60年ぶり〝丙午〟の影響は?/持続可能な建設産業へ強い変革の年に

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60年ぶり〝丙午〟の影響は?/持続可能な建設産業へ強い変革の年に

 2026年が明けた。今年はどのような1年になるのだろう。干支は丙午(ひのえうま)で「強い熱意や情熱が形になる年」という。しかし、日本では古くから、この丙午にまつわる根強い迷信がある。それは「丙午生まれの女性は気性が激しく、嫁ぎ先に災いをもたらす」というものだ。このため「丙午の年には子どもを産まない方が良い」と信じられてきた。実際、前回の丙午、60年前の1996年(昭和41年)には出生数が25%減少した。ただでさえ、出生数が減少の一途をたどっていると言うのに、また迷信めいたもので大きく減るのだろうか。

人口減少がもたらす悪循環

 40数年前、小学生だった筆者は二つ上の学年だけ学級数が少ないことを不思議に思った記憶がある。物知りの友人に尋ねると「あの学年は丙午生まれの人たちが多いから」と教えてくれた。そしてその理由も。情報化が進んだ現在、迷信を信じている人はそう多くないと思うが、当時はまだ「昔からの言い伝えには従った方が良い」という風潮が残っていたのだろう。

 2024年の日本人の出生数は68万6061人。統計開始以来、初めて70万人を下回り、過去最少を記録した。25年の出生数はまだ確定していないが、恐らくもっと少ないと思われる。そして26年、丙午の影響はどれほどのものかは推し量れないものの、よほどのことがない限り増加に転じることはないだろう。政府が思い切ったインセンティブを打ち出せば話は別かもしれないが。

 今年生まれる子どもたちのことはさておき、わが国の生産年齢人口(15歳以上65歳未満)は今後、急激に減少する。国立社会保障・人口問題研究所が23年4月に公表した「日本の将来推計人口」によると、20年に7509万人だった生産年齢人口は、40年までに6213万人(出生中位の場合)に減る見通しだ。その差は約1300万人。しかも、高校進学率(23年度、以下同)は98.7%であり、生産年齢人口の一部を構成する「15~18歳」はほぼ全員、純粋な労働者とは言えない(もちろん、アルバイトを含めて働いている人たちはいる)。さらに大学・短大、専門学校への進学率も高く「19~22歳」の約6割も同様だ。要するに統計上の数字以上に生産年齢人口は少ないのである。

 ここで、建設業の就業者数に目を向けてみる。総務省の「労働力調査」によると、建設業就業者数は、1997年の685万人をピークに減少が続いており、2024年は479万人にまで減ってしまった。前年より8万人少なく、ピークに比べると206万人のマイナスとなった。年齢階級別に見ると、「15-24歳」は前年比4万人減の21万人(全体に占める構成比率=4.3%)、「25-34歳」は10万人増の71万人(14.8%)、「35-44歳」は5万人減の81万人(16.9%)、「45-54歳」は4万人減の132万人(27.5%)、「55-64歳」は1万人増の97万人(20.2%)、「65歳以上」は6万人減の78万人(16.2%)となっている。「25-34歳」は増加したものの、そのほかの層はほとんどが減少した。

 日本建設業連合会が25年7月に策定した「建設業の長期ビジョン2.0」では、35年の建設技能者数について、現状のまま特段の施策を講じなければ、129万人の不足が見込まれると指摘している。人手不足がもたらす影響は大きい。熟練の技能者が減り、若手の育成が追い付かなくなるため、工事現場の生産性が低下して工期遅延につながるほか、品質の維持も難しくなる。また、限られた人数で多くの仕事をこなすことになり、1人当たりの負担が増える。このことが、新たな担い手の参入を阻害するという悪循環を生む。さらには、長年の経験で培われた「匠の技」が、次の世代に受け継がれずに失われてしまうなど、枚挙にいとまがない。

DX、処遇改善がカギ

 こうした中、建設業界はどのように対応していくべきか。まずは労働生産性の飛躍的向上が重要である。人手が足りないなら、一人あたりの生産性を劇的に高めるしかない。これには建設プロセス全体におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が不可欠だ。BIM/CIMを設計段階から施工、維持管理まで一貫して活用することで手戻りが減らせ、情報の共有も効率化できる。教育のデジタル化も重要だ。これまで現場を支えてきた熟練技術者・技能者が現場を見て・聞いて・触れて・感じたものをデジタルデータとして残す。その膨大なデータをAI(人工知能)などで分析することで法則性を導き出し、デジタルマニュアルとして若手に提供すれば短期間に技術を習得できる。VR(仮想現実)・AR(拡張現実)技術の活用も効果的だ。熟練者が現場で書き留めた危険箇所や注意点などをVR・AR技術と連携させれば、若手は失敗しないための知識を安全な環境で体感できるようになる。危険で重労働な作業、反復的な作業にはロボットやAI(人工知能)を導入し、技能者の負担軽減と省人化を進める。また、若い担い手を呼び込むとともに、既存の社員の定着率を向上させるには、週休2日制の徹底や建設キャリアアップシステム(CCUS)などの活用による技能・経験が適切に評価され、賃金に反映される仕組みの確立が求められる。

 わが国の建設業が再び活力を取り戻し、未来の社会基盤を築き続けるためにも、丙午が持つ「強い変革の節目」というメッセージを胸に持続可能な産業構造への転換を断行していただきたい。

佐藤 氏 執筆者 
株式会社日刊建設通信新聞社
取締役執行役員 編集局長
佐藤 俊之 氏

1992年、東北大学農学部卒業。ソフトウエア会社、広告代理店などに勤務。2001年、株式会社日刊建設通信新聞社入社。主に国、地方自治体、地域建設業界などを担当。東日本大震災の発生から復旧・復興の過程を取材。2025年7月より現職。

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