建設業のための勤怠管理システム選定3つのポイント

公開日:2024.5.08
更新日:2024.10.04

建設業特有業務に対応する勤怠管理方法とは

特有の業務習慣により、建設業ではこれまで一元的な勤怠管理を行なうことが難しい現状がありました。ただ、2024年問題をはじめとするさまざまな法令改正を受け、正確な勤怠管理が急務となっています。本稿では、建設業の勤怠管理の実態から勤怠管理システムの導入メリットと選定のポイントまで、わかりやすく解説します。

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なぜ勤怠管理が重要か ~各種法改正と2024年問題~

法令順守の観点から従業員の勤怠管理が重要なのは全業種において共通ですが、建設業においては特に重要な業務に位置づけられます。というのも、建設業では他業種に比べて就業時間が長いうえに、2024年問題への対応が急務となっているからです。

労働安全衛生規則(安衛則)第52条の7の3の第1項では、「タイムカードやPCなどの使用時間の記録など、客観的な方法」による従業員の労働時間の把握が求められています。2017年(平成29年)に厚生労働省が策定した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」のなかですでに同様の求めが記載されていましたが、2019年(令和1年)4月以降、法令に格上げされた恰好です。

タイムカード

2024年(令和6年)現在、労働時間の未把握に対して罰則規定は設けられていません。ただ、是正勧告の対象となるため、全業種において正確な勤怠管理は不可欠といえます。

労働時間とは?
使用者の指揮命令下に置かれている時間を指します。着替えなど勤務に必要な準備や清掃など業務終了後の後始末を事業場内において行なう時間のほか、待機時間や業務上義務づけられている研修・訓練の受講・使用者の指示により行なう業務に必要な学習などの時間も含まれます。

働き方改革が進んでいるとはいえ、他業種と比較すると建設業は依然として労働時間が長い傾向にあります。2022年(令和4年)の調査では、建設業における年間労働時間は1,986時間、調査産業計に比べて約270時間の長時間労働となっています()。

業種別年間休日日数の調査でも、建設業は113日と少なく、建設工事現場で技術者の約4割が4週4休以下で就業していることがわかります。理想は週休2日が確保される4週8閉所の定着ですが、実現まではまだ時間がかかるでしょう。


屋外業務がつきものである建設業では、炎天下や厳寒のなかでの作業を避けられません。従業員の安全のためにも、他業種以上に勤怠管理が重要になります。

さらに、建設業で正確な勤怠管理が急務となる背景として、2024年問題が挙げられます。

労働基準法では、労働時間は原則1週40時間、1日8時間以内と定められています。これを超える時間外労働の上限について、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律により改正された労働基準法で、以下の通り定められました(大企業では2019年4月から/中小企業では2020年4月から適用)。

改正労基法による労働時間上限規制
原則として月45時間、年360時間以内
臨時的な特別の事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間以内(休日労働含む)、限度時間を超えて時間外労働を延長できるのは年6カ月が限度

この上限規制について、建設業には5年の猶予が設けられてきました。工期の影響を受けやすく、災害時の復旧作業など緊急を要する業務を担うため、長時間労働を避けがたいという事情を勘案してのことです。

ただ、ニュースでたびたび報じられるとおり、2024年4月以降、建設業でも時間外労働の上限規制が適用されています。改正労基法で追加された罰則は、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金です。

人件費や資材が高騰する最中にあって、従業員の労務管理にも気を払わなければならない状況は、多くの建設業事業者にとって大きな困難といえるでしょう。改正労基法に端を発する一連の問題は、建設業の2024年問題と総称されています。

建設業働き方改革加速化プログラムとは?

日本全体の生産年齢人口が減少するなか、建設業の担い手については概ね10年後に団塊世代の大量離職が見込まれており、持続可能性が危ぶまれる状況です。建設業界は給与面においては全体で上昇傾向にありますが、生産労働者に限れば製造業と比べて低水準にあります。将来の担い手を確保し、災害対応やインフラ整備・メンテナンス等の責務を今後も果たしていくためにも、働き方改革を一段と強化していく必要があるでしょう。

「働き方改革実行計画」を踏まえ、政府はこれまで関係省庁連絡会議の設置や「適正な工期設定等のためのガイドライン」の策定など、建設業の働き方改革に向けた取組みを進めています。また、建設業団体においても、働き方改革4点セット(週休2日実現行動計画等)の策定など、業界を挙げた取組みが進展しています。

この流れを加速させるため、国土交通省は「建設業働き方改革加速化プログラム」を策定しました。今後、長時間労働の是正、給与・社会保険、生産性向上の3つの分野で新たな施策について、関係者が認識を共有し、密接な連携と対話のもとで施策を展開します。

建設業における勤怠管理の課題

各種法改正を受けて、これまで以上に正確な勤怠管理が求められていることはおわかりいただけたことかと思います。ただ、建設業における勤怠管理は容易ではありません。業態特有の課題がいくつもあるためです。

オフィスでのデスクワークと違い、現場仕事が主になる建設業では直行直帰の頻度が高く、シフトも一様ではありません。現場ごとの勤怠管理が必要になるうえ、複数現場を掛け持ちする技能者がいれば、労働時間の正確な記録や管理はより困難になります。それでなくとも勤務日数や勤務形態がそれぞれ異なる大勢の技能者・技術者の勤務状況を正確に把握することは容易でありません。

また、建設現場にタイムレコーダーを設置できないケースもままあります。そうした場合、従業員の日報をもとに勤怠管理を行なう方法も考えられますが、自己申告による勤怠管理は本人の記載漏れや事務担当者の転記ミスを避けられないほか、安衛則で定められた「客観的な方法による記録」という要件を満たしていないと見做される可能性があります。

デジタル化について課題が残る建設業では、前述したようにタイムカードや日報による勤怠管理を行なっている事業所が多いのが実情ですが、紙での勤怠管理にはいくつもの問題があります。

1.リアルタイムでの勤怠管理ができない
2.集計作業が煩雑
3.保存・管理に関するコストが高い

紙での勤怠管理に伴う問題のひとつめが、リアルタイムでの勤怠管理が難しいということです。タイムカードや日報による勤怠管理では集計業務が締め日以降になるため、月途中で労働時間が超過したとしても状況の把握ができません。

タイムカードの回収も煩雑になるほか、打刻・印字された情報をExcel(エクセル)などに転記する作業は如何にも効率が悪く、ミスの原因になり得ます。

さらに、労働者名簿や賃金台帳と並んで法定三帳簿のひとつに数えられる出勤簿は、労基法第109条に従い5年間の保存義務があります(2020年4月に3年から5年に延長)。紙での保存・管理は、スペースや業務効率の面でコストが高いといわざるを得ません。

出勤簿の記載事項
氏名
出勤日
出勤日ごとの始業・終業時間、休憩時間、残業時間など

人手不足が深刻である一方、工期の縛りが厳しい建設業では、なによりも適切なシフト管理・人員配置が重要になります。とはいえ、建設現場を複数抱え、大勢の技能者が出入りするなかで、適切な人員配置を徹底することは容易でありません。技能者の稼働状況をリアルタイムで把握しながら適切な人員配置に対応できる体制づくりのためには、勤怠管理のシステム化が不可欠になるでしょう。

建設業が勤怠管理システムを導入するメリット

新型コロナウイルス禍以降、リモートワークの普及に伴い複雑化する従業員の勤怠管理については、全業種で大きな課題となっています。国際的にみても勤怠管理システム/アプリの導入は大きな潮流となっており、建設業も例外ではありません。

システム導入のメリットは、以下のとおりです。

当然のことながら、勤怠管理システムを導入することで労働時間の集計ミスやタイムカードの回収漏れを防ぐことができます。時間外労働や深夜労働/休日労働についてはそれぞれ割増賃金を支払う必要がありますが、そうした計算もシステムが肩代わりしてくれるため、事務従事者の負担を軽減できます。会計システムや原価管理システムと連携させれば賃金計算や原価計算も自動化できるなど、大幅な業務効率改善効果が見込めます。

また、従業員の労働時間をリアルタイムで管理できることも大きなメリットです。労働時間の超過があれば管理部門ですみやかに気づいて対策を講じることができるため、建設現場の労働環境改善につなげられます。

直行直帰の頻度が高い建設業では、タイムカードによる勤怠管理が難しい場面も少なくありません。クラウド型の勤怠管理システムは、PCだけでなくスマートフォンやタブレットからでも出退勤の打刻ができるものがほとんどであり、建設業では特に業務改善を期待できます。打刻のためだけに事業所に出勤するような非効率もなくなるでしょう。

クラウド型勤怠管理システムの大きなメリットは、時流に合わせてアップデートされていくことです。前述のとおり、働き方改革関連の法令は近年たびたび改正されていますが、勤怠管理システムはアップデートにより順次法令対応されていくため、事務担当者の負担を軽減できます。

勤怠管理システムを選ぶ3つのポイント

それでは、実際に勤怠管理システムを選定するためにチェックすべきポイントを3つ、ご紹介しましょう。

管理部門サイドの業務改善を図れるといっても、現場で使いづらく不満の声が上がるようでは本末転倒です。従業員ごとにITリテラシーにばらつきがあるのは当然であり、だれが使っても簡単で使いやすいことは最優先でチェックすべきポイントといえます。操作性とユーザビリティの高い、シンプルな機能のものを選ぶのが肝要です。

出退勤時刻を記録する以外にも、残業や有給休暇、出張、在宅勤務など、勤怠管理で必要となるきめ細かな申請・承認機能のあるものであれば、バックオフィス業務がさらに便利になります。

また、タイムカードであってもシステムであっても、打刻漏れや打刻ミスは当然起こり得ます。従業員側で訂正できる機能もあるに越したことはありません。

勤怠管理システムは需要の高さから種類が豊富であり、多くのベンダーから提供されています。一方で、建設業の業態にフィットするものは多くないのが実情です。一般的な勤怠管理システムでは、工事現場の従業員に不便を強いることになるうえ、管理の面でもさほど便益を得られないでしょう。

直行直帰の多い建設業においては、スマホやタブレットからの打刻や勤怠申請に対応していることは必須になります。工事別・工種別の労務管理のほか、労賃管理や工事原価管理まで自動化できれば、過不足なしといえるでしょう。

建設・工事業におすすめの勤怠管理システム

2024年4月以降の時間外労働上限規制適用(2024年問題)に対応するために、建設業では従業員の労務管理を徹底する必要があります。従業員の正確な勤務時間の把握は、そのための第一歩です。

クラウドサービスラインナップ、UC+シリーズ第5弾、「UC+キンタイ」は、建設業での使用を前提に開発された、使いやすいクラウド勤怠管理システムです。

工事別・工種別に従業員の勤怠管理を行なえるだけでなく、建設業ERP“PROCES.S”と標準で連携するため、労務費の計算と工事原価管理も自動化できます。スマホでも使えるシンプルなUIで、ITに慣れない従業員でも建設現場から簡単に打刻できるほか、時間外労働の上限規制を超える予兆があれば自動で通知する超勤アラート機能も搭載しています。2024年問題で課題となる長時間労働防止に、万全のソリューションをご提供します。

製品についてのカタログと、建設業の2024年問題への対応をわかりやすくまとめた資料をご用意しました。こちらも併せてご確認いただけますと幸いです!

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建設業向けクラウド勤怠管理
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2024年問題対策資料

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2024年問題と事業者の対応を
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よくある質問

Q建設業の2024年問題対策(働き方改革)について、どんな事例がありますか?
A厚生労働省の「働き方改革特設サイト」には、中小企業の取り組み事例が数多く報告されていますが、建設業ではITの活用で人材不足解消と職場環境改善を実現した事例が報告されています。具体的には、Excel(エクセル)で作成していた見積、請求業務について、補助金を活用して見積・発注・原価管理ソフトを導入。SNSを活用して鳶の魅力を発信。スマホで打刻できる勤怠管理アプリを導入――などです。
Qなるべく安価で勤怠管理を行なう方法はありませんか?
AExcel(エクセル)でフォーマットを作成して勤怠管理を行なう方法もあります。ただ、関数の計算式を動かしてしまったりするミスや勤務実績の改竄などのリスクがあり、万全とはいえません。

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