1.はじめに
新型コロナの感染法上の位置づけについて、政府は今年の5月8日に今の2類相当から季節性インフルエンザ等と同様の5類に移行する方針を示しました。ポストコロナともいえる経済活動の再開が本格的にやってきました。これに合わせ、コロナ禍で特別に設定されていた補助金や優遇条件の借入金も終了するものがでてきました。
そこで今回は申請期限が迫っている補助金や、負債を増やさずに利用できる資金繰り支援策をご紹介していきたいと思います。
2.申請期限間近の助成金等
まずは申請期限が迫っている助成金です。申請期限が令和5年5月までとなっているものが多いので、対象となる事象がある場合は申請漏れがないか今一度ご確認ください。
緊急雇用安定助成金
コロナ禍に入る以前より、経済上の理由により、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が雇用の維持を図るための休業手当に要した費用を助成する制度として、雇用安定助成金が存在していました。しかし、コロナ禍において、より支給要件を緩和したものとして緊急雇用安定助成金の制度が設けられました。令和4年11月で緊急対応期間は終了となっており、令和4年12月から令和5年3月は経過措置期間となっています。申請期限は支給対象期間末日の翌日から2か月以内です。ここでは経過措置期間の支給要件等をご紹介します。
経過措置期間の雇用安定助成金は通常の雇用安定助成金より以下の要件が緩和されています。
・計画届の提出が不要…通常は休業実施前に計画届等を提出する必要がありますが、それが不要なので事後的に申請することも可能です。
・残業相殺を実施しない…判定基礎期間中に実施した休業や教育訓練の延べ日数から、その期間中に実施した所定時間外労働の日数を差し引く要件である残業相殺をしません。
・短時間休業の要件緩和…通常の雇用調整助成金制度における短時間休業は、助成金の対象となる労働者全員が一斉に実施することを要件としていますが、一部の労働者を対象とした短時間休業も助成対象としています。
支給額は賃金相当額×2/3(大企業×1/2)になり上限額は1日あたり8,355円となっています。
前述の通り、申請期限は支給対象期間末日の翌日から2か月以内なので、最終の申請期限は令和5年5月31日となります。
小学校休業等対応支援金
小学校休業等対応支援金は子どもの世話をする必要が生じた保護者が、契約した仕事をできなくなった場合に支援する制度です。
子どもが通う小学校等(保育所を含む)が新型コロナウイルス感染症に関する対応として、ガイドライン等に基づき臨時休業等をした、もしくは子どもが新型コロナウイルスに感染して休む必要が生じた場合が対象となります。要件を満たせば日額で4,177円を受給することができます。
こちらの制度は令和5年3月31日で終了することが決定されました。令和4年11月30日分までは申請受付が終了しており、令和4年12月1日~令和5年3月31日分の申請期限が令和5年5月31日までとなっております。
新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇制度導入 助成金
新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置として、医師等から休業が必要とされた妊娠中の女性労働者が、安心して休暇を取得できるように企業に助成を行う制度です。正規雇用・非正規雇用を問わず、有給の休暇(年次有給休暇を除く)を取得させた企業が対象となります。
休暇制度導入のための助成金(新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇制度導入助成金)と休暇取得支援のための助成金(両立支援等助成金 (新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援コース))の2本立てになっています。いずれの制度も以下の要件は共通です。
・新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置として、医師又は助産師の指導により、休業が必要とされた妊娠中の女性労働者が取得できる有給の休暇制度(年次有給休暇を除き、年次有給休暇の賃金相当額の6割以上が支払われるものに限る)を整備すること
・有給休暇制度の内容を新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置の内容とあわせて労働者に周知すること
加えて休暇制度導入のための助成金(新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇制度導入助成金)は、令和3年4月1日から令和5年3月31日までの間に、当該休暇を合計して5日以上労働者に取得させることが要件となっており、支給額は1事業場につき1回限りで15万円です。
休暇取得支援のための助成金(両立支援等助成金 (新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援コース))は 令和2年5月7日から令和5年3月31日までの間に、当該休暇を合計して20日以上労働者に取得させることが要件となっており、支給額は対象労働者1人当たり28.5万円(1事業所当たり上限5人まで)です。
上記は併給も可能ですが、いずれも申請期限は令和5年5月31日と迫っています。
3.下請債権保全支援事業
続いて確認する下請け債権保全支援事業は、平成22年度から国土交通省が支援している制度です。下請建設企業又は資材業者が元請建設企業に対して有する債権(手形を含む。)について、ファクタリング会社が支払保証を行うことにより資金繰りを支援する制度です。そもそもファクタリングとは何か簡単にご説明したいと思います。
ファクタリングとは取引先に対する売掛債権をファクタリング会社に買い取ってもらい、期日前に現金を得る仕組みです。得られる現金は手数料を差し引かれた金額になりますが、期日前に資金を得て資金繰りを改善することができます。この支援事業を利用すると、ファクタリング会社に支払う手数料の助成を受けることができます。債権の金額が確定していることや、取引先が経営事項審査を受けている等の一定の要件を満たす必要がありますが、取引先が倒産した場合でもファクタリング会社に現金を返却する義務はありませんので確実に資金を回収することもできます。
4.おわりに
1人親方や中小事業者にとっては長期的な資金繰り計画を立てるのは容易ではなく、目先の資金繰りに苦心するケースが多いのが実情です。そのような状況下においては受給できる助成金等は漏れずに申請できるように情報のアンテナを張っておくことが望ましいでしょう。
資金繰り支援策としては返済条件が優遇された借入金等もありますが、今回は負債を増やすことなく改善する制度をご紹介しました。今後、新型コロナウイルス感染症の落ち着きと共にコロナ関連支援策は終了していきますが中小企業等事業再構築促進事業等、今後も活用できる補助金もありますし、物価高騰等に対応した支援策が設けられる可能性は十分ありますので定期的にチェックされることをおすすめいたします。
北海道大学経済学部卒業。公認会計士(日米)・税理士。公認会計士試験合格後、新日本有限責任監査法人監査部門にて、建設業、製造業、小売業、金融業、情報サービス産業等の上場会社を中心とした法定監査に従事。また、同法人公開業務部門にて株式公開準備会社を中心としたクライアントに対する、IPO支援、内部統制支援(J-SOX)、M&A関連支援、デューデリジェンスや短期調査等のFAS業務等の案件に数多く従事。2008年4月、27歳の時に汐留パートナーズグループを設立。税理士としてグループの税務業務を統括する。
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