建設業と女性活躍推進法
建設業界では労働力不足の問題が深刻化しています。現状を打破し業界全体を活性化させるため、2014年8月の「もっと女性が活躍できる建設業行動計画」策定以降、官民一体となって女性の採用や就労継続に向けた様々な取り組みが行われてきました。
CONTENTS
01.女性活躍推進法とは
02.女性活躍推進法改正の3つのポイント
03.【行動計画策定義務化】新規対象企業の取組ステップ
04.建設業における女性の定着促進への動き
女性活躍推進法とは
女性活躍推進法(正式名称:「女性の職業性格における活躍の推進に関する法律」)は、2015年8月に国会で成立し2016年4月に施行された法律で、常時雇用労働者(※)301人以上の事業主を対象に、女性が活躍できる行動計画を策定・公表するよう義務付けています。10年間の時限立法のため、2026年までの取組となっています。
少子高齢化による労働力不足の深刻化を背景に、国が潜在的な労働力として「女性」の雇用に着目して制定されたのもので、自分の意思で働いている、もしくは働きたいと考えている女性について、個性や能力を十分に発揮して活躍できる働き方の推進を目指しています。
女性の活躍推進に関する取組の実施状況が優良な企業については、申請により厚生労働大臣の認定(えるぼし認定)を受けることができます。認定を受けた企業は、認定マーク(えるぼしロゴ)を商品などに付けることが可能となります。
※正社員だけでなく、1年以上継続または事実上期限を定めずに雇用されている契約社員やパートを含みます。
女性活躍推進法改正の3つのポイント
2022年4月1日施行
一般事業主行動計画の策定義務の対象拡大
「一般事業主行動計画の策定・届出義務」および「自社の女性活躍に関する情報公表の義務」の対象規模が、常時雇用労働者301人以上から101人以上の事業主に拡大されます。
2020年6月1日施行済
女性活躍に関する情報公表の強化
常時雇用労働者301人以上の事業主について、情報公表項目が変更になりました。以下2つの区分の中から、1項目以上を公表する必要があります。
- 職業生活に関する機会の提供に関する実績
- 職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関する実績
2020年6月1日施行済
特例認定制度(プラチナえるぼし)の創設
女性の活躍推進に関する状況等が優良な事業主に対して、従来の「えるぼし認定」よりもさらに水準の高い「プラチナえるぼし」認定が創設されました。
「プラチナえるぼし」認定を受けると、一般事業主行動計画の策定・届出が免除されます。
【行動計画策定義務化】新規対象企業の取組ステップ
「一般事業主行動計画の策定義務の対象拡大」施行後、新たに対象となる常時雇用労働者101人~300人の事業主が取組むべき3つのステップをご紹介します。
Step1. 女性労働者の「活躍状況の把握」と「課題分析」
まず女性労働者の活躍状況を知るために、①女性採用比率 ②勤続年数男女差 ③労働時間の状況 ④女性管理職比率の4つの現状を把握します。その上で、現在の活躍状況に対し課題分析を行います。
Step2. 行動計画を「策定」→「社内周知」→「外部公表」
Step1で認識した課題に対し、行動計画を策定します。行動計画には、①目標(1つ以上の数値目標) ②取組内容 ③実施時期 ④計画期間が必須となります。
行動計画の策定が完了したら、その内容を社内ネットワークへの掲示等で社内周知し、会社ホームページ等で外部公表します。
Step3. 東京労働局に策定届を「届出」→「情報の公表」
『一般事業主行動計画策定・変更届』を策定したら、都道府県労働局に届出をします。届出方法は、電子申請、郵送、持参です。
その後、女性の活躍に関する取組状況や結果を定期的に公表しましょう。
「女性の活躍推進企業データベース」とは・・・
行動計画の外部への公表や女性の活躍に関する情報公表等の掲載先として、厚生労働省が運営している「女性の活躍推進企業データーベース」が提供されています。
自社の情報を掲載するだけでなく、他社の取組を検索・閲覧し、自社の行動計画を策定するヒントとすることもできます。
URL:https://positive-ryouritsu.mhlw.go.jp/positivedb/
建設業における女性の定着促進への動き
他業種同様、建設業界でも労働力不足の問題が深刻化しています。
現状を打破し業界全体を活性化させるため、2014年8月の「もっと女性が活躍できる建設業行動計画」策定以降、官民一体となって女性の採用や就労継続に向けた様々な取り組みが行われてきました。
一方で、「新・担い手3法」「i-Construction」「建設キャリアアップシステム」など建設業界を取り巻く環境は変化し続け、その中で「就業の継続」が大きな課題であることが顕在化してきました。
その後2020年1月、建設業界で働く全ての女性が「働きがい」と「働きやすさ」の両立により就業継続を実現することを目的に、「働きつづけられるための環境整備を進める」「女性に選ばれる建設産業を目指す」「建設産業で働く女性を応援する取組を全国に根付かせる」という3本の柱をを中心とした「女性の定着促進に向けた建設産業行動計画」が策定されました。2024年までに入職者数に対する離職者数の割合や、入職者に対する女性の割合、新計画の認知度100%を目指し、様々な活動が行わています。
いかに女性の入職者数を増やし、どこまで環境整備を進められるかが、建設業界における今後の人手不足問題解決の糸口となりそうです。
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【参考】
・厚生労働省 女性活躍推進法特集ページ(えるぼし認定・プラチナえるぼし認定)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091025.html
・厚生労働省 東京労働局「行動計画策定かんたんガイド」
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/kinto2/joseikatsuyaku300ika.html
・国土交通省 「女性の定着促進に向けた建設産業行動計画」
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001323990.pdf