1.はじめに
建設業界では労働者の高齢化と人員不足が依然として深刻な問題となっています。政府もそれに対応すべく、様々な補助金・助成金を打ち出しています。
今回は建設業者が使うことができる助成金とその活用法について、平成30年度に行われた見直しを含めて、2回に分けて検討していきたいと思います。
2.「建設事業主等に対する助成金」とは
建設業界においては、建設労働者の雇用改善や職業訓練などを実施する建設事業主や建設事業主団体に対して、経費や賃金の一部を国が援助する助成金として従来、「建設労働者確保育成助成金」という制度がありました。平成30年度より、この「建設労働者確保育成助成金」について見直しが行われ、助成目的別に「トライアル雇用助成金」、「人材確保等支援助成金」、「人材開発支援助成金」(以下、「建設事業者等に対する助成金」という。)に分類統合されました。各々の助成金を受けるためにはそれに対応する助成コースを受ける必要があります。
3.「建設労働者確保育成助成金」からの変更点
上述通り、「建設労働者確保育成助成金」の各助成コースは、平成30年度より「建設事業者等に対する助成金」に統合されましたが、具体的に従来の助成コースがどのように統合されたか、以下のようにまとめられます。
建設労働者確保育成助成金 | 建設事業主等に対する助成金 | |
---|---|---|
コース名 | コース名 | 助成金 |
①若年・女性労働者向けトライアル雇用助成コース | ①若年・女性建設労働者トライアルコース | トライアル雇用助成金 |
②雇用管理制度助成コース | ①雇用管理制度助成コース(建設分野) | 人材確保等支援助成金 |
③登録基幹技能者の処遇向上支援助成コース | ||
④若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース | ②若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野) | |
⑤建設広域教育訓練コース(うち推進活動経費助成) | ||
⑤建設広域教育訓練コース(うち施設設置等経費助成) | ③作業員宿舎等設置助成コース(建設分野) | |
⑥作業員宿舎等設置助成コース | ||
⑦女性専用作業員施設設置助成コース | ||
⑧認定訓練コース | ①建設労働者認定訓練コース | 人材開発支援助成 |
⑨技能実習コース | ②建設労働者技能実習コース |
また、平成30年度における主な見直しとして、若年者及び女性労働者の雇用促進を図るため、建設労働者技能実習コースにおいて、経費助成の助成率が一部変更となっています。具体的には、①21人以上の中小建設事業主については、助成対象を35歳未満と35歳以上に区分し、35歳未満の若年者に対する助成率を高く設定し、②中小以外の建設事業主については支給対象が女性に限定されており、見直し前より高い助成率となりました。
4.建設事業主等に対する助成金の対象事業者
本助成金の対象事業者は、対応する助成コース毎に定められた要件を満たし、申請期間内に申請を行った「中小建設事業主」又は「中小建設事業主団体」となります(若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)及び建設労働者技能実習コースの一部については「建設事業主」又は「建設事業主団体」)。また事業主は、雇用保険の適用を受ける必要があります。各々の用語の定義については以下の通りです。
- 建設事業主とは、建設労働者を雇用して建設事業を行う者であり、建設労働者を雇用しないで自ら建設業を行う「一人親方」及び「同居の親族のみを使用して建設事業を行っている事業主」は含みません。
- 中小建設事業主とは、資本金の額もしくは出資の総額が3億円以下、又は常時雇用する労働者数が300人以下の建設事業主をいいます。
- 建設事業主団体とは、建設事業主の団体又は連合団体であり、構成員のうち建設事業主の占める割合が50%以上、かつ、構成員である建設事業主のうち、雇用保険適用の建設事業主の割合が50%以上であり、財務及び活動等の状況からみて、事業を的確に遂行することができると認められる団体をいいます。
- 中小建設事業主団体とは、建設事業主団体であって、その構成員である建設事業主のうちに占める中小建設事業主の割合が3分の2以上の団体をいいます。
5.おわりに
今回は建設業界の人材確保にかかる助成金として、「建設事業主等に対する助成金」について、従来の「建設労働者確保育成助成金」からの変更点及びその支給対象者についてご説明しました。現在助成金を受けている建設事業主や今後助成金を受ける取り組みをする建設事業主は従来との変更点について、今一度確認する必要があります。
次回は「建設事業主等に対する助成金」のうち、特に職業訓練に係る助成金である「人材開発支援助成金」について、取り上げて見ていきたいと思います。
北海道大学経済学部卒業。公認会計士(日米)・税理士。公認会計士試験合格後、新日本有限責任監査法人監査部門にて、建設業、製造業、小売業、金融業、情報サービス産業等の上場会社を中心とした法定監査に従事。また、同法人公開業務部門にて株式公開準備会社を中心としたクライアントに対する、IPO支援、内部統制支援(J-SOX)、M&A関連支援、デューデリジェンスや短期調査等のFAS業務等の案件に数多く従事。2008年4月、27歳の時に汐留パートナーズグループを設立。税理士としてグループの税務業務を統括する。
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