DXの第一歩、電子帳簿保存法対応
2022年のホット・トピック、改正電帳法施行。多くの事業者様が対応に追われるなか、建設業の事業者様にとっては特に大きな関心事といえるのではないでしょうか? 法改正の一部(電子取引保存)について2年の猶予期間が設けられていますが、税制面のメリット/デメリットを考えれば、早めの対応は必須。本稿では、改正の概要から注意点、対応策までをわかりやすくまとめました。
CONTENTS
01.電子帳簿保存法とは?
02.電帳法2022の改正点
1)電子帳簿等保存法
2)スキャナ保存
3)電子取引のデータ保存
03.おススメのソリューション
04.よくある質問

電子帳簿保存法とは?
電子帳簿保存法(以下、電帳法)をひとことでいえば、従来、紙での保存が義務づけられていた国税関係帳簿書類について、電子データによる保存を認めた法律です。
事務従事者の負担軽減、紙保管のスペースやコスト削減が図れるため、事業者様にとっては歓迎すべき法律といえるでしょう。

ただ、煩雑な帳票類を電子データで保存して管理することは、大幅な業務効率化に繋がる一方で、不正な複製・金額の編集など、改竄リスクが伴います。利便性の追求と真実性の担保はトレードオフの関係にあり、そのバランス調整を図るため、同法では保存要件について細かく定められています。
1998年に施行されて以後、保存要件については何度も見直されてきましたが、2022年の法改正は特に大きな転換点と目されています。単なる時代に沿ったアップデートというだけでなく、国を挙げてのペーパーレス化、DXの促進を積極的に目指した内容になっているからです。
電帳法2022の改正点
電帳法でいう電子データは、①電子帳簿等保存、②スキャナ保存、③電子取引データ保存の3つの区分に分類されます(図1)。
2022年の改正内容について、区分ごとにおさらいしていきましょう。
1)電子帳簿等保存
同法では、会計ソフトなどで作成した電子帳簿データがあれば紙の帳簿に代えられる旨が定められています。さらに2022年の改正法で、これまで必要だった税務署長の事前承認が不要になりました。
また、これまでは複雑な検索要件が課されていましたが、改正後の要件は取引年月日と金額、取引先のみとなり、大幅に緩和されています。

2)スキャナ保存
緩和の流れは電子帳簿同様
同法では、取引先から受け取った紙の書類についてスキャン文書での保存(解像度200dpi以上)が認められています。さらに、2016年にはデジタルカメラやスマートフォンで撮影した画像データも容認されました。
2022年の法改正では、電子帳簿同様、税務署長の事前承認が廃止。これにより、紙の原本については即廃棄することができます。
同じく検索要件も緩和されていますが、スキャナ保存データで検索要件を満たすには、ファイル名を取引年月日・金額・取引先名で構成するなどの工夫が必要でしょう。もちろん、OCR機能を持ったシステムがあれば最も簡便です。
タイムスタンプ要件が不要に
それらに加えて、スキャナ保存ではタイムスタンプ要件についても緩和されています。
〇タイムスタンプとは?〇
TSA(Time Stamping Authority;時刻認証局)の発行する時刻情報を付与することで電子データ化された日時を証明、改竄が行われていない原本性を担保する仕組み。
スキャナ保存する際、これまでは書類の作成・受領から遅滞なくデータ化してタイムスタンプを押す必要がありました。2022年の改正法では、この保存までの期間が最長2カ月+7営業日(約70日)以内に伸長され、受領者のサインも不要になっています。
なお、訂正・削除履歴が残るクラウドシステムに格納する場合、タイムスタンプ自体が不要になるため、業務効率の大幅改善が期待できます。
3)電子取引のデータ保存
今回、多くの事業者様にとっての特に大きな関心事は、電子取引に関する改正ではないでしょうか。具体的にいえば、メールやクラウド、アプリ、EDI、USBメモリなどを介した注文書、契約書、送り状、領収書など書類のやりとりについて、今後は大きく様変わりします。

紙媒体での保存が不可に
これまで電子取引情報の保存については、①電子データ、②COM(電子計算機出力マイクロフィルム)、③紙媒体の書面のいずれかを選択できました。
2022年以降は②と③が廃止され、電子データへの一本化が義務づけられます。
建設業には大きなメリット
巨額が行き来する建設業では、当然、紙の契約書を交わすたびに発生する印紙税も大きくなります。電子契約に切り替えれば印紙税が発生しないため、大きなタックスメリットになるでしょう(参考記事:建設業こそ電子契約を導入すべき3つの理由【2023最新】)。クラウドシステムを利用すればタイムスタンプが不要になるほか、テレワーク対応や災害時のデータバックアップが図れるなど、業務効率化やBCPの面でも利点があります(参考記事:2022年、建設需要のトレンドは“防災”へ 問われる建設業のBCP)。
宥恕措置があるも油断は禁物
今回の法改正については、専用のクラウドシステムを導入して対応するのが最も簡便ですが、システム移行にはそれなりの時間が必要です。そうした事業者様の負担を鑑み、電子取引については2023年12月末まで、従来どおり紙での出力保存が認められる宥恕措置が講じられました。ただ、いずれ対応しなければならないなら、補助金を活用できるいまから準備を進めるのが賢明です。
電子帳簿保存 | スキャナ保存 | 税務署長の事前承認 | 必要 | 廃止 | |
---|---|---|---|---|---|
電子取引 | 検索要件 |
①取引年月日、金額、取引先 ②日付・金額に係る記録項目について範囲指定 ③二つ以上の任意の記録項目を組み合わせて検索できること |
大幅緩和 取引年月日・金額・取引先のみ |
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タイムスタンプ要件 | ・遅滞なく付与 (重要書類で受領後3営業日以内) |
緩和 ・最長2ヶ月+7営業日(約70日)以内 ・受領者のサイン不要 大幅緩和! |
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紙出力 | 可 | 不可 ※2023年12月末まで猶予あり |
おススメのソリューション
国税関係帳簿書類の電子保存について、細かなルールを定めた電帳法。保存要件を満たさなかった場合、青色申告が取り消されることもあり、控除や経費が認められなくなります。また、10%の重加算税が課される罰則も新設されており、細心の注意が求められるでしょう。
ただ、電帳法の保存要件は難解で、苦慮されている事業者様も多いのではないでしょうか? 内田洋行ITソリューションズでは、そうした事業者様向けにクラウド型のERPシステム「PROCES.S」をご案内しています。
同システムはJIIMA(公益社団法人日本文書情報マネジメント協会)による電子帳簿ソフト法的要件認証を受けており、担当者様が電帳法について深く把握していなくても、法令に準拠した業務遂行が可能です(※2023年の春には、インボイス制度へも対応予定)
改正電帳法についての詳細・補助金情報とともに、製品詳細やソリューションについてまとめた資料と、改正電帳法に対応した「PROCES.Sユクタスドキュメント連携オプション」の製品カタログをご案内しています。無料でダウンロードいただけますので、ぜひこちらもご活用ください。
よくある質問
- Q帳簿や書類等の電子保存について、電帳法以外でも考慮すべき法律はありますか?
- A膨大な書類を扱う建設業では、電帳法以外でも大気汚染法や建設業法など、さまざまな法律にまたがって細かな定めがあります。法律によって保存すべき書類や保存期間に差異がありますので、併せてチェックしておいた方がよいでしょう。
- Q保存すべき書類や保存期間について、建設業法ではどう定められていますか?
- A建設業法第40条3では、営業に関する帳簿の備えつけ/図書(完成図など)の保存について定められています。保存期間は前者が5年、図書に関しては10年です(参考記事:建設業法違反、その罰則は? ~インボイス制度編~)。
本記事の関連記事はこちら
・国税庁「電子帳簿保存法が改正されました」
・国税庁「電子帳簿保存法一問一答 【スキャナ保存関係】」
・国税庁「電子帳簿保存法一問一答 【電子取引関係】」
・国税庁「はじめませんか、書類のスキャナ保存」
・経済産業省「どうすればいいの?「電子帳簿保存法」」
・公益社団法人日本文書情報マネジメント協会「JIIMA認証制度」