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物流不動産開発市場の急速な縮小
物流不動産開発市場が急速にしぼんでいる。国土交通省の2025年度計の建築着工統計によると、倉庫の着工床面積はピークだった2021年度の1338万6200平方㍍から、918万8701平方㍍にまで落ち込んだ。4年間で実に31%の減少だ。東京都内に限れば、25年度の着工床面積は12万6007平方㍍で、1件当たりの床面積が数十万平方㍍に及ぶことが少なくない大規模物流施設の着工は皆無だったと言える。都内はもともと好立地の確保が難しいという面はあるにしても、5年も経たないうちに建設市場分野の一つが消えてなくなったといっても過言ではない。
コロナ禍での急拡大
超大型の物流施設の国内での開発は、米国の物流不動産開発専業企業が日本法人を設立した00年前後から始まったが、開発が急速に進んだのは、コロナ禍がきっかけだった。自宅で過ごす時間が多くなったことに伴いEC(電子商取引)需要が急伸し、大型物流施設需要も急増した。デベロッパーを中心に多様な事業者がこれに目を付け、相次いで開発に参入し、コロナ禍前まで「数社」だった開発事業者数が、24年度ころには「70社以上」にまで増えた。
建築費高騰による採算悪化と開発の停滞
この急速な拡大が自らの首を絞め始めた。供給過多による賃料の低下が始まり、建築工事費の上昇も相まって、22年度から着工数の減少が始まった。後発の金融系開発事業者などは新規開発を止める『静かな撤退』を始めていた。それでもEC需要は旺盛なままだったため、リーシング力のある大手デベロッパーや開発ノウハウを持つ専業事業者は、事業者数の減少に伴う供給減による賃料の上昇を見込み、物流施設開発を継続する意思を盛んに発表していた。各社は、用地取得段階からゼネコンと事業計画を検討したり、躯体だけを中堅ゼネコンに発注して設備などをコストオン方式でサブコンに直接発注したりするなど、建設費抑制に知恵を絞りながら開発を続けた。
ところが、24、25年度になっても世界情勢に翻弄(ほんろう)されて建築工事費高騰の勢いが止まることはなく、いまや「用地費がゼロでもペイしない」という状況にまで陥り、着工床面積がコロナ禍前の水準にまで落ち込む結果となった。
倉庫需要が強い冷凍冷蔵倉庫も、設備費がかさみ、開発に二の足を踏み始めた。首都圏でドライと呼ばれる一般のマルチ型物流施設を新規開発するのは難しく、専業事業者は運輸業の働き方改革と人手不足に対応するための大都市間に設ける中継拠点開発に軸足を移している。専業のトップランナーを自負するプロロジスですら、直近の着工案件は福島県郡山市の地区内増設案件や愛知県岡崎市のスマートIC直結案件などとなっている。都内では、東京都府中市と板橋区で既存の物流施設を都市型物流施設に改修する案件だ。
大手デベロッパーの事業転換と今後の開発の方向性
大手デベロッパーによる超大型施設の開発予定もあるものの、高速道路IC直結の自動物流の実験と組み合わせた施設などに限られている。三井不動産は物流施設のほかにデータセンター(DC)の開発強化を見込み、野村不動産は物流施設開発の部門を「インフラ・インダストリー事業本部」としてデータセンター、エネルギー、工場などの開発を強化する方針を発表。事業分野の拡大による成長シナリオの提示という意図があるとみられるが、むしろドライ物流施設開発の困難な市場状況を浮き彫りにしたという印象を受けている。これ以外に今後、大型の開発が見込まれる案件となると、三菱倉庫や三井倉庫など既存の倉庫事業者による保有物件の建て替えなど、新規の用地取得を伴わない案件になる可能性が高い。
ではこのまま物流施設開発市場はしぼんでいくのか、というとそうではない。経済産業省が公表している「令和6年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」によると、24年の消費者向け電子商取引(BtoC-EC)の市場規模は前年比5・1%増の26兆1000億円で年々拡大しており、宅配分取扱個数も増加し続けている。さらに個人間EC(CtoC-EC)も急速に拡大しており、24年の3兆1000億円から30年には4兆円規模に達すると予測されている。国をまたいだEC市場で見ると、24年から34年までに市場規模が6倍以上に拡大する見込みだという。
おわりに
ECに限らず、共働き世帯の拡大や冷凍技術の進展に伴い冷凍冷蔵食品の需要も拡大しており、その潮流がコロナ禍前に逆流する気配はない。
こうした市場環境を踏まえれば物流施設需要はまだまだ旺盛であり、専業事業者は施設供給量の減少に伴って賃料が上昇し、建築費高騰の落ち着くタイミングを待っているとみられる。建設会社とすれば、躯体のみの発注やコストオン契約、設備分離発注など事業者が繰り出してくる建設費抑制策に対応する準備をしっかり整えておく必要があるだろう。









