建設業の週休2日制、現場への影響は? ~2024年の変化と成功事例をチェック~

公開日:2024.6.24
更新日:2024.6.24

建設業界で週休2日は定着するのか?

現在、国交省の主導により、建設業でも週休2日(4週8休)の普及をめざしてさまざまな取組みが実施されています。労働時間が長く休日が少ない、そのため若手入職者が減少する――そうした負のスパイラルを脱するには不可欠の施策ですが、事業者側の負担も大きく、実現は簡単ではありません。本稿では、建設業の労働問題にフォーカスして、政府施策の最新動向から週休2日導入に成功した事例まで、わかりやすく解説します!

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建設業の週休2日制の義務化は2024年から?

結論からいって、2024年現在、建設業で週休2日制を義務化する法律や罰則はありません

ただ、全業種比較で休日数が少ない建設業にとって、週休2日制の定着は官民挙げての大きな課題です(図1)。国土交通省(以下、国交省)も、令和6年度は休日の“量の確保”から“質の確保”、通期の週休2日から月単位の週休2日へ向けた取組みを推進しています。

業種別労働時間比較

国交省が発注する営繕工事では、働き方改革の観点から、週休2日の取組み状況に応じて労務単価を補正する「週休2日促進工事」が実施されてきました。ただ、これまでは、最低限の目標である通期の週休2日を前提としたものでした。

週休2日促進工事とは?
週休2日の達成度合いに応じたインセンティブとして労務単価に補正係数が乗じられる。現場閉所の達成状況を確認し、月単位の週休2日、または通期の週休2日に満たない場合は補正分が減額される。
月単位の週休2日 通期の週休2日
労務費 1.04 1.02
機械経費(賃料) 1.02 1.02

ただ、ご存知のように2024年(令和6年)4月以降、建設業でも改正労働基準法に準じた時間外労働の罰則付き上限規制が適用されています。

このいわゆる2024年問題を踏まえ、令和6年度より、国交省の取組みも通期の週休2日から「月単位の週休2日」実現に向けたものへと転換されています。

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通期の週休2日と月単位の週休2日の違いは?
通期の週休2日 :対象期間において現場閉所率が28.5%(8日/28 日)以上になることが認められる状態
月単位の週休2日:対象期間内のすべての月において現場閉所率が28.5%(8日/28 日)以上になることが認められる状態
※降雨、降雪などによる予定外の現場閉所日についても現場閉所日数に含める

建設業の週休2日、課題と政府の取組みは?

2020年(令和2年)の統計では、建設工事全体で4週8休を実現できている建設業労働者は2割程度とされています(図2)。また、約4割が4週4休以下で就業しており、建設業の労働環境改善はいまだ途半ばといえるでしょう。

全業種比較で休日が少なく、残業時間も多いこと。これらは建設業における積年の課題であり、週休2日の導入・普及についても「対応は困難」「現実的に無理」などの現場の声がしばしば聞かれます。

建設業における休日の状況

本項では、建設業で週休2日定着を実現するための課題と政府の対応策について整理してみましょう。

まず、建設業でくり返し俎上に上がる深刻な問題、人手不足と技能者の高齢化があります(図3)。

建設業就業者の年齢別動向をみると、55歳以上が35.5%、29歳以下が12.0%と、明確に高齢化が進行していることがわかります。

この課題に関しては、65歳以上人口が全人口比で約30%に達する2025年問題などの構造的な問題もあるため、解決は容易ではありません。

建設業の高齢化問題
建設DX

こうした状況下で建設業に週休2日を定着させる施策として、AIやロボットの活用を含むDXデジタルトランスフォーメーションによる生産性向上には特に期待が集まっています。

国交省では、ICTを活用することで建設生産システム全体の生産性向上を図る取組み、i-Constructionを推進しています。

DL資料

施工主の意向が強い影響力を持つ建設業では、工期の厳守が大きなミッションのひとつになります。さらに自然災害や悪天候、資材不足や施工不良などさまざまな不測の事態によるスケジュールの混乱も避けがたい問題です。

週休2日制が導入されれば、工期の調整はより困難になるでしょう。

適正工期に向けた取組み

国交省では、週休2日の確保などによる不稼働日を踏まえた適切な工期設定に向けて、直轄工事においては以下のような取組みを推進しています。

❶準備・後片づけ期間の見直し

工事規模や地域の状況に応じ、準備・後片づけに最低限必要な日数を設定

❷余裕期間制度の活用

工期の30%を超えず、かつ4カ月を超えない範囲で余裕期間を設定する制度

❸工程表作成支援システムの導入

工期設定に際して、歩掛かりごとの標準的な作業日数・手順を自動算出する工程表作成支援システムを導入

❹受発注者間での工事工程の共有

施工当初段階に工事工程のクリティカルパスと未解決課題の対応者・対応時期について共有することを受発注者間でルール化

単品受注産業としての特性に起因し、建設業では工事が一時期に重なるなど繫閑が激しいという事情があります。そのため、技能労働者(職人)を正規雇用するよりも、プロジェクトに応じて専門性の高い一人親方と請負契約を結ぶほうが効率的な側面があり、そうした背景から、日給制で働く技能労働者は少なくありません。

そうした労働者にとっては、週休2日制が敷かれることで給料が減少する、収入が安定しなくなるなど別の問題が生じます。例えば、月収30万円の労働者の休日が週休1日から2日になれば、月収は25万円まで下がるということです。労働者の生計への影響は、軽く扱えない問題でしょう。

在籍型出向

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(労働者派遣法)第4条では、建設業務への労働者派遣が禁止されています。労働者保護の観点からの措置ですが、一方でそれが建設技能者の安定雇用を難しくしている側面も否定できません。

その対策として試みられているのが、在籍型出向です。在籍型出向では、労働者は出向元と出向先どちらとも雇用契約を結び、そのうえで出向先の現場作業に従事するという流れをとります。

建設労働者の雇用機会と賃金を確保するための施策として注目されています。

建設業は労働集約型の産業であるため、利益率を高めることが難しい業種です。週休2日制に伴う工期長期化は、当然にして労務費や重機のレンタル代などの工事原価増を招きます。

また、受注から入金までのスパンが伸びるため、資金繰りの面でも不利になるでしょう。事業者側にとっては、非常に頭の痛い問題といえます。

補助金・助成金

中小企業に向けて、各種の補助金・助成金が用意されています。融資と違い返還の必要がないため、積極的に活用したいところです。

IT導入補助金

中小企業・小規模事業者のITツール導入による業務効率化を支援。補助額も最大450万円と高額!(参考記事:建設業向け! オススメ補助金/助成金6選

働き方改革推進支援助成金

労働時間縮減・有給休暇促進に向けた環境整備に取組む中小企業事業主に対し実費の一部を助成

業務改善助成金

生産性向上のための設備投資(機械設備)を行ない、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、費用の一部を助成

キャリアアップ助成金

非正規雇用労働者の正社員化、処遇改善の取組みを実施した事業主に対して助成

事例から学ぶ! 建設業が週休2日を導入するメリット

前項までで解説したように、建設業における週休2日制の実施は、けっして簡単ではありません。ただ、現在、多くの建設工事現場で実現に向けた取組みが進んでおり、週休2日制導入のメリットについても続々と報告されています。代表的なものを3つ、ご紹介しましょう。

事例01 発電所トンネル工事
工期 約4年3カ月
施工体制 元請…現場技術者専任8名、その他2名
下請…一次下請10社、二次下請11社
主な取組み 休日勤務前の代休取得日設定
年間の休暇取得予定表を作成
現場作業従事者は昼夜勤制、土曜は夜勤なし
休日勤務従事者は代休取得日を事前設定
隔週2日完全閉所
GWやお盆のほか隔週土日曜を完全閉所にした工程計画で、まずは4週6閉所を確保
各個人の代休取得を含めて4週8休を継続
休日取得を前提として工程を調整

本事例では取組みのメリットとして、夏期の熱中症罹患ゼロ件であったことや着工以来、無事故無災害を継続できたことなどが挙げられています。集中力を切らせることが即・事故につながる建設業では、週休2日制導入によるリフレッシュが労働安全衛生の面で大きな効果をもたらすことがわかります。

事例02 送電施設改良工事
工期 約2年1カ月
施工体制 一次下請15社
主な取組み ICT活用
ウェアラブルカメラやドローン活用により現場状況の認識共有化
連続休日の取得率向上
月に1~2回の一斉連休を採用
交代勤務、代休取得を促進

本事例では取組みのメリットとして、心身のリフレッシュを図ることによる労働意欲向上のほか、若年層から「計画的に取得が可能なため連休を有効活用できる」との声も上がっており、離職率低減に一定の効果ありと評価されています。

事例03 発電所系統連系接続工事
工期 約1年7カ月
施工体制 一次下請
主な取組み 工程会議を通じた調整
毎週、現場技術者と作業班長が参加する工程会議を実施
同時に2カ月先までの工程を調整

本事例では、従業員から家族サービスができるようになったなどの喜びの声が上がっているほか、休日を増やすように意識することで、副次的な効果として作業効率化につながり、従業員の意識に変化が生まれたことが報告されています。

建設業における週休2日制は、企業にとって負担であるだけでなく、さまざまなメリットもあることがおわかりいただけるでしょう。

建設業の週休2日推進のカギは原価管理と勤怠管理

先にも述べたとおり、労働集約型の産業である建設業は利益率が低くなりがちです。週休2日の導入によって工期が延びれば、そのぶん労務費や重機のレンタル費用がかさみます。そうしたなかで適正利益を上げることは、これまで以上に難しくなることは確実です。

精緻な工事原価管理を実現するには、建設業に特化した原価管理機能を備えたERPシステムの利用がおすすめです。建設業ERPシステム “PROCES.S” は、これまで350社以上の導入実績を有し、建設業会計に対応した工事原価管理や労賃管理が可能です。経営情報を一元化することで、単純な業務効率化に留まらず、タイムリーかつ適切な経営判断をサポートします。

また、建設業向け勤怠管理システムUC+キンタイともシームレスに連携し、従業員の勤怠情報をもとに工事現場ごとの勤務状況を把握・超過労働を防ぐ体制づくりを実現しながら、煩雑な賃金計算を自動化します。昨今取り沙汰される建設業の労働問題へのソリューションとしては、最適なシステム構成といえるでしょう。

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よくある質問

Q建設業の週休2日制はいつから義務化されますか?
A2024年現在、建設業で週休2日制を義務化する法律や罰則はありません。ただ、2024年問題を受けて、国交省主導で普及と定着に向けて強く推進されています。週休2日の達成度合いに応じて労務単価に補正係数が乗じられる週休2日推進工事などの制度があり、令和6年度は特に“質の確保”に向け、通期の週休2日から月単位の週休2日への拡大が宣言されています。。
Q週休2日制・完全週休2日制・4週8休。それぞれなにが違いますか?
A週休2日制とは、1カ月の間に2日休みの週が少なくとも一度あり、それ以外の週は1日以上休みがあることを示します。完全週休2日制は年間を通じて毎週必ず2日は休みがある状態、4週8休は医療や介護現場、建設業などのエッセンシャルワークでよく用いられる変則労働時間制で、労働時間の区切りを4週間としてそのなかで8日の休日を確保していく制度です。業務の繁閑に応じて週の所定労働日数が変動するため、土日など決まった曜日に休日をとれるとは限らない反面、事前申請次第で連続休暇にできるなどのメリットもあります。
Q2024年問題とはなんですか?
A2024年4月から建設業でも時間外労働の上限規制(原則月45時間以内/年360時間以内)が適用されています。それを受けて、コスト増や人手不足の深刻化、人員管理の問題など、建設業ではさまざまな課題・混乱への対応が迫られています。こうした諸問題を指して、2024年問題と総称されています。
Q週休2日制が導入されているのは公共工事だけですか? 民間工事での実施状況はどうでしょうか?
A国交省の直轄工事における週休2日工事の実施状況は、平成28年度では20%でしたが令和4年度では99.6%まで大きく増加しています。公共工事で週休2日を普及させることで、民間工事へも裾野が拡がることが期待されているものの、2020年の建設工事全体での統計では週休2日を実現できている建設業労働者は2割に留まります。また、約4割が4週4休以下で就業している状況とされており、課題は尽きません。

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