ゆっくりと、確実に衰退する地方

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    堅調な景況感に隠れる地域建設業の危機感

     わが国の2026年1-3月期の実質GDP成長率は前期比0・5%増で、世界全体の順位としてはドイツに次ぐ第4位だ。世界情勢の不安定化に伴う物価上昇というコストアップ型ではあったものの、賃金は堅調に上昇しており、消費を下支えしている。これによって需要も堅調だ。特に都市部や、半導体などの特定業種では投資も旺盛で、国内全体の経済状況をけん引している。こうした国内全体の景況感の陰に隠れる形になって切迫感がいまひとつ伝わってはこないが、地方部の衰退はまったくとどまっていない。地域の建設業を通して地方部の状況をみるとそれが浮き彫りになってくる。国内公共事業の投資額は、名目投資額が14兆円を超えている一方で、物価高を反映しない実質投資額は11兆円台前半にまで減少した。地域の建設業には非常に強い危機感が広がっている。

    地域建設業で広がる優勝劣敗

     ところが、リーマン・ショック後の2008年ごろのような地方の強い切迫感が東京の中央政府までは伝わってこないのも事実だ。この温度感の大きな要因は公共事業の単価が上がっていることにあるだろう。公共事業を1件受注すれば適正な利益をほぼ確保できる。だから、受注できた企業に強い切迫感はない。一方で、受注できなかった企業は一気に経営危機にひんする。調査会社の中小建設企業の倒産件数が4年連続で増加しているのは、こうした環境も背景にあるとみられる。

     地域建設業で起きているのは、受注の有無による“優勝劣敗”だ。「平成の大合併」で広大な面積になった市ほど格差は顕著で、市中心部ほど公共事業の発注量は多く、受注できた企業はどんどん規模を拡大している。半面、郊外になればなるほど公共事業の発注は減り、地域の建設業がどんどん衰退している。

    〝廃業予備軍〟は想像しているよりはるかに多い

     もっと強く懸念しているのは、こうした衰退企業に広がる地域建設業の経営者のモチベーションの低下だ。優勝劣敗が強まり、受注競争は激しくなる。事業を継続するためには、若い技術者を雇い入れなければならないが、地方の中小建設会社が単に学生を募集しても応募はない。給与を上げる余裕も、採用イベントに参加して活発に採用活動を展開する意欲もない。ましてや、週休2日で、残業も上限内でなければ、学生には振り向いてももらえない。こうした状況下で、事業を継承しながら持続的に地域を守り続けるモチベーションを失い、「もう自分の世代で会社はたたもう」と内心で考えている〝廃業予備軍〟は、中央政府が思っている以上に膨大な数に上る。若手を雇い、就労環境を整え、生産性を向上しなくても、座したままで工事が地方自治から降ってくる環境ならば、こうした企業経営者も会社を続けようと思うかもしれない。だが、言わずもがなだが、県や市の公共事業は、建設会社を存続させるためのものではない。

    地域内の公共事業量は発展と衰退の選別

     ただ、地域の建設会社がなければ道路や河川の維持・更新はできず、ひとたび災害が起きると復旧はままならない。2026年熊本地震でも、発災直後から、インフラの被災状況を確認して回ったのは、地域の建設会社だ。彼らがいなければ、「熊本市内に大きな被災がなかった」ことを確認することもままならなかっただろう。

     ある地域で県・市が一部地域の公共事業の発注を減らしたとすれば、それは何を表しているのか。それは、その地域の道路や河川が荒廃して地域が衰退することを自治体が許容し、維持・発展を諦めたということになり、自治体自身が地域の発展と衰退を選別したことを意味する。自治体が地域の存続・発展を求めるならば、その地域のインフラを維持管理・更新しなければならないし、担い手は残さなければならない。

     もちろん、公共事業ばかりをアテにせず、自ら努力して処遇改善、人材確保、生産性向上に動き出している企業もたくさんいる。「東北アライアンス建設」のように、地域の建設会社が連携してスケールメリットを確保しようという動きもある。同社をモデルとして、自分の地域でも同様の取り組みをしようと模索する声を聞いたのは1社、2社ではない。だからこそ、こうした企業の努力に応え、地域の存続・発展という意思を自治体が示す必要があるのではないか。

    本気で地域と国土の在り方を考える時

     自治体と、そこで存続して地域を守り続けようというモチベーションのある県・市内のさまざまな産業の企業が膝をつき合わせ、地域の発展の在り方を考え、行動に移さなければならない時期にきている。そのための解決の糸口が、監理技術者の専任要件の大幅緩和や技能者の派遣解禁などといった特例や、最先端技術の活用促進などが挙がるのであれば、自治体が国に働きかけられるだろう。企業と自治体がともにお金を出し合って、投資需要を生み出すことも考えられる。そうした前向きな取り組みが、モチベーションを失っていた経営者を刺激することになるかもしれない。いずれにしても、地域の在り方、国土の在り方を自治体と地域の企業が本気で考えなければならない瀬戸際にまで追い込まれていることは間違いない。

    佐藤 氏
    執筆者
    株式会社日刊建設通信新聞社
    編集局長
    竹本 啓吾 氏

    2002年3月 英知大学文学部卒業後、同年4月株式会社日刊建設通信新聞社入社。高速道路会社、民間鉄道会社、国土交通省、自民党、業界団体、ゼネコンの担当や北関東支局長、グループキャップなどを経て2026年6月から現職。奈良県出身。
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