国交省/21年4月1日に経審を改正/改正建設業法で1級技士補が加点対象に/継続教育受ける資格者を評価対象に
はじめに
公共工事を元請けとして受注する企業は、毎年経営事項審査(経審)の受審が義務付けられている。経審は企業の経営規模や経営状況、技術力、社会性等を審査し、各企業に客観点数を付ける。各公共発注者は客観点数と、工事成績や防災協定の締結状況など自ら審査する主観点数を合算した総合点で、各企業をランク分けし、受注可能な工事規模(発注標準)を決めている。このため、経審の改正は各企業にとって大きな影響を与える。建設業法の改正などで来年4月1日に見直される経審の改正内容をまとめた。
改正建設業法に伴い「補佐者(1級技士補)」に対し4点付与
国土交通省は7月20日、中央建設業審議会(中建審、柳正憲会長)の総会を都内で開き、経審の改正案を正式に決定した。経審の評価区分は▽完成工事高(X1)▽自己資本額・利払前税引前償却前利益(X2)▽経営状況(Y、負債抵抗力、財務健全性など)▽技術力(Z、技術職員数など)▽社会性等(W、労働福祉、営業年数、法令順守、経理状況など)で構成される。このうち、今回の改正はZ点とW点の改正となる。
Z点の改正では、10月1日施行の改正建設業法で元請の監理技術者を補佐する制度を創設するのに伴い、新設する「補佐者」を雇用する企業を加点評価する。
改正建設業法では、将来的な建設技術者や建設技能者の不足に備え、監理技術者の専任義務の緩和や主任技術者の配置義務の合理化、技術検定制度の見直しなどを行う。監理技術者や主任技術者はこれまで、請負金額が3,500万円(建築一式7,000万円)以上の工事の場合、現場への専任配置が求められていたが、新設する「補佐者」を専任配置すれば、2現場を兼務できる。
補佐者は、改正建設業法に基づく新しい技術検定制度で創設する「1級技士補」となる。新技術検定制度は従来の検定制度を見直し、学科と実地を加味した第1次検定と第2次検定に再編し、第1次検定の合格者に「技士補」、第2次検定の合格者に「技士」の称号を付与する。1級技士補は、1級の第1次検定に合格したが、1級の第2次検定には合格していない者となる。
経審のZ点ではこの補佐者に4点が付与される。ちなみに主任技術者相当には3点、監理技術者相当には5点が現在付与されている。
継続教育の観点からCPD単位取得に応じて最大10点を加点
W点では、継続的な教育意欲を促進させる観点から、新たに知識・技術・技能の向上に関する取り組み状況という審査項目を追加(W10)するとともに、建設業の経理の状況(W4)でも継続教育を義務化する。具体的には、CPDなど継続教育を受けている技術者や建設キャリアアップシステム(CCUS)を活用した「建設技能者の能力評価制度」でレベルアップした技能者の加点措置を実施。すでに加点対象となっている建設業経理士1、2級も5年に1度の講習受講を義務付ける。
技術者は審査基準日前の1年間に習得したCPD単位に応じて最大10点を加点。技能者は能力評価制度でレベル2以上にレベルアップした技能者の割合に応じて、最大10点を加点する。企業によって技術者や技能者の割合が違うため、独自の計算式に基づいて算出する。
建設業経理士は現在、資格取得者に1級で1点、2級で0.4点を加点しているが、5年に1度の講習受講を義務付け、講習受講者「登録1・2級建設業経理士」だけを加点対象にする。近く「登録経理講習実施機関」を指定し、21年4月以降に登録経理講習実施機関が開催する講習の受講を義務付ける。16年以前の資格取得者に対する経過措置として、23年3月までには講習を受講しなくても要件をクリアしているとみなす。
提出書類なども簡素化、22年度に電子申請に移行
このほか、経審の提出書類も簡素化する。現在、完成工事高の上位5件までに提出する工事請負契約書は上位3位までに削減。技術職員名簿も有効期限がない資格の有資格者について過去に提出した資料の再提出は求めない。2022年度には建設業許可や経営事項審査(経審)の電子申請を開始する予定で、その際には他省庁などが保有するシステムとも連携させ、経審に必要な国税・社会保険・法人登記の証明書類の添付も不要にする方針だ。
日刊建設工業新聞社
常務取締役編集兼メディア出版担当
坂川 博志 氏
1963年生まれ。法政大社会学部卒。日刊建設工業新聞社入社。記者としてゼネコンや業界団体、国土交通省などを担当し、2009年に編集局長、2011年取締役編集兼メディア出版担当、2016年取締役名古屋支社長、2020年5月から現職。著書に「建設業はなぜISOが必要なのか」(共著)、「公共工事品確法と総合評価方式」(同)などがある。山口県出身。