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建設業界では、人手不足の深刻化や働き方改革への対応を背景に、業務効率化や生産性向上に向けたデジタル化が進んでいます。Excel運用を見直し、システムを活用した管理体制の構築に取り組む企業も増えています。
一方で、システムを導入するだけで成果が得られるわけではありません。現場の運用に合わせた仕組みづくりや、社員の理解・定着を促す取り組み、そして「使われるシステム」にするための継続的な改善が不可欠です。特に建設業では、現場ごとに異なる業務特性があるため、現場の声を反映しながら運用を定着させることが重要な課題となります。
本レポートでは、荒井建設株式会社 常務執行役員 土木技術部長 岡﨑 竜志 氏によるセミナー「『PROCES.S ユーザー導入事例』~実行予算/原価管理導入事例~」の内容をもとに、実行予算・原価管理システムの導入経緯や開発のポイント、定着に向けた取り組み、そして導入効果についてご紹介します。原価管理の精度向上と業務効率化を実現した実践事例は、多くの建設会社にとって参考となるでしょう。

荒井建設株式会社
常務執行役員 土木技術部長
岡﨑 竜志 氏
常務執行役員として土木技術系分野を担当しながら、会社全体のシステム開発に携わる。
PROCES.Sの導入履歴
PROCES.Sの導入履歴
当社のPROCES.S導入の全体の流れを示した図です。現在は、契約書と請求書の電子化や、PROCES.Sのバージョンアップに取り組んでいます。
出典:「『PROCES.S ユーザー導入事例』~実行予算/原価管理導入事例~」セミナー資料より
実行予算/原価管理システム導入の経緯
経理システムに初導入
以前はオフコン(オフィスコンピューター)を使っていましたが、サポート終了に伴い、PROCES.S Enterpriseを導入することになりました。これにより、1台の端末を交代で使用していた運用から、経理部全員が自分のパソコンで入出力ができる体制になりました。さらに、帳票出力が簡単、迅速になり、業務効率が大幅に上がりました。
出典:「『PROCES.S ユーザー導入事例』~実行予算/原価管理導入事例~」セミナー資料より
現場システム導入前の課題
経理システムを導入した当時、現場ではExcelで実行予算を作成していました。課題として、「違算」「要素に分類した管理」がありました。
違算について。Excelで自動計算していましたが、編集するうちに数式間違いが起こり、違算が多く発生していました。そのため、出来上がると、紙に出力し、現場、上長、経理部でと複数回にわたり、電卓で検算を行います。これが大きな業務負担になっていました。
要素に分類した管理について。Excelの実行予算では、原価予想を材料費、労務費、外注費と要素ごとに分類していました。私はこれに違和感を持ちました。この分け方では、設計金額と実行予算の比較が総価でしかできません。
このように、前時代的な原価管理を行っており、原価管理の個人能力差が大きかったのです。
出典:「『PROCES.S ユーザー導入事例』~実行予算/原価管理導入事例~」セミナー資料より
工事実行予算/原価管理導入の決め手
2015年に、内田洋行ITソリューションズから、最初の原価管理システムの提案をしていただきました。1回目の説明を伺い、こちらが望むことを伝えた打合せで終わりました。その後、前回の質問も踏まえて、再度提案していただいた時に、3つの導入の決め手がはっきりと見えました。
1つ目は、実行予算を工種単位で組み立てられることです。工種単位と要素単位の切り替えも自動で集計できます。2つ目は、実行予算と原価、経理と一気通貫でデータを連動できる点です。3つ目は、カスタマイズの柔軟性です。当社の帳票に合わせた対応が可能であり、運用に適したシステムを構築できる点に魅力を感じました。
これらの決め手により、原価管理の精度が向上し、現場の業務負担が軽減できると確信しました。
出典:「『PROCES.S ユーザー導入事例』~実行予算/原価管理導入事例~」セミナー資料より
導入時の決意
導入時、根本から全てを見直そうと思いました。1つ目が、切り口の変更です。工種ごとの集計は必須と考えました。そして、工種ごとの集計から業者ごとの集計に自動変換すること、推定原価算出の精度を向上することを目指しました。
2つ目が違算の撲滅です。手計算をなくし、自動計算する仕組みにしようと思いました。また、帳票を自動化して出力することで、業務量を低減したいと考えました。
3つ目は、原価管理の業務量の削減です。システムを導入して、業務量が増えては本末転倒です。積算データを読み込むこと、帳票の自動作成、不要な帳票の廃止などにも取り組みました。当時、無駄な帳票が多くありましたが、それは転職してきた私だから見えたことです。積極的な改善を行う必要があると考えました。
出典:「『PROCES.S ユーザー導入事例』~実行予算/原価管理導入事例~」セミナー資料より
システムの紹介
PROCES.S実行予算書の概要
PROCES.S実行予算書では、積算金額と対比できるよう、工種ごとに分類する形を取りました。直接経費を共通仮設費、間接経費を現場経費と変更しています。例えば大工種であるA工の中には、さらに階層化して、中工種、小工種が含まれます。一番最下段には代価表があり、直轄の材料費、労務費、外注費が一つの代価に含まれます。
共通仮設費は通常、直轄費のみですが、本システムでは外注費も含めました。12項目に細分化し、漏らさず全てを積算できる仕組みです。現場経費も同様です。
実行予算が組めたら、材料費、労務費、機械費など旧要素コードごと集計も自動的に行います。外注工事は、業者ごとに自動集計する仕組みです。現場経費は、直轄費だけを抜き出してまとめています。
出典:「『PROCES.S ユーザー導入事例』~実行予算/原価管理導入事例~」セミナー資料より
メリットとデメリット
変更前は、原価要素ごとに分類していたため、外注の原価管理に連動できるメリットがありました。しかし、その反面、請負金額と総価でしか比較できない、最終推定原価の算出が煩雑になるというデメリットがありました。
変更後は、工種ごとに設計金額と比較ができること、工種ごとに原価管理ができ最終推定原価の算出精度が上がることがメリットでした。デメリットは、新たに全ての原価に工種コードを付与する必要が生まれ、少し手間が増えるという点です。
出典:「『PROCES.S ユーザー導入事例』~実行予算/原価管理導入事例~」セミナー資料より
システム開発のキックオフ
皆さんの会社には、導入したけれども使われずにお蔵入りになっているシステムはありませんか。私は使わないシステムという悲劇だけは絶対に起こしたくないと強く思っていました。そのために気を付けたことは、「巻き込む」「意見を聞く」「譲る・通す」です。土木部の幹部全員に参加してもらい開発が始まりました。
出典:「『PROCES.S ユーザー導入事例』~実行予算/原価管理導入事例~」セミナー資料より
実行予算書(トップページ)
実行予算書のトップページの画面には、左側に工種コードが表示されています。付番方法について悩んでいた時、内田洋行ITソリューションズから工種コードを自動付番する機能の提案をしていただきました。「工種コード付番」ボタンを押すと、上から順番に601から始まる番号を自動的に振ってくれる機能です。

出典:「『PROCES.S ユーザー導入事例』~実行予算/原価管理導入事例~」セミナー資料より
また、工種ごとに予算金額と積算金額が比較しやすい画面配置となっています。積算金額には実行予算金額に入っていない世話役給料や経費が含まれているため、同一条件で比べているわけではありません。しかし、妥当か否かの目安になると考えています。
出典:「『PROCES.S ユーザー導入事例』~実行予算/原価管理導入事例~」セミナー資料より
実行予算書(内訳明細代価)
実行予算書の最下層の代価表を表示する画面です。1つの単価に、外注費と直轄材料費が複合して入っています。外注費の右側には「業者」欄があり、外注業者コードが表示されています。これにより、外注業者ごとに仕分けされ、自動集計できる仕組みです。

出典:「『PROCES.S ユーザー導入事例』~実行予算/原価管理導入事例~」セミナー資料より
外注出来高調書
当社の外注出来高調書は、数量を積み上げて、協力業者の月次出来高を集計しています。この集計表は、実行予算から自動作成されます。

出典:「『PROCES.S ユーザー導入事例』~実行予算/原価管理導入事例~」セミナー資料より
工事台帳
工事台帳は原価の総計を見るもので、工種単位で集計を行っています。月ごとの工種の合計と、入力した当月の原価が瞬時に反映されます。
出典:「『PROCES.S ユーザー導入事例』~実行予算/原価管理導入事例~」セミナー資料より
システムの浸透と効果
システムの浸透
理想のシステムは完成しましたが、本当の苦労はここからでした。システム浸透の大きな壁は、人間の本能としてある「現状維持バイアス」と「変化に伴う労力への不安」でした。
出典:「『PROCES.S ユーザー導入事例』~実行予算/原価管理導入事例~」セミナー資料より
「現状維持バイアス」の払拭
現状維持バイアスを払拭するため、操作説明会を4回開き、「なぜシステムを導入する必要があるのか WHY」「どのようなシステムなのか HOW」「導入すればどんなメリットがあるのか WHAT」を繰り返し説明しました。これはサイモン・シネックが提唱したゴールデンサークル理論(人の心を動かし行動を促すための思考フレームワーク)です。WHYから始めることは、この件に限らず、私が全ての業務で大切にしていることです。
次に、導入は4現場でのスモールスタートにしました。試してくれそうな社員に頼み込み、試行を開始しました。1年間で不都合や不足などが見えてきたことから、さらに1年試行を継続しました。
これが功を奏しました。2年の試行期間に、使っている社員がシステムのメリットを口コミで広めてくれたのです。
出典:「『PROCES.S ユーザー導入事例』~実行予算/原価管理導入事例~」セミナー資料より
「変化に伴う労力への不安」の払拭
変化に伴う労力への不安を払拭するために、一番初めに取り組んだのはマニュアル作成です。当初ご提供いただいたマニュアルは操作方法を中心とした内容でしたが、社員の皆様の理解促進と運用の標準化を図るため、業務全体の流れやシステム利用の目的、運用ルールなどを加えた運用マニュアルとして再整備しました。実行予算と原価管理とで、トータルで約180ページになりました。
次に、HELPデスクの設置です。電話を受け、現場が近ければすぐに向かい対面で、遠い現場はリモートで、相手のパソコンを操作して指導を行いました。
一定のルールは決めましたが、特に実行予算のほうでは、「あなたの管理しやすい方法でやってもいい」という自由裁量の部分を設けています。
HELPデスクに届いた変更要望や苦情をまとめて、3回のカスタマイズを行いました。1回目のカスタマイズは、試行1年目に実施しました。
出典:「『PROCES.S ユーザー導入事例』~実行予算/原価管理導入事例~」セミナー資料より
PROCES.S導入の効果
今見えている導入効果をご紹介します。
1つ目は、検算が不要となり、帳票も自動作成になったことで、業務効率が格段に上がったことです。現場の全社員がこう評価をしています。
2つ目は、工種ごとの実行予算の集計により、工種単位で積算金額と比較が可能になったことです。
3つ目は、月末の原価を入力した瞬間に、その月までの正確な原価が工事台帳ですぐに把握できることです。工種ごとの残掛高の算定も楽になりました。最終推定原価の精度も向上したと思います。
4つ目は、原価入力は現場だけでなく、本社からもできることです。これはつい最近、気付いた効果です。このシステムがあるからこそ、建築ディレクターも入力が可能となり、現場の負担軽減につながっています。
当社にとって、PROCES.Sは必要不可欠なシステムになっています。
出典:「『PROCES.S ユーザー導入事例』~実行予算/原価管理導入事例~」セミナー資料より
PROCES.Sの今後の展開
今後の展開
今後は、昨年度から取り組んでいる請求書・経費精算の電子化を進める予定です。現場請求書と一般経費精算を全て電子化し、会社全体のペーパーレス化を図ろうとしています。
電子化目標の数値は、まだ社内で承認されていない、私の希望です。
出典:「『PROCES.S ユーザー導入事例』~実行予算/原価管理導入事例~」セミナー資料より
電子化フロー(BtoBプラットフォーム×PROCES.S)
電子化フローは図で示したとおりです。PROCES.Sと株式会社インフォマートのBtoBプラットフォームで実現しようと考えています。この2社の製品でデータの連動が完了します。
システム間連動は大事です。複数の業務アプリをバラバラに導入すると、同じデータを何度も入力することになりがちです。1つのソフトで入力したデータを連動させなければ意味がありません。今、どう連動させるかを一生懸命考えているところです。
現場請求書のフローについて。資機材業者と外注業者にBtoBプラットフォームで請求書を入力してほしいと考えているわけではありません。まだ構想段階ですが、各社で作成したPDFをOCRで電子化できればと考えています。開始当初は、BtoBプラットフォーム経由、PDF添付、紙での送付と、3種類を扱うことになるイメージです。それらのデータを全て電子化することが、現在の大きな課題です。
出典:「『PROCES.S ユーザー導入事例』~実行予算/原価管理導入事例~」セミナー資料より
土木・建築作業所に届いた請求書のデータは、一度CSVにして、それをPROCES.Sに自動読み込みさせます。第一段階はこのような形になります。将来的にはAPI連携になることを期待しているところです。
一般経費についても同様のフローです。BtoBプラットフォームで社員の清算をするフローを描いていますが、現在製作中だそうです。時期は未定ですが、年内に稼働できればと期待しています。
請求書・経費精算の電子化はまだ道半ばどころか、入り口に立ったばかりです。しかし、電子化は必須と考えており、鋭意努力する所存です。
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