
1.はじめに
建設業界の課題として、技能者の高齢化は以前から指摘されておりました。私も行政書士として建設業関連の手続きを取り扱っておりますが、ここ最近は、営業所技術者(旧:専任技術者)の高齢化に伴う追加・変更等の手続きが増えてきたように、個人的に感じております。営業所技術者の設置は建設業許可の要件の1つであり、この要件を欠くと、許可が必要な建設業を営むことができません。そのため、リスクヘッジの観点からこのような手続きが増えてきたと解釈しております。そこで今回は、建設技能者の高齢化の状況をあらためて見直したうえで、営業所技術者の追加等の手続き(変更届)についてご説明させていただきます。
2.建設技能者の高齢化の現状
国土交通省の「最近の建設業を巡る状況について」によれば、建設業就業者は55歳以上が35.5%、29歳以下が12.0%と、業界の人口構成自体の高齢化が進行しております。さらに、年齢階層別の建設技能者数をみると、60歳以上の技能者数は25.7%と全体の4分の1を占めており、10年後にはその大半が引退することが見込まれるとされています。詳細は以下の図をご参照ください(出典:国土交通省「最近の建設業を巡る状況について」)。

3.営業所技術者の変更手続き
変更届の提出書類自体はそれほど多くありません。東京都では、原則として以下の書類を提出します。
- 変更届出書(様式22号の2)
- 営業所技術者等一覧表(別紙4)
- 別とじ表紙
- 営業所技術者等証明書(様式8号)
- 技術者の要件を証する書類(合格証明書・実務経験証明書等)
- 前任者及び新任者の確認資料
- 新任者の技術要件の確認資料
⑥については、イ)申請日現在での常勤性を確認できる資料と、ロ)技術者要件について確認できる資料に分かれます。イについては、疎明できる書類は複数ありますが、例として、マイナンバーカード(表面)と健康保険・厚生年金保険被保険者に関する標準報酬決定通知書の写しの組み合わせたものが確認資料となります。
⑦については、新たに営業所技術者となる者が担当する工事に係る国家資格保持者の場合は、当該資格の合格証明書・免許証等の写しとなります。このように国家資格保持者であれば証明は比較的容易ですが、実務上やや悩ましいのは、過去の前職での実務経験によって要件を証明しようとするパターンです。
4.実務経験での申請における注意点
営業所技術者として担当する工事について、10年の実務経験があれば営業所技術者になることができます。東京都の建設業手引きによれば「実務経験」とは、許可を受けようとする建設工事の施工に関する技術上の経験をいいます。具体的には、建設工事の施工を指揮、監督した経験および実際に建設工事の施工に携わった経験を指します。 これには、現場監督技術者としての経験も含まれますが、工事現場の単なる雑務や事務の仕事は、実務経験に含まれないとされています。
実務経験の場合、上記3の⑤の書類は、実務経験証明書(様式あり)となります。これに加えて確認資料が必要ですが、実務経験を積んだ会社が建設業許可業者か否かによって、必要となる確認書類が異なります。許可業者であれば、実務経験を積んだ期間における建設業許可通知書等がこれに該当します。現在は国土交通省の検索システムにより建設業許可業者を検索できますが、掲載は直近の許可に関する情報のみに限られ、過去の許可状況まで遡って確認することはできません。前職と折り合いが悪く、建設業許可通知書等を前職から取得できない場合でも、数年前の実務経験であれば、前述の検索により許可業者であることを確認できるケースがあります。一方で、10年前など古い時期の記録は検索では確認できません。
この実務経験の証明期間が検索等で確認できないケースでは、最近、埼玉県庁に営業所技術者の変更届出を行った際、事情を説明したところ、前職が許可業者であるかどうかを埼玉県建設業課が調査してくれたことがありました。その結果、前職が実務経験期間中に建設業者であったことが証明され、無事に変更届出が受理されました。
一方、実務経験を積んだ前職が建設業許可業者ではない場合、必要となる確認資料はさらに多く、準備も大変になります。業種が明確に分かる期間通年分の工事請負契約書・注文書または請求書等の写しが求められます。現在の職場での経験であれば、このような書類を取得できる可能性がありますが、前職の会社がここまで協力してくれるかどうかは難しいところです。
また前職において常勤で勤務していたことを証明する確認資料として、厚生年金保険の被保険者記録照会回答票の写し等が必要になります。
5.おわりに
建設業界の技能者の高齢化は、今後ますます加速していくことが見込まれます。営業所技術者についても、建設業許可の要件に関わる重要な問題です。もちろん、現在ご活躍いただいている方には、可能な限り長く働いていただくのが望ましい一方で、経営者としては、将来を見据えたリスクヘッジも検討しておくことが必要と考えます。本コラムが、今後の経営を検討する上での一助になれば幸いです。
2007年2月、行政書士・司法書士・土地家屋調査士の合同事務所に入所。建設業、宅建業等の許認可に携わるとともに申請取次行政書士として外国人の在留資格に係る申請を年間300件以上行う。独立を経て2019年1月にBIG4の行政書士法人にシニアとして入所。外国人の在留資格に関する品質管理や取次、社内教育を行うとともに、許認可を担当。在留資格においてはオリンピックやラグビーワールドカップ関連を担当。2024年4月に中井イミグレーションサービスの代表社員に就任。2025年7月、RSM汐留パートナーズ行政書士法人との合併に伴い同法人の代表パートナーに就任。行政書士。

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