注者双方の人手不足も一因という。

 2022年度の公共事業予算額はほぼ前年並みが確保されている。今夏には大型補正予算の編成も控えている。ただ、業界内には先行きに対して不安な声が上がる。その理由が「公共予算額が決まっている中で、資材高騰で1件当たりの工事額が上昇すれば、自ずと工事件数は減少する。予算が付いても執行できなければ意味がない」という指摘だ。

 一方、民間工事はどうか。都市部では大型の再開発工事や物流施設など、今のところ堅調に推移している。しかし、この状況も経済状況によっては反転する可能性もある。高騰した資材価格を発注者に転嫁できず、無理な受注を続ければ経営を悪化させる建設会社も出てきてもおかしくない。

 長引くコロナ対策やウクライナ情勢、急激な円安、原燃料価格の上昇など、経済に対する不安要因は解消の見通しが立っていない。今年1年は、先行きが不透明な状況だけに、無理な受注はせず、身の丈のあった受注規模に抑えることが重要になる。2008年のリーマンショック時とは下請企業の請負姿勢も変わってきている。建設業の環境の変化を考えずに、積極的な受注活動を突き進めると大きな損失を被る危険性は高い。

坂川 博志 氏
 執筆者 
日刊建設工業新聞社
常務取締役編集兼メディア出版担当
坂川 博志 氏

1963年生まれ。法政大社会学部卒。日刊建設工業新聞社入社。記者としてゼネコンや業界団体、国土交通省などを担当し、2009年に編集局長、2011年取締役編集兼メディア出版担当、2016年取締役名古屋支社長、2020年5月から現職。著書に「建設業はなぜISOが必要なのか」(共著)、「公共工事品確法と総合評価方式」(同)などがある。山口県出身。

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