建設業界の2025年問題とは?人材不足による影響と対策をチェック

公開日:2024.9.17
更新日:2024.9.18

建設業活況の裏で問題となる人手不足

建設業界は、急速な高齢化や若手人材の不足といった深刻な人材難に直面しています。2025年には、団塊世代の大量退職が予測され、労働力不足がさらに深刻化すると考えられています。本記事では、まず建設業界の2025年問題についての基本情報を紹介し、その影響と今後の対策について詳しく解説します。

建設業界の2025年問題とは

2025年問題とは、戦後すぐの第一次ベビーブーム(1947~49年)の時に生まれた、いわゆる“団塊の世代”が後期高齢者(75歳)の年齢に達し、建設業界における従業員の高齢化が進み、2025年に大量の退職者が出ることで、深刻な人手不足がさらに悪化する可能性があるという問題のことをいいます。

国土交通省の資料によると、建設業の就業者は55歳以上が約34%、29歳以下が約11%と高齢化が進んでおり、60歳以上である約80万人について10年の間に引退するであろうと見込まれています。

一方で、若年層の労働力は11%に過ぎず、建設業界では次世代を担う若手人材の確保が大きな課題となっています。2025年には、建設業界で約90万人の働き手が不足すると予測されており、この状況は、建設業界が次世代の労働力を確保する上で大きな課題となっています。

建設業が人手不足に陥る理由

建設業界が特に人手不足に直面している背景には、職場環境に対するネガティブなイメージが依然として根強いことが挙げられます。特に「きつい、汚い、危険(3K)」のイメージが若年層に強く浸透しており、さらに「厳しい・帰れない・給料が安い」という新たな認識も広まっています。

国土交通省の調査によれば、建設業の2016年度における年間総実労働時間は2,056時間と、全産業の平均より336時間長いことが明らかとなりました。加えて休日が少なく、同調査によると、建設工事全体で約65%が4週4休以下で就業している状況です。こうした長時間労働や過酷な職場環境が、若年層を敬遠させる一因となっています。

国土交通省が発表している資料によれば、60歳以上の技能者は全体の4分の1(25.7%)を占めており、10年後にはその大半が引退すると予測されています。建築業界の年齢階級別の就労状況は、2023年の総務省『労働力調査』によると、男性の就労者数に着目すると、50歳以上の高齢者層が204万人であり、男性の全年齢の人数である395万人の約半数を占めています。

一方で、10代〜20代の若手層は47万人と全体の12%程度であり、若手人材の不足が深刻化しています。一般的な定年にあたる60歳以上が68万人と17%ほどを占めており、ベテラン層の大量退職によって人手不足がさらに常態化することが懸念されます。また、女性の就労者数は88万人と少なさが目立ち、男性が圧倒的に多い建設現場の状況も、業界の多様性を欠いている要因の一つです。

これらのデータは、2025年問題の解決に向けて、建設業界が急務として新たな人材確保策や多様な労働環境の整備を求められていることを示しています。

特に、残業時間の削減に関しては、2024年4月1日より「時間外労働の上限規制」が建設業においても適用されるため、速やかな対応が望ましいでしょう。また、ICT建設機械やドローンを活用して、危険な人的作業を減らすことも有効な対策です。さらに、厚生労働省が発表している「毎月勤労統計調査(令和4年分結果)」によると、建設業の1か月平均総実労働時間は163.5時間で、運輸業・郵送業に次いで2番目に長い時間です。長時間労働の常態化がそのまま人材不足の原因となり得ることが示されています。残業時間が長い従業員ほど建設業に魅力を感じないと回答しており、これは特に人手不足の問題を深刻化させる要因となっています。これに対抗するためには、労働環境の改善や賃金の引き上げを通じて、次世代の人材を引き寄せる施策が必要になります。

【参考】
・厚生労働省「毎月勤労統計調査 令和4年分結果確報

建設業では、多くの業務で現在でもアナログ管理が一般的といった企業が少なくありません。これも長時間労働の原因であり、最終的には人手不足にもつながっています。

例えば作業日報を手書きで記入し事務所に提出してから退勤する、全ての日時報告がそろってから確認し管理用のExcelに入力する、という状態では、事務所への移動時間や記入者と管理者が二重で記載するといった時間が発生します。
ITツールであれば入力後すぐに確認し、問題なければ管理用のExcelに入力する手間もありません。細かなアナログ対応の積み重ねも従業員の負担につながるため、残業時間も長くなってしまうといえます。加えて、建設業界のデジタル化が進まない一因として、高齢層は一般的にデジタル技術に疎いケースが多く、ITツールの活用に抵抗感を持つことも少なくありません。

このような状況が続く限り、建設業はアナログ的な経営から脱却できず、その結果としてさらなる人手不足や労働環境の悪化が進行してしまうでしょう。したがって、業界全体でデジタル化の促進を図り、若手層への教育や支援を強化することが急務です。

建設業界の2025年問題への対策と今後の展望

今後の建設業界においては、2025年問題への対策が急務となります。建設業は人手不足が深刻化しており、特に高齢化や若手の不在が顕著です。この問題を解決するためには、適切な工期の設定や生産性向上の施策を講じ、若年層が魅力を感じる業界へと変革する必要があります。それにより人材雇用が促進につながります。
これらの対策を通じて、建設業の持続可能な未来が築かれるでしょう。

建設業の労働力不足を解決するポイント

2025年問題の解決に向け、以下のポイントが重要です。

人手不足の要因のひとつは、若年世代の進路志望先に建設業が挙がりづらいことです。若年世代に興味を持ってもらうために、旧来の建設業に対するイメージを払拭する必要があるでしょう。SNSやWEBサイトを用いて建設現場で活躍する若手人材のイメージを共有したり、建設現場の仮囲いに窓を設けて中の様子を見られるようにして接点をつくったりといった施策が例として挙げられます。また、事業者様によっては、小中学生向けに大型重機への試乗会や見学会を催し、たいへんな好評を得ています。

さらに、建設業界が抱える「3K(きつい、汚い、危険)」のイメージを払拭するためには、実際の業務環境や技能者のキャリア向上の機会を可視化することが効果的です。キャリアパスの明確化や、技術を持った中堅・若手のインタビューや体験談を発信することで、就職先としての魅力を高めることができます。このような地道な取り組みが若年層の心を掴み、建設業の人材確保につながることが期待されます。また、建設業界の安全性や働きやすさを伝える情報発信も重要であり、メディアや地域イベントを通じてこれらの取り組みをアピールすることが必要です。

雇用促進

建設現場では、工事が天候に左右されてしまい、作業を中断することも多々あります。工期に余裕がないと、遅れたぶんの作業を取り戻すため、労働時間が長時間にならざるを得ません。こうしたことを避けるために、適切な工期を設定する必要があります。国土交通省によって2018年3月に発表された「働き方改革加速化プログラム」では、適切な工期設定を推進しており、公共工事では余裕のある工期が設定がされています。

また、建設業界では長時間労働の常態化を解消するため、工期の設定だけでなく、作業の効率化やリスク管理に取り組むことも重要です。例えば、ICT技術を活用した進捗管理や、作業内容に応じた最適な人員配置をすることで、天候やその他の要因による影響を最小限に抑えることが可能です。加えて、これらの取り組みを通じて労働環境の改善を図り、若手人材の定着を促進することも、長期的な人材確保につながります。したがって、適切な工期設定を行うことは、建設業全体の働き方改革に寄与するとともに、持続可能な業界の未来を築くための重要な第一歩となるでしょう。

参考:「2024年、労働時間に上限規制! 建設業の働き方改革を考える

適切な工期設定

建設業のイメージ改善で若手人材を確保し、離職率が改善したとしても、人手不足を完全に解消させるのは難しいでしょう。システムやツールの導入、ICT建機の活用など、少ない人手でも従来通り事業が継続できるよう生産性を向上させることは必要不可欠です。建設現場ではドローンやウェアラブルカメラといった作業効率化ツール、事業所内では建設業向けの基幹システムや勤怠・ワークフロー管理システムなどが挙げられます。

さらに、建設業に特化したシステムを導入することで、省人化が可能となり、人材不足を補うことが期待できます。特に近年注目を集めているのはERP(Enterprise Resource Planning)システムです。ERPとは、会計・人事・生産・物流・販売などの基幹業務を一元的に管理できるシステムのことで、自社に導入することでより効率的な業務管理を目指せます。例えば、クラウド型の建設ERPシステムを導入すれば、各情報のリアルタイム反映による2重入力の防止、システム統合による請求漏れの防止などにも役立てられます。また、利用するシステムを拠点・部門ですべて統一できるため、入力ルールや管理帳票を規定し、属人性の高い業務の削減も見込めるでしょう。このように、建設業に適したシステムを導入することで、人材不足の課題解決に向けてスムーズに体制構築できます。

システム化

日本では「働き方改革」に基づき、長時間労働の是正を目的とした法律改正が行われ、建設業もその対象になっています。特に注目すべき点は、2024年4月1日から建設業に適用される残業時間の上限規制です。これにより、従業員が1年間において原則として残業時間が720時間を超えないように制限されます。また、1か月の残業時間も100時間未満であることが求められ、かつ複数月にわたる平均残業時間は80時間を超えないことが必要です。

残業時間の上限規制が厳しくなる中で、企業が適切に労働時間を管理するためには、勤怠管理システムの導入が非常に効果的です。

勤怠管理システム導入のメリット

以下は、勤怠管理システムを導入する主なメリットです。

勤怠管理システムを導入することで、従業員の出退勤時間をリアルタイムで正確に記録することが可能になります。これにより、労働時間の集計ミスや記録の不備を防ぎ、残業時間が上限を超えないようにするための適切な管理が行えます。

勤怠管理システムは一般的に従業員一人ひとりの残業時間をリアルタイムで管理することにより、あらかじめ設定された上限に達する前に自動で警告を表示する機能があります。
この警告機能により、管理者は迅速に適切な対応を取ることができ従業員の過剰労働を防ぎやすくなります。
たとえば、業務の再配分やスケジュールの調整、シフトの見直しなどを検討することができ、結果的に、労働基準法違反を避けるだけでなく、社員の負担を軽減し、健康を守ることにもつながります。

労働法の改正や規定の変更に応じて、システムが最新のルールに基づいた勤怠管理が容易になります。例えば、システム上で自動的に法定の残業時間や休憩時間を計算し、勤務状況をすぐに可視化することができます。
これにより、企業は複雑な法改正に対処する負担を軽減でき、違反を未然に防ぐことが可能になります。また、社員にも自分の労働時間が適切に管理されていることが伝わり、安心して働くことができます。

紙ベースや手動での勤怠管理は、時間と手間がかかり、ミスが発生する要因になりやすいです。手動での管理ではどうしても発生する人的エラーや記録の不正確さがあります。
システムを導入することで、労働時間の集計や休暇の管理、残業時間の計算が正確に自動で行われ、データの一貫性が保証されるため、給与計算や労働時間管理にかかる業務を大幅に効率化することができます。
結果としてコスト削減と業務の正確性向上が同時に達成できるため組織全体の運営効率が向上します。

従業員が自分の労働時間や残業時間をシステム上で視覚的に把握できるため、過剰な労働を避けるための意識が高まり、時間の使い方を見直すきっかけとなります。勤務時間を記録することで適切なタイミングで休息を取ることが推奨されるため、心身の健康を維持しやすくなります。これにより、企業全体としても長時間労働が減少し、働きやすい職場環境の実現につながります。

勤怠管理システムの導入は、法令遵守だけでなく、企業全体の働き方改革を推進するための強力なツールとなります。
勤怠管理システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

建設・工事業におすすめの勤怠管理システム

2024年4月以降の時間外労働上限規制適用(2024年問題)に対応するために、建設業では従業員の労務管理を徹底する必要があります。従業員の正確な勤務時間の把握は、そのための第一歩です。

クラウドサービスラインナップ、UC+シリーズ第5弾、「UC+キンタイ」は、建設業での使用を前提に開発された、使いやすいクラウド勤怠管理システムです。

工事別・工種別に従業員の勤怠管理を行なえるだけでなく、建設業ERP“PROCES.S”と標準で連携するため、労務費の計算と工事原価管理も自動化できます。スマホでも使えるシンプルなUIで、ITに慣れない従業員でも建設現場から簡単に打刻できるほか、時間外労働の上限規制を超える予兆があれば自動で通知する超勤アラート機能も搭載しています。2024年問題で課題となる長時間労働防止に、万全のソリューションをご提供します。

製品についてのカタログと、建設業の2024年問題への対応をわかりやすくまとめた資料をご用意しました。こちらも併せてご確認いただけますと幸いです!

キンタイ画面ロゴ

製品カタログダウンロード

キンタイ

建設業向けクラウド勤怠管理
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2024年問題対策資料

資料表紙

2024年問題と事業者の対応を
社会保険労務士がわかりやすく解説!

建設業の2025問題におけるQ&A

Q建設業の2030年問題とは?
A2030年問題は、日本の人口の3分の1が65歳以上になることで、生産年齢人口が減少してあらゆる業界で人手不足に陥ってしまうという問題のことです。高齢者の就労者が多い建設業では、特に深刻な状態になる可能性が高いです。
2030年問題に深く関わる2025年問題は、約800万人いるとされる団塊の世代が75歳以上になることで、若年層への社会保障費負担などがさらに増すとされています。

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【参考】
・国土交通省「建設業及び建設工事従事者の現状
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