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「スー女」という言葉をご存じだろうか。「相撲女子」の略称で、大相撲を愛する女性ファンのことを指すそうだ。恥ずかしながら筆者はつい最近までこうした言葉があることを知らなかった。確かに今年の初場所、初めて大相撲観戦に行ったが、女性ファンが多かった気がする。20~30代の女性を中心にスー女が急増しているという。特に今月10日から始まる5月場所は、荒れる春場所を制して大関に昇進した霧島をはじめ、豊昇龍や大の里、安青錦、琴櫻ら人気力士の熱戦が予想されるだけに、さらにスー女が増え、相撲全体の人気も上がるのではないか。
一方、大相撲の土俵はいまだ「女人禁制」が続く。ではその理由とは。過去の日本相撲協会理事長の談話などによると、▽第一に相撲はもともと神事を起源としている▽第二に大相撲の伝統文化を守りたい▽第三に大相撲の土俵は力士らにとっては男が上がる神聖な戦いの場、鍛錬の場である――の三つを挙げている。過去に何度か千秋楽の土俵上で優勝力士に杯などを渡そうとした女性議員らがいたが、いずれも実現しなかった。初場所があった1月下旬、高市早苗首相は「私は伝統を重んじる。これからも相撲の土俵には上がらない」と表明した。角界における女人禁制は、どうやらこの〝伝統〟がキーワードのようだ。
女性技能者の入坑禁止から80年
建設業界でも女人禁制の場所がある。実際はかつて全面禁止だったが、現在は特定の女性は入れる現場。それはトンネル坑内である。法律で女性技能者の坑内作業は認められていない。
わが国では、1920年代前半まで多くの女性が鉱山で坑内労働に従事していたが、その内容は人力による肉体労働がほとんどで厳しい作業環境にあったという。このため、28年以降は法令による保護が施され、47年に制定された労働基準法で女性の坑内労働は「肉体的、生理的に特殊性を持つ女性にとって適当な労働とは言えない」などの理由で全面禁止となった。
その後、85年の同法改正により、「医師・看護師の業務」「取材の業務」「高度の科学的な知識を必要とする自然科学研究の業務」について臨時的入坑が許容され、さらに2006年には技術上の管理業務および指導監督の業務について、就業制限の範囲から除外された。つまり、ゼネコンなどの女性技術者の坑内労働が可能となったのである。しかしながら、女性技能者の坑内労働は法律制定から約80年たった今も禁止されたままだ。
先端技術導入で安全性向上も規制継続
伝統やこれまでの習わしなどを理由とする土俵の女人禁制とは違い、どちらかというと肉体的・生理的な男女差、安全性確保面での不安といったことが、女性技能者の坑内労働禁止の背景にあるようだ。
ただ、トンネル工事の労働環境は、ゼネコンをはじめとする各社が自動化・自律化工法やロボット、AI(人工知能)などを使った技術を導入しており、特に安全性の向上につながっている。もちろん、切り羽付近での作業などには危険を伴う場合もあるが、そこに男女の差はあるまい。ましてやゼネコンの女性技術者はトンネル坑内に入れるのに、なぜ女性技能者は全面禁止なのだろう。
土木学会初の女性会長を務めた佐々木葉早大教授は、トンネル工事の専門団体との意見交換会で「女性の活躍推進と先端技術の導入は密接に結び付いている。技術の進展に対応できていない現行制度の見直しの必要性を主張すべきだ」と強調した。
均等法施行40年、女性活躍めざましく
折しも建設業界は人手不足のまっただ中にあり、トンネル工事を担う専門工事会社も技能者の確保に苦慮しているという。ある企業の幹部からは「切り羽付近での作業だけがわれわれの仕事ではない。インバート工や防水シート工などは女性でも十分対応できる。ぜひ、女性の坑内労働を認めてほしい」と、緩和措置を求める声も聞かれる。
男女雇用機会均等法の施行から今年で40年になる。働く女性を取り巻く環境は大きく変わり、かつては女性の姿を見ることがなかった分野にも進出し、大いに活躍している。例えば外科医や戦闘機パイロット、オーケストラの指揮者、すし職人、マラソン選手、スキージャンプ選手など枚挙にいとまがない。
どれだけの女性がトンネル工事への従事を希望しているかは分からないが、少なくともエビデンスもないままに門戸を閉ざすべきではない。よもや“山の神の嫉妬”を恐れているからではあるまい。










