社会情勢の変化に伴う建設業界の外国人材の活用について

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     人口減少と労働力不足が深刻化するなか、建設業界では担い手の高齢化と若年層の減少が進んでいます。こうした課題を背景に注目されているのが、外国人材の活用です。

     特定技能制度や2027年に導入される育成就労制度など国の制度改革も進み、建設分野における外国人受入れの枠組みは大きく変わりつつあります。

     本記事では、RSM汐留パートナーズ行政書士法人の景井氏を講師に迎えて2025年11月に開催されたWebセミナー、「社会情勢の変化に伴う建設業界の外国人材の活用について」をレポートします!

    日本の人口減少・労働力人口不足

    日本の総人口は2050年には約1億人へ減少

     まずは、日本人口に着目して、社会情勢の変化を見ていきます。

     日本の人口は2008年をピークに減少傾向にあります。2025年10月1日現在、総人口は前年同月に比べて59万人減少しています。これは日本人人口の減少と外国人人口の増加が含まれた数字です。日本人人口だけを見ると、93万9,000人の減少となっています。

    日本の総人口は2050年には約1億人減少

    出典:「社会情勢の変化に伴う建設業界の外国人材の活用について」セミナー資料より

    日本人は約502万人減少、外国人は約173万人増加

     人口の日本人/外国人比率を見ると、2015年からの9年間で、日本人人口は約502万人減少したのに対し、外国人人口は約173万人増加と、外国人比率が拡大しているのが見て取れます。豊島区など一部の地域では10%を超え、10人に1人は外国人という状況で、欧米諸国並みとなっています。

    日本人は約502万人減少、外国人は約173万人増加

    出典:「社会情勢の変化に伴う建設業界の外国人材の活用について」セミナー資料より

    生産年齢人口・若年人口は減少する一方、高齢人口は増加

     人口減少を年齢階層別に見ると、2015年から2050年にかけて、高齢人口が増加し、生産年齢人口や若年人口は減少する見通しです。2050年には、高齢化率が約38%に達し、2人に1人が高齢者になると予想されています。

    生産年齢人口・若年人口は減少する一方、高齢人口は増加

    出典:「社会情勢の変化に伴う建設業界の外国人材の活用について」セミナー資料より

    約1億人の人口でも構成に大きな変化が

     2050年の総人口は、1970年と同じ約1億人になると予想されていますが、年齢構成は大きく異なります。2050年の人口構成を見る限り、将来的に人手不足が解消するのは難しいことが分かります。

    約1億人の人口でも構成に大きな変化が

    出典:「社会情勢の変化に伴う建設業界の外国人材の活用について」セミナー資料より

    建設業界の担い手不足と外国人の活用

    建設業をとりまく現状(建設投資、許可業者数及び就業者数の推移)

     次に、建築業のデータを見ていきます。

    建設業をとりまく現状(建設投資、許可業者数及び就業者数の推移

    出典:「社会情勢の変化に伴う建設業界の外国人材の活用について」セミナー資料より

     建設投資額はピーク時の約84兆円から、平成22年度には約42兆円まで落ち込みました。その後、増加に転じ、令和5年度は約70兆円となる見通しです。建設投資の増加に伴い、人手も必要になっています。

    建設業をとりまく現状(建設業就業者の現状)

     現在、建設技能者の4分の1を60歳以上が占めています。そして、10年後にはその半数が引退すると見通されています。一方、29歳以下の若年層の割合は12%程度です。現在の建設従事者の年齢構成分布は、2050年の日本の人口構成と類似しており、日本の人口問題を先取りしている形になっています。先進的な取り組みが必要になることが予見されます。

    建設業をとりまく現状(建設業就業者の現状)

    出典:「社会情勢の変化に伴う建設業界の外国人材の活用について」セミナー資料より

    外国人建設技能者の現状

     建設業界の人手不足の解消方法として、外国人労働者が活用されています。建設現場では、技能実習と特定技能の在留資格保有者の割合が群を抜いています。

     次に、技能実習と特定技能について詳しく見ていきます。

    外国人建設技能者の現状

    出典:「社会情勢の変化に伴う建設業界の外国人材の活用について」セミナー資料より

    特定技能制度について

    人手不足を解消するための制度

     特定技能制度は日本全体の人口不足、生産労働人口不足を補う制度として、国により創設されました。建設分野は制度の対象となる「人材確保が困難な産業分野」に該当します。他にも介護分野、ビルクリーニング分野など資料に挙げている分野が対象です。

    人手不足を解消するための制度

    出典:「社会情勢の変化に伴う建設業界の外国人材の活用について」セミナー資料より

     制度開始時点から対象分野は拡大しており、今後も人手不足の産業が追加されることが予見されます。これは、国が人手不足の産業の解決手段として、外国人材の活用を一つの軸に置いている表れだと思います。

    特定技能の種類-特定技能1号-

     特定技能には1号と2号があり、1号は「相当程度の知識及び経験を要する業務に従事」する者と定められています。

     1号取得の要件を一部抜粋して資料に掲載しています。このうち健康状態の証明として、申請時に健康診断の結果等を添付する必要があります。「分野別の技能水準試験及び日本語能力試験に合格しているか、技能実習2号を良好に修了している」の要件は、「相当程度の知識又は経験を持っていること」の証明になります。また、注意書きにあるように、家族の帯同は認められていません。

    特定技能の種類-特定技能1号-

    出典:「社会情勢の変化に伴う建設業界の外国人材の活用について」セミナー資料より

    技能実習2号良好修了者について

     特定技能の建設分野には3つの業務区分があります。1号の要件にある「技能実習2号良好修了者」となるためには、技能実習で従事していた作業が特定技能の産業、業務区分に対応している必要があります。

    技能実習2号良好修了者について

    出典:「社会情勢の変化に伴う建設業界の外国人材の活用について」セミナー資料より

    特定技能の種類-特定技能2号-

     特定技能2号は、「熟練した技能を要する業務に従事」する者と定められています。

     介護分野、自動車運送業分野等の11分野が対象です。その他の要件を資料に挙げています。分野別の技能水準試験は、1号とは別の試験となります。また、2号には、家族の帯同が認められています。さらに、2号の在留期間は、永住申請時の国内居住要件の期間としてカウントすることができます。

    特定技能の種類-特定技能2号-

    出典:「社会情勢の変化に伴う建設業界の外国人材の活用について」セミナー資料より

    外国人を受入れる機関の基準

     外国人を受入れる機関・会社にも細かな基準があります。一部を抜粋して資料に掲載しています。このうち「非自発的離職者がいないこと」「行方不明者を発生させていないこと」について詳しく見ていきます。

    外国人を受入れる機関の基準

    出典:「社会情勢の変化に伴う建設業界の外国人材の活用について」セミナー資料より

    非自発的離職者とは

     特定技能運用要領に非自発的離職者の規定があるのは、外国人材を導入するために、現在雇用している国内労働者の不適切な解雇を防ぐためです。除外されるケースを資料に挙げています。このうち「有期労働契約」について注意事項に記載していますので、必要があれば読み込んでいただければと思います。

    非自発的離職者とは

    出典:「社会情勢の変化に伴う建設業界の外国人材の活用について」セミナー資料より

    行方不明者とは

     特定技能運用要領には行方不明者の規定もあります。これは技能実習制度で失踪者が多発したことに関連して定められました。

     外国人を雇ったからおしまいではなく、雇用契約を継続するために、注意を払い続ける必要があります。

    行方不明者とは

    出典:「社会情勢の変化に伴う建設業界の外国人材の活用について」セミナー資料より

    出入国又は労働関係法令に関する不正行為について

     「出入国又は労働関係法令に関する不正行為」の例を、特定技能運用要領から一部抜粋して資料に掲載しています。

    出入国又は労働関係法令に関する不正行為について

    出典:「社会情勢の変化に伴う建設業界の外国人材の活用について」セミナー資料より

     特定技能制度は、入管法制だけでなく、労働法制からもしっかりと外国人を管理する制度となっています。ここは注意が必要です。

    受入機関が行わなければならない外国人への支援

     受入機関・企業が行わなければならない外国人への支援は、義務的支援といわれ、必ず行うことが求められます。資料には①~⑩まで記載しています。①と⑦に関しては、外国人が内容を十分に理解できる言語で行うこととされています。つまり、言語をしっかりと扱える人材が社内にいる必要があります。

     支援は自社で行うことが基本ですが、できない場合には、登録支援機関へ委託することが可能です。登録支援機関とは、出入国在留管理庁長官の登録を受けた支援業務を代行する機関のことです。

    受入機関が行わなければならない外国人への支援

    出典:「社会情勢の変化に伴う建設業界の外国人材の活用について」セミナー資料より

    事前ガイダンスについて

     支援のうち「事前ガイダンス」で提供しなければならない事項の一部を資料に挙げています。難しい内容の説明を、外国人が十分に理解できる言語で行うことが求められています。受入機関・企業も、制度を十分に理解して臨む必要があり、できない場合は、登録支援機関に支援業務を委託することになります。

    事前ガイダンスについて

    出典:「社会情勢の変化に伴う建設業界の外国人材の活用について」セミナー資料より

     また、事前ガイダンスは書面でなく、対面で本人であることを確認して、その上で行うように定められています。説明すると3時間程度かかる内容であるため、「原則3時間程度行うこと」とされています。

     事前ガイダンスだけでもボリュームのある内容です。他の支援についても、一つ一つ細かく確認して、しっかりと支援を行わなければなりません。

    随時届出-届出事由が生じてから14日以内に届出-

     受入機関・企業には届出義務が課せられており、随時届出と定期届出に分かれています。

     随時届出が必要となる場面を資料に掲載しています。「特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令の基準不適合に係る届出」の基準不適合については、具体的に細かく定められていますので、確認していただければと思います。

    随時届出-届出事由が生じてから14日以内に届出-

    出典:「社会情勢の変化に伴う建設業界の外国人材の活用について」セミナー資料より

    定期届出-年に1回年度のものを翌5月31日までに提出-

     定期届出は、四半期に一度の提出から、年に一度に変更されました。届出も受入機関・企業の義務となっています。注意書きにあるように、届出が適正に履行されていない場合、特定技能外国人の受入れができなくなります。

    定期届出-年に1回年度のものを翌5月31日までに提出-

    出典:「社会情勢の変化に伴う建設業界の外国人材の活用について」セミナー資料より

     ここまで見てきたとおり、特定技能制度は他の在留資格に比べても、求められる基準や義務が多い制度です。相当程度の知識がなければ適正管理は困難です。十分な制度の理解が難しい場合は、実績のある企業や専門家にアドバイスを求める、または登録支援機関に委託するなどして対応していただくことをお勧めします。

    入国までの手続きと建設分野特有の基準等

     特定技能の在留資格を取得するまでの手続きには2つルートがあり、技能実習から移行するか、技能試験等に合格するかで分かれます。その後、建設分野では、特定技能1号の申請前に、受入計画の審査が必要となります。特定技能1号の取得後、技能評価試験や、班長としての実務経験を経て、申請が認められると、特定技能2号が取得できます。

     他にも、①~⑦で示したように建設業界特有の認定要件があります。②は、最近の報道であったとおり、建設キャリアアップシステムと出入国在留管理庁の在留情報が連携したことによるものだと思います。このように、建設分野は他分野と比べて、手続きが多い印象です。

    入国までの手続きと建設分野特有の基準等

    出典:「社会情勢の変化に伴う建設業界の外国人材の活用について」セミナー資料より

    技能実習制度から育成就労制度へ

    技能実習制度の概要と問題点

     労働関係法令違反や失踪者数の増加などさまざまな問題が生じたため、制度を見直し、育成就労制度が新たに創設されることになりました。

    技能実習制度の概要と問題点

    出典:「社会情勢の変化に伴う建設業界の外国人材の活用について」セミナー資料より

    技能実習制度の受入機関別のタイプ

     技能実習制度には団体監理型と企業単独型があります。

    技能実習制度の受入機関別のタイプ

    出典:「社会情勢の変化に伴う建設業界の外国人材の活用について」セミナー資料より

    技能実習と特定技能制度の比較

     技能実習制度の目的は、「国際貢献のため、開発途上国等の外国人を受入れOJTを通じて技能を移転するもの」でした。しかし、実際は人手不足の補填に使われることがあり、今回の見直しの要因となりました。

    技能実習と特定技能制度の比較

    出典:「社会情勢の変化に伴う建設業界の外国人材の活用について」セミナー資料より

    技能実習制度から育成就労制度へ

     この制度変更により、具体的に何が変わるのかを見ていきます。

     育成就労制度の目的に、「人材確保」が追加されました。ここでの「人材」とは、特定技能人材のことで、特定技能制度に結び付いた設計となっています。

     在留資格や期間は表にあるとおりです。

    技能実習制度から育成就労制度へ

    出典:「社会情勢の変化に伴う建設業界の外国人材の活用について」セミナー資料より

     転籍は、転職と呼んでもいいと思います。技能実習制度ではやむを得ない場合を除き、原則、転籍は認められませんでした。そのため、受入機関・企業が労働関係法令を守れておらず、外国人人材が転職したいと考えてもできませんでした。そこで、育成就労制度では、やむを得ない場合に加え、1~2年の経過で本人の希望により転職可能となりました。

     「日本語能力の要件」や「特定技能1号への移行」の変更も重要です。技能実習制度では、技能実習2号良好修了者であれば、他の要件を満たす限り、特定技能への移行が可能でした。しかし、育成就労制度では、特定技能に移行するためには、試験の合格が必要になります。ここは今回の変更で大きく変わった点です。

    育成就労制度及び特定技能制度のイメージ

     育成就労制度の目的が特定技能人材の確保・育成となったことで、特定技能制度との連続性が高まりました。育成就労から特定技能に移行するためには、試験合格が必要です。ただし、注意書きに記したように、試験に失敗したとしても、即出国ではなくて、一定期間の在留が認められています。

    育成就労制度及び特定技能制度のイメージ

    出典:「社会情勢の変化に伴う建設業界の外国人材の活用について」セミナー資料より

    育成就労制度の関係機関のイメージ

     管理団体が管理支援機関になるなど、関係機関の名称に変更がありました。登場人物はそのままで、名称が変わったというのが私の認識です。

    育成就労制度の関係機関のイメージ

    出典:「社会情勢の変化に伴う建設業界の外国人材の活用について」セミナー資料より

    施行日は2027年(令和9年)4月1日

     2027年(令和9年)4月1日から運用が開始されます。

    施行日は2027年(令和9年)4月1日

    出典:「社会情勢の変化に伴う建設業界の外国人材の活用について」セミナー資料より

    経過措置のイメージ

     育成就労制度には、このような経過措置が設けられています。

    経過措置のイメージ

    出典:「社会情勢の変化に伴う建設業界の外国人材の活用について」セミナー資料より

    建設業で働く外国人の在留資格について

     その他の在留資格についても一部紹介します。

     「技人国」とありますが、正式名称は「技術・人文知識・国際業務」です。ホワイトカラーのイメージで、建築業界での業務内容は、施工管理などの管理業務、設計・図面作成業務等になります。ただし、現場作業を主とした業務に従事することはできません。

     特定技能と技能実習はこれまで見てきたとおりです。ただし、表に記載した業務内容に付帯する関連業務も行うことができます。

    建設業で働く外国人の在留資格について

    出典:「社会情勢の変化に伴う建設業界の外国人材の活用について」セミナー資料より

     「技能」は1号、2号、3号に分けられています。例えばインド料理や中国料理など海外特有の技能を持った調理師を雇う時に、この在留資格の1号を使います。建設業における技能の業務内容は、表にあるとおりで、日本人技能者でも容易でないものとなります。

     「その他」の永住者、特別永住者、日本人配偶者等、永住者の配偶者等、定住者については、就労制限がありません。また留学や家族滞在の資格者は、本来、就労が許されていませんが、資格外活動許可があれば制限時間内でアルバイトをすることが可能です。

     外国人を雇う時には、在留カードを確認して、その在留資格でどのような活動なら可能なのかに気を付けていただければと思います。

    外国人を雇用する際の問題について

    外国人を雇用する際の問題

     外国人を雇用する際の問題として、日本語能力の問題があります。業務を行うにあたり、細かい指示もあろうかと思います。意思疎通をするためには、日常会話以上の能力が求められています。

    外国人を雇用する際の問題

    出典:「社会情勢の変化に伴う建設業界の外国人材の活用について」セミナー資料より

    外国人を雇用する際の問題

     もう一つは、国の課題として、外国人から選ばれない国になっていることが挙げられます。これまで、日本は経済力があり賃金も高く、他国との獲得競争に巻き込まれることはありませんでした。しかし、昨今、他国の平均賃金の上昇や日本の円安もあり、お金を稼ぎたい外国人の選択肢に、日本の競争相手として韓国や台湾が入るようになりました。思うように人材が獲得できないという現状があります。

    外国人を雇用する際の問題

    出典:「社会情勢の変化に伴う建設業界の外国人材の活用について」セミナー資料より

     建設業界にとって外国人材の活用は、産業全体の問題であり、個々の企業の問題でもあります。国が制度化した育成就労制度や特定技能制度などをうまく活用して、今後、新たな日本の建設産業が形成され、より一層、建設業界が発展することを切に願っています。

    景井氏近影
     講師ご紹介 

    RSM汐留パートナーズ行政書士法人
    代表社員
    行政書士 景井 俊丞 氏

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