1.はじめに
前回は「建設事業主等に対する助成金」について、昨年度の「建設労働者確保育成助成金」からの変更点を中心にみてきましたが、今回はその中で技術者の訓練や技能実習に係る部分である「人材開発支援助成金」について詳しくみていきたいと思います。
2.人材開発支援助成金の概要
人材開発支援助成金とは職業訓練を実施する事業主等に対して訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成する等により、企業内の人材育成を支援するものであります。これは建設事業主に限った助成金ではありませんが、①特定訓練コース、②一般訓練コース、③教育訓練休暇付与コース、④特別育成訓練コース、⑤建設労働者認定訓練コース、⑥建設労働者技能実習コース、⑦障害者職業能力開発コースの7コースによって構成されており、このうち、⑤と⑥が建設事業主に対する助成金となっています。以下では建設業界に関わる部分として当該2つのコースについて見ていきます。
3.人材開発支援助成金 コースの内容
両コースとも助成目的は、建設業における若年労働者等の育成と熟練技能の維持・向上を図ることにあります。
①建設労働者認定訓練コース
職業能力開発促進法に規定する認定職業訓練又は指導員訓練のうち、建設関連の訓練を実施した場合に訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成するものです。
②建設労働者技能実習コース
- 労働安全衛生法による教習、技能講習、特別教育
- 職業能力開発促進法による技能検定試験のための事前講習
- 建設業法施行規則による登録基幹技能者講習
などの技能実習を行った場合に実習経費や実習期間中の賃金の一部を助成するものです。
4.人材開発支援助成金で受けられる助成額
各コースで受けられる助成額は以下の通りです。
「生産性要件」とは、企業における生産性向上の取り組みを支援するため、生産性を向上させた建設事業主に対して、助成額を増額するものです。具体的には、助成金の支給申請を行う直近の会計年度における「生産性」が、①その3年前に比べて6%以上伸びていること、②その3年度前に比べて1%以上(6%未満)伸びていること(金融機関から一定の「事業性評価」を得ていること)が要件となっています。「生産性」とは以下の式で計算されます。
5.おわりに
建設業界における労働者不足、熟練労働者の引退に伴う技術継承の必要性といった課題は従来掲げられておりますが、いまだ好転は出来ていないでしょう。国土交通省や厚生労働省が連携し、建設業界に向けた改革や様々な取り組みは動き出しており、建設業界に変革の波が来るのは間違いありません。しかし現場主義である建設業界はテレワークやビデオ会議等のスポット的な改善策では、効果が薄いと言わざるを得ません。建設業界の魅力発信及び助成金の周知・活用を、現場レベルで継続的に行っていく必要があります。人材確保はもちろん、確保した人材をどれだけ維持・育成していけるかが今後の重要な課題となってくるでしょう。
北海道大学経済学部卒業。公認会計士(日米)・税理士。公認会計士試験合格後、新日本有限責任監査法人監査部門にて、建設業、製造業、小売業、金融業、情報サービス産業等の上場会社を中心とした法定監査に従事。また、同法人公開業務部門にて株式公開準備会社を中心としたクライアントに対する、IPO支援、内部統制支援(J-SOX)、M&A関連支援、デューデリジェンスや短期調査等のFAS業務等の案件に数多く従事。2008年4月、27歳の時に汐留パートナーズグループを設立。税理士としてグループの税務業務を統括する。
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