就職戦線はもう終盤?/採用選考の早期化加速

時計アイコンこの記事は約 3 分で読めます。
就職戦線はもう終盤?/採用選考の早期化加速 ヘッダー画像

CONTENTS

     3月に入った。3月と言えば、入試の合格発表や卒園・卒業式など一つの節目・ゴールを思い浮かべる方が多いのではないか。一方、就活生にとっては就職情報解禁という「スタート」の月である。ただ、これは政府ルール上の話であり、実際の就活は随分前に号砲が鳴ったようだ。若年層向け就活サイトなどを運営する企業のアンケートによると、2027年3月卒業予定の理系学部生・院生の内々定率は、25年12月末時点で既に5割近くにまで達しており、採用選考の早期化が加速している。人材の争奪戦が激化する中、労働集約型の代表産業とも言える建設産業の戦略はいかに。

    恒久的な人手不足時代が到来

     筆者が大学を卒業したのは1992年3月。4月にメーカー系のソフトウエア企業に就職し、システムエンジニアとして働いた。創設から10年足らずの企業だったが、同期入社は過去最高人数だった。その1年ほど前にバブル経済は崩壊していたものの、多くの企業が採用人数を減らさなかった。内定解禁日に海外旅行や、国内リゾートホテルで研修という名の宴会など、あの手この手で内定者を囲い込んだ。そんな超売り手市場だった就職活動は、翌年から一気に氷河期に入る。企業側が採用人数を大幅に抑制したことに加え、第2次ベビーブームともいわれる団塊ジュニア世代の就職時期と重なり、供給が需要を圧倒的に上回ったのである。

     その後、労働市場は「いざなみ景気」による一時的な回復はあったものの、リーマンショックで再び悪化した。そして迎えた2010年代前半、生産年齢人口(15~64歳)の本格的な減少や、「団塊の世代」の一斉退職、医療・介護・物流といった労働集約型産業の需要増など、社会構造の変化に伴う慢性的な人手不足により、受給ギャップが大逆転したのだ。もはや「景気が良いから一時的に人が足りない」ということではない。コロナ禍明けの景気回復とも相まって人手不足感が急上昇しており、企業の人材争奪戦も熱を帯びているように思える。

    大卒初任給「30万円の壁」を突破

     まずは初任給の引き上げである。筆者が大卒で入社した頃の初任給の相場は18万円程度だったと思う。当時は「20万円の壁」が立ちはだかり、しばらくこの壁を突破できずにいた。むしろその後の景気後退により微減した感がある。これが10年代半ばに前述の受給ギャップ逆転などにより、20万円を突破。しかし、まだ上昇カーブは緩やかで、数年かけて1万円アップ程度だった。それがここ2~3年、1年で数万円アップという企業が相次ぎ、「30万円の壁」を超えた企業も少なくない。例えば、IT大手のサイバーエージェントは23年度から新卒初任給を42万円としている。コンサルや不動産などでも40万円超の企業がある。建設業界はどうかというと、大和ハウス工業が25年度から35万円に引き上げたほか、大手ゼネコンや設備企業などで30万円以上となっている。初任給は多くの学生にとって企業選択の大きな指標となっているだけに、今後も上昇基調が続きそうだ。

    インターンシップに注力、紹介・再雇用も

     インターンシップに力を入れる企業も多い。日刊建設通信新聞社がゼネコンなどを対象に実施したアンケート調査でも「インターンシップの実施などにより、入社後のイメージを学生にうまく伝えることができた」「インターンシップ生の受け入れ人数を増やしたことが採用目標人数の確保につながった」などの回答が寄せられた。また、かねてより行われてきたOBらリクルーターによる学校訪問も相変わらず盛んだ。あるゼネコンでは、学校訪問の回数を1回から3回に増やしたことで前年の2倍以上の新卒を採用できたという。企業トップは「訪問回数を増やしただけでなく、技術者に現場を休ませて大学に行かせ、魅力を伝えたことが奏功したと思う」と話す。また、別のゼネコンではリクルーターに対する研修を充実させている。「自社のことを語れるという意味で、リクルーター教育を超えた社員教育の意義がある」(同社社長)。このほか、採用の母集団形成に向けた新たなトレンドとして工業高校生に加え、普通科の高校生にも採用の門戸を広げる企業が増えている。中途採用では、社員に友人や知人などを紹介してもらうリファラル採用、元社員を再雇用するアルムナイ採用などさまざまな対応が見られる。

    ライバルは他産業、業界の魅力発信が鍵

     ただ、これらの手だてを講じても計画どおりの人数を採用できるのはごく一部であり、建設業全体では苦戦している企業が大半だ。とりわけ地方の中小・零細企業では総じて打つ手も少ない。過疎が進んでいる地域では、20代はおろか、30代、40代の働き手もなかなか確保できないという。同業のライバル企業より一人でも多く優秀な人材を獲得したいと思う気持ちはどこも同じだろうが、競争相手は同業他社よりも他産業の方がはるかに多く、会社が魅力的に見えるよう知恵を絞っている。人材採用の在り方は、時代の変化とともに進化している。多様な人材を取り込むためにも、建設業界の魅力を発信する重要性は、これまで以上に高まっている。

    佐藤 氏
    執筆者
    株式会社日刊建設通信新聞社
    取締役執行役員 編集局長
    佐藤 俊之 

    1992年、東北大学農学部卒業。ソフトウエア会社、広告代理店などに勤務。2001年、株式会社日刊建設通信新聞社入社。主に国、地方自治体、地域建設業界などを担当。東日本大震災の発生から復旧・復興の過程を取材。2025年7月より現職。
    PickUp!
    2030年問題とは? 建設業の人手不足、対策とおすすめソリューション
    プライバシーマーク