建設業こそ電子契約を導入すべき3つの理由【2023最新】

公開日:2023.9.12
更新日:2023.10.12

建設業の電子契約導入事情は?

新型コロナ禍以降、ハンコ文化を見直す一連の法改正を受け、電子契約が急速に普及しています。印紙税が高額になりがちな建設業は、電子契約導入によるコスト削減効果が最も大きな業種のひとつ。ただ、建設業法ほかさまざまな法令との兼ね合いがあるため、導入するにも注意が必要です。本稿では、電子契約の適法性、導入メリットから選定のポイントまで、わかりやすく解説します!

電子契約とは?

民法522条の定義では、契約とは申込みに対して承諾によって成立する当事者間の合意のことをいいます。従来、書面によって為されていた契約締結までのプロセスについて、インターネットを介してデジタルで完結させるのが電子契約です。

わが国では長らく、契約書など書面をやりとりする際の本人認証や意思表示に、署名捺印が推奨されてきました。こうしたいわゆるハンコ文化は、書面の信用性を担保するうえで非常に有用でしたが、デジタル化が進んだ現代においては、非効率な業務フローの典型と見做されています。

電子契約

特に、リモートワークが急速に普及した新型コロナウイルス禍以降では、決裁者不在のため契約締結ができないケース、押印のためだけに出社しなければならないケースなど、ハンコ文化による弊害が目立つようになりました。

これを受けて、政府も文書への押印慣行について見直す姿勢を示し、令和3年(2021年)にはデジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律が公布されています。対象となる多くの業界での各種手続について、電子化を認めるという画期的な内容です。

結果、場所や時間の制約を最小限にしうる電子契約は、ハンコの代替ツールとして急速に浸透しています。一般財団法人 日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)の2022年の調査では、電子契約の利用企業は2021年の67.2%から69.7%へ拡大、検討中企業も含めれば84.3%に達するとのこと。契約プロセスの電子化は、不可逆的な流れであることがわかります。

建設業法における電子契約の扱いは?

建設業界は、工事目的ごとに複数の事業者が協働するため、他業種に比して請負契約を取り交わす機会が多いという特徴があります。契約書や注文書/注文請書を交わす機会が多いため、契約プロセスの電子化による生産性向上の余地が特に大きい業種といえるでしょう。

ただ、前回の記事でお伝えしたように、建設業における工事請負契約締結については、建設業法によって厳密に規定されています。そのため、電子契約の導入にも細心の注意が必要です(参考記事:建設業法違反をしないために ~インボイス制度編~)。

本項では、建設業法における電子契約の扱いについておさらいしてみましょう。

昭和24年(1949年)の施行以降、建設業の工事請負契約については、建設業法第19条のなかで書面への署名または記名押印が必要である旨が明確に定められてきました。

法律でいう書面とは、紙その他の有体物と定義されています(民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律第2条の3)。

ただ、ビジネスの急速なデジタル化に対応する形で、平成13年(2001年)の改正建設業法において、新たに第3項が追加されました。

建設業法第19条第3項

建設工事の請負契約の当事者は、前二項の規定による措置に代えて、政令で定めるところにより、当該契約の相手方の承諾を得て、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて、当該各項の規定による措置に準ずるものとして国土交通省令で定めるものを講ずることができる。

要約すれば、相手方の承認があれば、電子契約の法的効力を認め、従来の書面への署名/記名押印に準じるものとして扱う、ということです。

電子契約の法的効力が認められたとはいえ、建設業法第19条第3項でいうその他の情報通信の技術が指す具体的な範囲や技術的基準に関しては不明瞭な点も多く、関係者間ではさまざまな議論が為されてきました。

これに関しては、2018年以降、グレーゾーン解消制度において経済産業省と国土交通省がクラウド電子契約サービスについて適法と正式に認める声明を発表し、建設業における電子契約普及の流れを決定づけています。

建設業法施行規則第13条の4第2項では、建設業の工事請負契約において、電子契約がクリアすべき3つの要件を定めています。

見読性

まず、電子ファイルを紙と同じように閲覧/出力できる環境が求められています。ただ、電子契約を行なっている時点でディスプレイが備わっていることは明らかであるため、この要件に関しては特に問題にならないでしょう。

原本性

電子契約は非常に便利ですが、インターネット上でやりとりする以上、なりすましや改竄などのリスクは常につきまといます。安全性が担保されているかどうかは、きわめて重要な問題です。

国土交通省の技術的基準に係るガイドラインのなかでは、電子契約書の改変防止措置として公開鍵暗号方式による電子署名が求められています。

公開鍵暗号技術とは?

公開鍵と秘密鍵、二つの鍵(数列)を用いた暗号技術。これらの鍵はペアとなっており、二つの鍵が揃わなければ復号できない。

受信者側が二つの鍵を生成、公開鍵を送信者に送る
送信者は公開鍵で情報を暗号化して送信
受信者側は秘密鍵で情報を復号する

第三者に公開鍵をみられたとしても秘密鍵は守られるため、安全性を担保できる。ひとつの鍵で暗号化・復号を行う共通鍵暗号方式に対して秘匿性と利便性で大きく優る。

暗号化イメージ

本人性

契約の相手方が本人であると確認できる措置を講じていることも、要件のひとつです。これについては、認証機関からの電子証明書の発行を受ける必要はなく、より簡易な立会人型電子契約で十分である旨が国土交通省から回答されています。

立会人型電子契約とは?

事業者Aと事業者Bが電子契約を交わすとき、電子契約事業者Cが第三者として電子署名する形式。⽴会⼈が契約締結現場を目撃したことを証明するのと同等の法的効力がある。対して、第三者を介在させない当事者署名型では、認証局に本人確認をしてもらったうえで電子証明書を発行してもらわなければならず、手間と費用の負担が大きい。立会人型は、そうしたコストを必要とせず、低コストと安全性を両立した方式といえる。事業者署名型とも。

建設業こそ電子契約を導入すべき3つの理由とは?

電子契約には、郵送や印刷にかかるコスト削減など数多くのメリットがありますが、建設業では特に恩恵が大きくなります。本項では、建設業が電子契約を導入するメリットについて、特に3つに絞って整理してみましょう。

まず、大きなメリットのひとつとして印紙税の削減が挙げられます。印紙税とは、経済的利益があると推定される文書(契約書や注文請書、手形など)にかかる流通税の一種です。ご存知のように、土地や建物など不動産譲渡や工事請負契約にかかわる契約書には収入印紙を貼り、印紙税を納める必要があります。

収入印紙

事業者間で行き来する金額が大きな建設業では、当然ながら収める印紙税も高額です()。利益を圧迫する大きな要因のひとつといえるでしょう。

さらに、納税漏れがあった場合、納付しなかった印紙税の額とその2倍の金額の合計(つまり3倍)が過怠税として徴収されます(印紙税法第20条)。

こうした問題も、電子契約で解決できます。印紙税法基本通達第7節第44条では、課税文書の構成要件として紙等に記載し作成されたものと明記されており、電子契約書は課税文書に該当しないと解釈できるからです。

表 工事請負契約金額に対する印紙税額
工事請負契約金額 印紙税額
1万円未満 非課税
100万円以下 200円
100万円を超え200万円以下 400円
200万円を超え300万円以下 1千円
300万円を超え500万円以下 2千円
500万円を超え1千万円以下 1万円
1千万円を超え5千万円以下 2万円
5千万円を超え1億円以下 6万円
1億円を超え5億円以下 10万円
5億円を超え10億円以下 20万円
10億円を超え50億円以下 40万円
50億円を超えるもの 60万円
契約金額の記載のないもの 200円

(注)令和5年(2023年)3月31日までに作成される契約書には、印紙税額の軽減措置があります

書面での契約書を取り交わすには、郵送あるいは決裁者が直接対面・押印する必要があります。郵送の往復には数日のロスが発生しますし、決裁者が在宅勤務や出張などで不在の場合、すべての業務が滞ります。加速する現代のビジネスシーンでは、商機を逸する事態も当然、考えられるでしょう。

電子契約であれば、こうした時間や機会のロスがなく、リードタイムを大幅に短縮できます。印刷や発送などの作業が削減できるだけでなく、リモートワークにも対応できようになるため、建設業で急速に進む働き方改革への対応にもつながるでしょう。

工事請負契約書を交わす機会の多い建設業では、紙のファイリングや必要な書類を探す手間など、担当者の負荷も看過できないところです。担当者がリモートワークあるいは出張している場合、自宅や出先から書類を閲覧することもできません。

電子契約書をクラウドサーバーにアップロードして管理すれば、時間や場所を問わず閲覧・確認ができるようになります。盗難・流出・漏洩などのリスクも最小限に抑えられるでしょう。自然災害やランサムウェアの被害に遭ったとしても、事業活動への支障は限定的です。BCPや情報セキュリティ対策、コンプライアンス強化に、大きな効果を発揮します。

電子契約システムを選ぶポイント

メリットが数多い電子契約ですが、システム選定には慎重を期す必要があります。念頭に置くべきポイントを、3つご紹介しましょう。

巷では電子契約と銘打ったさまざまなサービスがありますが、まずチェックすべきポイントがシステムの安全性です。簡単な目安となるのは、そのシステムが電子サインであるか電子署名であるかでしょう。

結論からいえば、電子署名のほうが安全性は高くなります。

電子サインは、メール認証からタブレットなどのデバイスへのタッチペンでの署名なども含む広範な概念です。一方で、電子署名は電子署名法第2条によって署名者が誰であるかを表示していること/文書の改竄が行われていないことを確認できるもの、と定義されており、安全性について明確に区別されています。

電子署名法の要件をクリアする技術が、前述の公開鍵暗号方式です。この技術を利用した電子署名では、秘密鍵を知らない限り、署名した文書の偽造や改竄、盗聴ができません。

対して、電子サインは暗号化されていないため、安価ではあるものの偽造や改竄が容易です。安全性を考えるなら、電子署名法に準拠したシステムを選ぶべきといえるでしょう。

以前の記事でお伝えしたように、電子帳簿保存法(以下、電帳法)の改正で、電子取引について電子でのデータ保存が必須になりました。令和6年(2024年)1月以降、紙で出力しての保存はできなくなります(参考記事:早わかり電帳法改正2022 建設業への影響は?)。

電子取引保存の法的要件

 「日付・金額・取引先」で検索できること
 改竄防止のための措置が講じられていること

国税庁の資料では、電子取引保存の法的要件のうち、検索についての要件は規則性を持たせたファイル名にすることで対応できる旨が紹介されています。例えばファイル名を「20240101_10000円_A社.pdf」などとすれば、簡易的ではありますが、同法の検索要件についてはクリアできます。

一方、ふたつめの要件である改竄防止のための措置については、改竄防止のための事務処理規程を定める方法のほか、「すみやかなタイムスタンプ付与」や「訂正・削除の履歴が残るシステム等での授受・保存」といったシステムでの対応例が挙がっています。

現実的に考えれば、システムを導入したほうが手間もかからず、ヒューマンエラーへの懸念もないでしょう。その場合、詳細な検索機能と自動タイムスタンプ機能を備えたシステムを選ぶことが望ましいといえます。

電子契約システムが如何にメリットの多いツールであっても、新たに導入することで現場の業務フローに混乱が起こっては、期待するような業務効率化を実現できません。システムの使いやすさやわかりやすさ、既存業務との兼ね合いは、実際の運用面で無視できない問題です。

すでに導入している文書管理システムや基幹業務システムと連携するシステムであれば、そうした問題もクリアできます。使い慣れたUIをそのまま利用できるシステムなら、現場のスタッフも抵抗なく、新しい業務フローに馴染めるでしょう。

電子契約サービス“UC+ケイヤク”のご案内

ここまでご説明したように、電子契約は建設業DXの第一歩として、手軽ながら非常に効果の大きな施策です。そのため、大手ゼネコンを中心に急速な普及が進んでいます。

建設IT NAVIでは、建設業の電子契約対応ソリューションとして、“UC+ケイヤク”をおすすめしています。UC+ケイヤクは、電帳法対応文書管理システム“UC+ドキュメント”のオプションに位置づけられる、クラウド型の電子契約サービスです。建設業向けERP“PROCES.S”とも標準で連携し、管理業務のさらなる効率化を実現します。

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立会人型の電子署名を採用することで利便性と安全性を両立しているほか、自動タイムスタンプ機能も搭載。建設業法や電帳法など、各種法令の要件をクリアします。シンプルで使いやすいUIであるため、現場担当者にも負荷がかかりません。

製品詳細についてまとめた資料をご用意しました。無料でダウンロードいただけますので、ぜひ貴社の業務効率化にご活用ください!


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よくある質問

Q建設業の工事請負契約に電子契約は導入できますか?
A建設業法では、工事請負契約について、長らく書面(紙)でのやりとりが求められてきましたが、2001年の改正建設業法において、相手方の承認があれば電子契約にも法的効力が認められる旨が明文化されました。ただ、この時点では電子契約の具体的な範囲や技術的基準については不明瞭だったといえます。2018年以降、グレーゾーン解消制度によって、国土交通省や経済産業省から具体的なシステム例としてクラウド型電子契約サービスや立会人型電子契約が適法との声明が正式に発表され、普及への弾みとなりました。
Q電子署名における立会人型とはなんですか?
A事業者Aと事業者Bが電子契約を交わすとき、電子契約事業者Cが第三者として電子契約書に電子署名する形式です。⽴会⼈が契約締結現場を目撃したことを証明するのと同等の法的効力があり、事業者署名型ともいいます。第三者を介在させない当事者署名型では、認証局に本人確認をしてもらったうえで電子証明書を発行してもらう手間と費用が掛かりますが、立会人型はそうしたコストなしで導入できます。低コストと安全性を両立した方式といえるでしょう。

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