株式会社インフォマティクス
事業開発部 マネージャー
金野 幸治 氏
「GyroEye Holo」はMicrosoftのHololensを装着し、建築現場等で設計図面をホログラムとして実寸で現実世界に投影しながら様々な検証を視覚的に支援するツールです。
完成後のチェックや墨出し(工事中に必要な線や位置などを壁などに表示する作業)作業の省略など、人手不足が深刻化している建築現場の作業工数削減に役立つことを期待されており、各メディアから注目を集めています。本セミナーでは、この画期的な仕組みを実機によるデモンストレーションを交えてご紹介します。
インフォマティクスについて
インフォマティクスについて
当社は空間情報を強みとするシステムインテグレータです。約40年前にCADシステムの販売を開始しました。その後、空間情報を扱っていこうとGISシステムを発売。iOSやAndroidなどの環境が普及したことで、AR、VRの開発も徐々に進めました。2014年、ARに対応したGyroEye、2016年、VR対応のGyroEyeV2.0の販売を開始、2017年、MR対応のGyroEye Holoを発表しました。
ARとは拡張現実のことで、現実空間の中にキャラクターや家具を出現させる技術です。VRは仮想現実で、ゲームのように装着者を完全な別世界に誘います。MRはMixed Realityの略で、現実と仮想を複合させる技術です。たとえば建設中のビルの中に図面を浮かび上がらせて、施工状況の確認、品質チェックなどができます。2018年、マイクロソフトから開発パートナーとして正式に認定されました。
GyroEye Holoとは
GyroEye Holoとは
GyroEye HoloはマイクロソフトのHoloLensに対応したシステムです。ゴーグル越しの現実世界にリアルスケールで図面投影ができます。2次元、3次元の両方に対応、3Dデータを現実空間に重畳することも可能です。
開発したきっかけは、あるサブコンから「墨出しを行いたい」という要望があったからです。さまざまな方法でチャレンジしましたが、当時の技術では実現は難しかった。そこにHoloLensが登場、「これならできる」とプロジェクトがスタートしました。HoloLensは単体で複合現実を体験できるウエアラブルPCです。ミリ単位の墨出しは、まだ難しいのですが、用途を絞った墨出しは可能で、出来形確認、設備干渉の確認、メンテナンス、維持管理などに力を発揮します。
対応のデータ形式は下記を参照してください。システムの構成はパソコンに入れるソフトウエアであるデータコンバータ、HoloLensに入れるビューワ、HoloLensとパソコンをつなぐCMS、HoloLensそのものからなります。
サーバを通じて、さまざまな機能拡張を予定しています。例えば、メンテナンス作業でインプットをしたデータをサーバで管理する仕組みも考えています。作業現場と事務所(オフィス)をインターネットでつなぎ、作業現場でHoloLensを使っている作業員に事務所から指示を出すことも可能になります。
出典:「~1分の1スケールの図面実寸投影で建設現場に革命を~GyroEye Holoのご紹介」セミナー資料より
HoloLensの操作方法
HoloLensは手を使ったジェスチャー操作で入力できます。ホームメニューを出すと、中央に点のようなものが動いています。これがカーソルの役割を果たします。顔の向きを少し変えて、実際に動かしたいアプリの上で人差し指と親指でつまむしぐさをすると、アプリが起動します。タップした状態をホールドしてスクロールしたり、ブルームというキャンセルやメニューを出す操作をしたり、手を動かすだけでマウス(カーソル)や画面上のアイコン、ボタンと同様の操作ができます。最近、両手ジェスチャーに対応するよう、OSがバージョンアップされるなど、HoloLensの進化は止まりません。
HoloLensの空間認識
実際に、どんな映像が見えるのか。当社のフロアデータを、この部屋に浮かべてみます。平面図、天伏図、フロアのレイアウト図が表示されています。天伏図には、さまざまな空調類、配管、ダクト、軽量鉄骨など構造材の位置などが示されています。スタンドアローンのHoloLensだけで、位置をしっかり把握して表示できます。
出典:「~1分の1スケールの図面実寸投影で建設現場に革命を~GyroEye Holoのご紹介」セミナー資料より
HoloLensの仕組み
HoloLensはDepthセンサー(3Dスキャン機能を持ったセンサー)を備えており、レーザーや赤外線を飛ばして前方3~5メートルの範囲を測定、3次元空間の情報を取得します。さらに、HoloLensの左右には環境認識センサー(環境認識カメラ)がついており、周囲の映像を解析して自分の位置を認識することもできます。一般的にはSLAMといわれる機能で、同時進行的に自己位置を推定して環境をつくりあげます。
その最先端の仕組みがHoloLensに導入されました。最近では掃除ロボットにもSLAMの機能が使われ、効率的に掃除するロボットも登場しました。GPSにもインターネットにも一切頼らず、ローカル環境の中だけで自分の位置がわかります。これによって、2次元図面や3次元データを正確に投影することが可能になりました。
出典:「~1分の1スケールの図面実寸投影で建設現場に革命を~GyroEye Holoのご紹介」セミナー資料より
GyroEye Holoの実証実験の実施例
GyroEye Holoの実証実験の実施例
当社は2017年6月に東京大学本郷キャンパスで鴻池組とともに実証実験を行って以来、各社と共同で、さまざまな実証実験を繰り返してきました。延べ60回以上、国内でも随一の実証回数です。
トンネル内での実証実験
2017年12月には鴻池組の協力を仰ぎ、トンネル内実証実験を行いました。鳥取県で施工中のトンネルが対象です。穴そのものは貫通しており、コンクリートで固める覆工という作業に取りかかっていました。完全に覆工が終わっている部分を対象にHoloLensを活用して施工管理、施工の一部で検証ができないかと実証実験をスタートさせました。
覆工し、コンクリートで固めた後は中の地層は見えなくなってきます。地層のデータを重ねることで、例えば、クライアントにトンネルを引き渡す際、仮に、なにがしかの変状があった、クラックがあった、万が一漏水のようなものがあったとしたら、地層のデータを展開することで、因果関係の説明にも役に立つのではないかと思います。
映像では明るい空間に見えますが、実際の坑内は非常に暗い空間でした。暗い空間の中でHoloLensを活用できるのかどうかという不安もありましたが、HoloLensの空間認識機能が非常に優秀だったこともあり、何回か歩いて、ある程度空間を構築した上で進めると、精度良く見ることができました。
断面図を表示すると、トンネルの径が、しっかりとわかりますし、トンネル寸法も見ることができましたから、「いろいろな場面で活用できそうだ」という声をいただきました。MRは、まさに図面が空中に表記されているように見えます。
計測器ほどの高い精度が出ているわけではありません。表示距離30メートルで、誤差は10センチメートルでした。あくまで平均で、まだバラツキがあります。とりあえず、その程度の精度で許容できるものに対して活用を進めています。
MR技術を利用した教育・研修支援
次にネクスコ・エンジニアリング北海道と取り組んだ最新の事例を取り上げます。MR技術を保全技術支援に活用したソリューションツールです。教育・研修支援のPRETES-e、点検・診断支援のPRETES-i、調査設計支援のPRETES-sのシリーズ3部作の第一弾として、PRETES-eが誕生しました。
MR技術を活用して仮想の内部構造や鉄筋、支柱の基礎などを現実の構造物に複合させて表示します。仮想の変状や劣化のメカニズムも表示できます。現実の空間に点検時の着目点を重ね合わせることができ、次世代教育が可能になりました。
現場での研修の場合、講師と研修生はHoloLensを装着してMR画像を見ます。HoloLensがない研修生もタブレットを利用して、講師の見ているMR画像を手元で見ることができますし、遠隔地の研修生もWi-Fi技術を利用して現地と同じ映像を見ることができます。
つまり、講師が現場の高架橋の下でHoloLensを見ている。そこに鉄筋の情報などが重畳され、その見えている映像自体を研修生がタブレットなどを通じてリアルタイムで共有するわけです。研修生と講師が離れているところにいても、インターネットを通じて映像を共有できるような仕組みをつくりました。
HoloLensの屋外使用
もともとHoloLensは屋内用のデバイスとして開発されましたが、屋外でも対応可能です。 バッテリーは3時間くらいしかもたないので、必ず作業前に充電しておく、外付けバッテリーを持っていくといった運用管理も求められます。MicroUSBが背面にあり、それを経由して充電することができます。
実証実験データ抜粋
表示距離とはマーカを置いて、そこからどこまで表示したかを示しています。東大本郷キャンパスの場合、50メートルまで表示しました。そのとき、一番端の誤差がどのくらいだったかをパーセンテージにしたものが「誤差%」です。実施例の平均誤差は0.8%でした。60メートル表示して誤差が5センチメートルに収まった場合もあれば、30メートル表示させるのに1メートルもずれた場合もありました。
ずれの原因として考えられるのは第1に空間認識が今一つ不十分だったことで、HoloLens自身の位置がわからなくなったことが挙げられます。可能な限り、最初に対象物の周りを歩き回ることで、空間自体がどうなっているのかをHoloLensに覚えさせます。
第2に影響する要素は周りの構造物の多少です。地面だけしかないとトラッキングできる要素、特徴点の要素が非常に少なく、精度が悪くなる傾向があります。
その他、外部利用の為の注意点としては、夏場の外気温にも注意しなければいけません。摂氏32度以上は黄色信号、35度以上は赤信号です。32度以上で使っていると、システムがダウンする可能性があります。外付けのファンやペルチェ素子などを活用して急冷するタイプの空冷装置を利用する研究を進めていますが、発売するまでには至っていません。お客さまも夏場に使用する際は日傘を使ったり、検証する時間帯を夕方にしたりと、いろいろと工夫されています。
GyroEye Holo 変換から表示までのフロー
GyroEye Holo 変換から表示までのフロー
データ変換からHoloLens表示までのフローを紹介すると、最初のステップはCADデータの取り込みです。まず、パソコンにデータコンバータをインストール。次にインストールしたデータコンバータでCADデータを読み込みます、ARマーカとCADデータの位置関係を相対的に指示します。
第2のステップはCADデータの表示位置の定義です。スクリーンの右上に表示されているデータコンバータの中で、ARマーカとCADデータの相対的な表示位置を定義します。図の場合、ARマーカを図面の左端、通り芯付近に配置しました。そのまま現場へ持っていけば、この位置関係のままHoloLens越しに表示されます。
第3のステップはデータ変換。変換サーバで自動的に変換処理を行います。変換されたデータはCMSサーバに格納されます。
第4のステップはHoloLens内のGyroEye ビューワアプリにログインし、データをダウンロードします。もし現場がインターネットにつながらない環境なら、先にダウンロードしておけばいいし、インターネットにつながるのであれば現地でダウンロードしても構いません。マーカと合わせて現場で見ていただければ、1分の1体験ができる仕掛けになっています。
出典:「~1分の1スケールの図面実寸投影で建設現場に革命を~GyroEye Holoのご紹介」セミナー資料より
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事業開発部 マネージャー
金野 幸治 氏
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