建設キャリアアップシステム~制度概要と運用状況~

札幌
2019/12/05

2019年11月20日に開催しました「内田洋行ITフェア2019in札幌」での講演、汐留パートナーズ税理士法人 前川 研吾 氏の「建設キャリアアップシステム~制度概要と運用状況~」セミナーについてレポートいたします。

建設キャリアアップシステム~制度概要と運用状況~
建設キャリアアップシステム~制度概要と運用状況~
前川 研吾 氏

▲ 汐留パートナーズ税理士法人
  公認会計士・税理士
  前川 研吾 氏

 2019年4月から国交省と建設業界の民間団体が官民一体となってすすめる「建設キャリアアップシステム」の本格的な運用が始まりました。

 本セミナーでは、改めて建設キャリアアップシステムの概要やメリット、また現時点での運用状況についてご説明を致します。

はじめに

「建設キャリアアップシステム」が本格運用を開始

 2019年4月、国土交通省と建設業界の団体が主導する「建設キャリアアップシステム」が本格運用を開始しました。
英語ではコンストラクション・キャリアアップ・システム、CCUSと呼ばれています。
この会場にも既に登録した事業者、従業員の方々がいらっしゃるかと思いますが、まだまだ普及していません。

建設キャリアアップシステムの詳細

建設キャリアアップシステム(CCUS)とは

 技能者の就業履歴や保有資格などを業界統一のシステムに蓄積することで、技能者の処遇改善や技能研さん、工事の品質向上、現場作業の効率化を目指すものです。企業や技能者それぞれに帰属している情報を、ひとつのシステムの中で統合し、情報の一元化を図ろうとしています。ここでいう環境とは待遇や昇格、場合によっては所属している組織を移って活躍するといった世界観かと思います。

建設キャリアアップシステムの利用手順

 まず技能者、事業者が一般財団法人建設業振興基金に登録します。次に元請け事業者が現場を開設し、現場情報を登録します。次に元請け事業者、下請け事業者が施工体制を登録。
これらが整えば、技能者が現場に入場する際、カードリーダーにタッチするだけで現場情報が入力され、就業履歴が蓄積していきます。事業者も現場で就労する技能者の情報を見ることができます。

技能者の手続・手順:技能者が建設業振興基金に登録申請を行う

 技能者が建設業振興基金に登録申請を行う際、住所、氏名、生年月日、性別、国籍といった本人情報のほか、社会保険加入状況などの必須情報、保有資格などの推奨情報を登録します。国籍欄があるということは日本で仕事をしている外国人も含まれるわけです。推奨情報を、どこまで登録するかは、ある程度、企業で決める必要があります。登録完了後、キャリアアップカードが交付され、専用ホームページにログインすれば自身の情報を閲覧することができます。

「建設キャリアアップシステム」が本格運用を開始

出典:「建設キャリアアップシステム~制度概要と運用状況~」セミナー資料より

技能者の手続・手順:登録後に技能者が個人ページで閲覧可能になる情報

 転職したり、新規の現場に配属されたりした場合、カードの提示を求められることは間違いありません。前職で、しっかり働いていたか、働いていなかったかが一目瞭然になるわけです。「カードを持っていなかったので、登録しませんでした」「現場でピッとやり忘れました」という言い訳は通用しないでしょう。

技能者の手続・手順:登録後に技能者が個人ページで閲覧可能になる情報

出典:「建設キャリアアップシステム~制度概要と運用状況~」セミナー資料より

技能者の手続・手順:キャリアアップカードの特徴

 職種ごとに統一された基準で熟練度がカードカラーに反映されます。初めての人は初級技能者で、ホワイトから始まります。中堅技能者は一定の就業経験があり、2級技能検定に受かっていることが目安になります。レベル3は職長として現場に従事できる技能者です。一定の班長等の経験、部下を束ねた経験があり、1級技能検定を持っていることなどが要件です。レベル4は高度なマネジメント能力を有する技能者で、登録基幹技能者や建設マスターなどの資格が求められます。

事業者の手続・手順

 技能者が登録しても事業者が登録しないと、この制度は成り立ちません。
事業者が積極的に登録したうえで、所属している技能者全員に登録してもらい、それ以外の一人親方にも登録をお願いする。
さらに下請けの協力会社にお願いしていくという流れです。

事業者の手続・手順:事業者の利用料金

 事業者は資本金ごとに変わる登録料のほか、管理者ID利用料と現場利用料が必要です。

事業者の手続・手順:事業者の利用料金

出典:「建設キャリアアップシステム~制度概要と運用状況~」セミナー資料より

事業者の手続・手順:登録後に登録者が閲覧可能になる情報

 インターネットでログインすれば、自社情報のほか、所属技能者の一覧・個別が閲覧可能です。
ソートをかければ、現場に資格を持っている人が何人いるのかといったことを確認することもできます。 

事業者の手続・手順:登録後に登録者が閲覧可能になる情報

出典:「建設キャリアアップシステム~制度概要と運用状況~」セミナー資料より

技能者と所属事業者の閲覧ページ

 左側が技能者本人の閲覧ページのイメージで、右側が所属事業者のイメージです。
技能者は自身の技能者情報や就業履歴情報を閲覧し、場合によっては印刷して証明書として使うこともできます。例えば転職して新しい現場に申し込む場合、「このページを提出してほしい」といわれる時代になるでしょう。所属事業者のページには国土交通省や厚生労働省など、いろいろな省庁の情報が集約されます。縦割りではなく、横に連携するという点では初の試みといっていいかもしれません。登録するのは手間がかかりますが、一度登録してしまうと業界・事業者にとって非常にプラスになるシステムです。

閲覧ページのイメージ

出典:「建設キャリアアップシステム~制度概要と運用状況~」セミナー資料より

稼働現場の元請と下請の閲覧ページ

 左は稼働中の現場における元請け、上位下請けの閲覧ページです。
現場ごとに「どの会社が元請けで、どの会社が下請けなのか」「技能者として、どういう人物が入っているのか」がわかります。またシステムに登録した事業者は他社の事業者情報を閲覧することができます(右)。本人及び所属事業者が同意した範囲で(プライバシーの問題があり)、所属技能者一覧や技能者情報などの閲覧が可能です。相見積もりやコンペの際、このシステムを利用して発注先の情報を取得することもできます。

閲覧ページのイメージ

出典:「建設キャリアアップシステム~制度概要と運用状況~」セミナー資料より

建設キャリアアップシステムのポイント

 ポイントは新しい情報を作成する必要がないことです。皆さんが紙や電子データのかたちでお持ちの情報を入力していくだけです。システム内で情報が有機的に結合し、電子的に蓄積されます。技能者の就業履歴や社会保険加入状況が集約され、施工体制台帳などもシステムを利用して作成可能になります。日本でもトップクラスの巨大データベースが出現すると考えられます。

建設キャリアアップシステム導入の背景

建設キャリアアップシステム導入の背景:建設業の現状

 ひとつは就業者の高齢化です。30歳未満の就業者は2016年時で約11%しかいません。
5~10年後には現在の50~60代の就業者が大量離職します。元気なうちは仕事を続けるとしても、若い世代が少なくなると業界全体が停滞してしまう。

 もうひとつは建設業の採用状況を見ると、建設業の有効求人倍率は平均5.5倍、職種によっては最大10倍です。需要があるにもかかわらず、採用ができていません。しかも厚生労働省がまとめた建設業における2014年3月卒の学卒就職者の3年以内離職者は大卒30.5%、高卒47.7%に達します。中長期的な担い手の確保に向けて、建設業界自体を魅力的にしていかなければいけません。

若年労働者の志向:若年労働者と事業者の認識のズレ

 若年労働者と事業者の認識に大きなズレがあります。企業が考える若年技能労働者が定着しない理由と若年層が仕事を辞めた理由を比較してみました。事業者側が「作業がきつい」「職業意識が低い」「人間関係が難しい」などをあげているのに対し、若い人は「雇用が不安定」「作業場が遠い」「キャリアアップの道筋が描けない」などを指摘しています。

若年労働者の志向:キャリアを重要視

 リクルートキャリアの「2019年卒業の学生が就職先を確定した理由」を調査した結果では1位は「自らの成長が期待できる」でした。約半数の学生が自らの成長を重要視しており、現在の若年層はキャリアへの志向が際立って高いといえます。

キャリア視点から見たCCUSの特徴

 キャリア視点から見ると、CCUSには下記のような特徴があります。
例えば評価・待遇に対する公平性が担保されますから、具体的なキャリア設計が可能になります。
事業者側にとっても従業員を公正に評価するための一つの材料になると思います。

CCUSに伴う取り組み

 CCUSに伴い、下記のような研究もされています。

CCUSに伴う取り組み

出典:「建設キャリアアップシステム~制度概要と運用状況~」セミナー資料より

建設キャリアアップシステムのメリット・留意点・課題

技能者にとってのメリット

 技能者にとってのメリットは評価の最適化が見込めるほか、人材の育成・雇用に力を入れている企業が評価されるという優良事業者支援が期待できることです。

技能者にとってのメリット

出典:「建設キャリアアップシステム~制度概要と運用状況~」セミナー資料より

事業者にとってのメリット

 事業者にとってのメリットは人員管理の効率化、現場管理の効率化、建退共の手続の簡素化です。
事業者として必須になる各種作業・手続が一つのデータベースによって電子化・効率化されます。

事業者にとってのメリット

出典:「建設キャリアアップシステム~制度概要と運用状況~」セミナー資料より

建設業界にとってのメリット

 建設業界にとってのメリットは業界の安心感の熟成と過度な競争の抑制です。
不良不適格の業者は信頼を得られず、仕事を受注できません。あわせて事業者の適正な取り組みが評価され、適正な事業者が選ばれやすくなり、不健全な競争が抑制されます。

建設業界にとってのメリット

出典:「建設キャリアアップシステム~制度概要と運用状況~」セミナー資料より

建設キャリアアップシステムの留意点

 留意点の1 つ目は登録料・利用料が必要なことです。事業者は資本金によって登録料が異なるため、注意しなければなりません。2 つは元請け、上位下請けが登録しないと、下位下請けの登録が不可能であることです。3 つは評価は各事業者次第であることに変わりはないことです。

建設キャリアアップシステムの課題

 登録の不備が9割に上っています。情報の真偽・正確性を担保するために提出情報や添付書類などが多いからです。
開始初年度の登録目標は100万人ですが、2019年9月末時点で11.6万人に留まっていました。10月時点で12万人を超えましたが、まだまだです。それでも12万人が登録したわけですから、今後、普及は進んでいくことは間違いありません。

将来に向けて

 5年後の2024年には全技能者約330万人の登録を目指しています。
さらにカードランク分けの正式実施に向けて、職種ごとに業界団体が基準を策定中です。
APIによる各種業務への応用も視野に入れています。例えば経営管理や資金管理など民間のシステムにAPI連携をすることで、さまざまな業務への応用が可能になります。CCUSを導入したことで、建設業界をより良いものにしていくスタートラインに立ったと考えることができます。

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 講師ご紹介 

汐留パートナーズグループ
汐留パートナーズ株式会社 代表取締役
公認会計士(日米)・税理士 前川 研吾 氏

北海道大学経済学部卒業。公認会計士(日米)・税理士。 公認会計士試験合格後、新日本有限責任監査法人監査部門にて、建設業、製造業、小売業、金融業、情報サービス産業等の上場会社を中心とした法定監査に従事。 また、同法人公開業務部門にて株式公開準備会社を中心としたクライアントに対する、IPO支援、内部統制支援(J-SOX)、M&A関連支援、デューデリジェンスや短期調査等のFAS業務等の案件に数多く従事。 2008年4月、27歳の時に汐留パートナーズグループを設立。 税理士としてグループの税務業務を統括する。

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