なぜ、いま防災なのか?
国土交通省令和4年度予算を紐解けば、防災・減災が大きな比重を占めているのがわかります。今後の建設需要の動向を占う内容といえるでしょう。なぜ、いま政府主導で防災・減災に注力されているのか? そのなかで建設業に期待される役割は? BCPの重要性と併せて概説します。
CONTENTS
01.一般会計予算にみる建設業の今後
02.差し迫る大災害とインフラ老朽化
03.建設業のBCPについて
04.クラウド化のススメ

一般会計予算にみる建設業の今後
国土交通省の令和4年度一般会計予算として、5兆8,770億円が計上されています。予算配分を紐解けば、国土交通省が現在どの分野に注力しようとしているのか、引いては今後の建設需要の動向が予測できます。
前回の記事で取り上げたカーボンニュートラル実現に向けた取り組みやDX(デジタルトランスフォーメーション)に向けた取り組みが順当に挙がるなか、国民の安全・安心の確保、すなわち災害対策の比重が特に大きいことは明らかです。
2020年に防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策が閣議決定されたこともあり、防災方面の建設需要が2025年まで安定して続くことは間違いありません。
差し迫る大災害とインフラ老朽化
海と山に囲まれ、四季の移ろいが激しいわが国は、自然に恵まれる一方で常に自然災害リスクに晒される世界有数の災害大国でもあります。
世界のわずか0.3%を占める国土に災害被害額の17%が集中しており、近年、地球温暖化の影響による台風や水害といった気象災害の激しさや頻度は増加の一途を辿っています。
とりわけ危惧されているのは、南海トラフ巨大地震/首都直下地震でしょう。同地域で30年以内にマグニチュード7クラスが発生する確率は70%といわれており、それぞれ32万人超/2.3万人超の死者・行方不明者が発生すると予測されています。
死者・行方不明者数 | 住宅全壊戸数 | |
---|---|---|
南海トラフ 巨大地震 |
約32.3万人 | 約238.6万棟 (東日本大震災の 約20倍) |
首都直下地震 | 約2.3万人 | 約61万棟 (東日本大震災の 約5倍) |
(参考) 東日本大震災 |
22,118人 | 12万1,768棟 |
一方で、1955年から1973年の高度成長期に整備された道路・鉄道・港湾・空港などのインフラが、現在、一斉に老朽化していることも懸念事項に挙げられます。道路橋・水門などの河川管理施設・港湾岸壁では、建設後50年以上経過する施設の割合が2033年には約63%に達する見込みで、ここに大規模災害が重なれば、甚大な被害は避けられません。
冒頭に挙げた国土交通省の予算配分は、こうした事情への危機感が顕在化したものといえます。大災害自体は避けられなくとも、被害を最小限に抑える必要があり、それには建設業の活躍が不可欠です。防災・減災のみならず、実際に災害が起こった際も、道路啓開やすみやかな復旧など、期待される役割は非常に大きいでしょう。建設業にとってBCPが特に重要な意味を持つのは、このためです。
建設業のBCPについて

2011年の東日本大震災の際には、消防・救急・警察・自衛隊・医療者の活躍とともに、地元建設事業者の奮闘も目覚ましいものがありました。被災したインフラが早期に復旧し、二次被害を最小限に抑えることができたのは、ひとえに現地の建設事業者の不眠不休の応急活動の賜物です。
自身も被災者でありながらいち早く現場に駆けつけ、燃料・食料も心許ない状況で準公共的な役割を果たしたその献身的な姿勢は、災害の多いわが国における建設業の理想的な在り方を体現したといえるでしょう。
斯様に、有事において特に重要な役割を担う建設業では、他業種よりもBCPがより重要となります。BCPはBusiness Continuity Planの頭文字をとったもので「事業継続計画」と訳され、有事の際に損害を最小限に抑え、重要業務を継続、あるいは早期復旧を図るための計画全般を指します。(参考記事:「いまだからこそ見直すべきBCP対策の重要性」)
災害時において最も重要なのはいうまでもなく人命であり人びとの安全ですが、それらを守るために事業を滞りなく継続する使命を帯びた業種もあります。医療施設がそうであるように、生活インフラを支える建設業もまた、高い企業防災力が求められるエッセンシャルサービスのひとつであることは議論の余地がありません。
そうした特性から、建設業における BCP 策定率は31.2%にのぼり、金融・保険業、情報通信業に次ぐ数字となっています。
自然災害リスクが高まる昨今、未策定の事業者様は策定を急ぎ、策定済みの事業者様はこの機会に新たな知見を採り入れ、計画の補強を図ってはいかがでしょうか。
クラウド化のススメ
内田洋行ITソリューションズでは、建設事業者様のBCPの一環として基幹システムのクラウド化をお勧めしています。自社で購入したサーバーにソフトウェアをインストールして利用するオンプレミスに対し、外部サーバーを利用する運用方式がクラウドです。
東日本大震災の際、カルテを電子化してクラウド移管していた医療施設ほど復旧が早く、滞りない医療活動を続けられた事例が数多く報告され、クラウドシステムはその耐災害性の高さについて広く証明しました。
建設事業者でも、被災によって本社屋が消失したにもかかわらず、クラウド化していた情報・システムは難を逃れ、迅速な復旧に結びついた例が報告されています。
建設・工事業ERPシステム PROCES.Sは、クラウドを活用してデータを一元管理、業務効率化を実現する基幹業務システムです。バックアップデータを外部データセンターに退避させることができるため、BCPの一環としても大いにお役立ていただけます。
クラウド導入をご検討される事業者様向けに、クラウド活用のメリット/ベネフィットをわかりやすくまとめた資料を別にご用意しました。こちらも併せてご活用ください。