建設現場の週休2日の実現について

働き方改革の進捗状況は/4週8閉所は果たして可能なのか

 2024年4月の時間外労働上限規制の建設業界への適用が3年を切った。国土交通省は適切な工期設定をはじめ、週休2日モデル工事や週休2日交替制モデル工事など、各種の施策を通じてその実現に取り組んでいる。ただ、地方自治体発注工事や民間工事などをみると、足取りは遅い。5~6月に全国9カ所で行われた日本建設業連合会と各地方整備局の意見交換会の内容を参考にしながら、現場の週休2日の現状と、実現には何が必要になるのかを整理してみた。

公共工事の多い土木が先行

 昨年、日本建設業連合会がまとめた週休2日実現に向けた取り組みの2020年度上期フォローアップ報告書によると、建設現場の4週6閉所以上は72・4%、4週8閉所以上は37・9%と前年同期からそれぞれ3・9ポイント、7・9ポイント上昇した。日建連の「週休二日実現行動計画」(2017~2021年度)では、2021年度末までに4週8閉所の達成率100%を目標に掲げているが、この数値を見る限り目標達成はかなり厳しい状況だ。

 調査は2020年4~9月の26週を対象に実施。102社が回答した。土木・建築別では、土木の4週6閉所以上の割合は78・7%(2019年度上期74・4%)、4週8閉所以上は44・1%(36・7%)、建築は4週6閉所以上が66・3%(63・2%)、4週8閉所以上は31・9%(23・9%)だった。いずれも改善は進んでいるものの、民間工事が中心の建築に比べ、公共工事主体の土木の閉所率が高い傾向が続いている。

中部整備局は完全週休2日を導入

 こうした現状を踏まえ、昨年に引き続きウエブ形式で行われた日本建設業連合会と各地方整備局との意見交換会では、現場の週休2日の実現に向けた意見が活発に交わされた。特に注目されたのが、中部地方整備局が本官工事で土日・祝祭日を閉所する完全週休2日の導入を打ち出したこと。四国地方整備局もトンネル工事2件で完全週休2日の試行を行うと表明。完全週休2日に踏み込んだ点は、業界からも高い評価を得た。

 週休2日モデル工事の導入で後れを取る地方自治体の中でも、兵庫県や石川県などが土日閉所に取り組んでいることを紹介。積極的に現場閉所を進める地方自治体が出てきたことで、他の地方自治体にも刺激になりそうだ。

 日建連は今回、発注者指定型による週休2日モデル工事の実施を強く要望した。週休2日モデル工事は、発注時に発注者が強制的に週休2日を行うことを指定する「発注者指定型」と、受注者が希望して週休2日モデル工事を行う「受注者希望型」があるが、発注者指定型でないと双方の責任の感じ方が違うと指摘し、できるだけ「発注者指定型」での実施を求めた。

 もう一つ強く求めたのが土曜閉所などが難しい現場での対応。現場閉所ではなく、技術者が確実に週休2日を取得できる週休2日交替制モデル工事の試行拡大や、週休2日の実績確認を施工の各段階で行い、休日取得の実態を着実に把握するよう求めた。これは時間外労働と休日労働の合計が例えば2カ月平均で1カ月当たり80時間以内(3・6協定を締結した場合)と決められているため、天候の良い時期に集中して仕事を行い、天候の悪い時に休日を増やすということができないためだ。時間外労働が集中しないように発注者側に配慮を求めた。

鍵となる施工条件明示リストの開示

 現場閉所日を増やすためには、モデル工事の実施だけでなく、さまざまな対応が必要となる。適切な工期の設定はもちろんだが、日給月給で働く技能労働者の給与水準をこれまで通りで維持できるか、条件が変更された場合に工期を柔軟に対応できるかという点も重要になる。そのために強く要望したのが条件明示リストや概略工程表の開示だ。工期設定がどのような前提条件のもとで行われたのか、もし条件と違った場合、設計変更が可能になるように求めたものだ。

▼ 日本建設業連合会が調査した工期の不足度合い

 日建連ではさらに、受発注者双方が意見交換できる「施工条件確認会議」や「設計変更審査会」などの適切な開催も要望。昨年7月の中央建設業審議会で決定された「工期に関する基準」では、著しく短い工期での請負契約の締結を禁止した。これを順守するには、こうした会合を通じ、受発注者双方の意思疎通を高めることが重要だと指摘した。

 現場の業務改善や生産性向上なども要望。現場では多くの書類作成が必要となるが、こうした事務作業が長時間労働につながっている。また、施工段階の各検査業務も受発注者双方で大きな負担となっている。このため、提出不要な添付書類の選別や様式の統一化、検査書類限定型モデル工事の拡大などを求めるとともに、コロナ禍で急激に進んだ遠隔臨場の適用拡大も要請した。

公共工事で進め、民間工事に波及させる

 現場の週休2日は受注者側の努力だけではなかなか実現が難しい。発注者側も一緒になって各種施策を進め、週休2日への理解を深めてこそ、達成が可能となる。もちろん、ICT(情報通信技術)やAI(人工知能)などの最新技術を活用した生産性向上や、工事の平準化など並行して進めないと、簡単には労働時間は短縮できない。

 一方、日給月給で働く技能労働者に適正な賃金が支払われるようにするには、建設キャリアアップシステム(CCUS)の普及が重要になる。残された時間はあと2年半程度。CCUSをもっと普及させ、技能に基づいた賃金が支払われるようにならなければ、仮に現場の週休2日が進んでも、安い賃金では技能者がいなくなる。まずは公共事業から現場の週休2日を徹底させ、その後民間工事に浸透させていく。こうした道筋が自然だろう。いずれにしても、この2年半が建設業界にとって踏ん張りどころであることは間違いない。

坂川 博志 氏 執筆者 
日刊建設工業新聞社
常務取締役編集兼メディア出版担当
坂川 博志 氏

1963年生まれ。法政大社会学部卒。日刊建設工業新聞社入社。記者としてゼネコンや業界団体、国土交通省などを担当し、2009年に編集局長、2011年取締役編集兼メディア出版担当、2016年取締役名古屋支社長、2020年5月から現職。著書に「建設業はなぜISOが必要なのか」(共著)、「公共工事品確法と総合評価方式」(同)などがある。山口県出身。

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