i-Construction 現状と展望

i-Construction 現状と展望
竹末 直樹 氏

株式会社三菱総合研究所
次世代インフラ事業本部 主席研究員
竹末 直樹 氏

 国土交通省は、2025年度までに建設現場の生産性を20%向上することを目標とした「i-Construction」の導入を進めています。2015年の検討開始以来、「i-Construction 推進コンソーシアム」の設立、技術開発のニーズ・シーズのマッチング、3次元データの流通・利活用の枠組み構築など、民間企業の参加を促す取り組みを行ってきました。
 その結果、ドローンやICT建設機械の活用、設計・施工図面の3次元化などにより、工期や作業時間を短縮して、生産性を向上させた工事例が全国から報告されています。
 本セミナーでは、国土交通省が先導する「i-Construction」の取り組みの概要、現状と課題を解説するとともに、そのマーケットの拡がりや民間企業から見たビジネス機会について株式会社三菱総合研究所 次世代インフラ事業本部 主席研究員 竹末 直樹 様よりお話をいただきました。

国土交通省の取り組み

i-Construction導入の背景

 国土交通省は2025年度までに建設現場の生産性20%向上を目標とした「i-Construction」の導入を進めています。ドローンやICT建設機械の活用、設計・施工図面の3次元化などにより、工期や作業時間を短縮して生産性を向上させようという取り組みです。建設業就業者の減少と高齢化は皆さま方もひしひしと感じられていることと思います。一方、建設投資額は2008年頃に底を打ち、近年は少し上昇しています。震災復興対応やオリンピック需要もあり、こうした傾向が続けば、人・技術者が足りないという問題に直面します。

i-Construction導入の背景

i-Construction導入の背景:相対的に低い生産性

 その打開策が労働生産性の向上です。国から「働き方改革」の施策が打ち出されましたが、以前から建設業の労働生産性は一般機械、化学、金属など他業種に比べて低い傾向にありました。

i-Construction導入の背景:相対的に低い生産性

i-Construction導入の背景:土木・コンクリート工の低生産性

 トンネル工事では機械化が進み、昭和30年代に比べると生産性は10倍に向上しましたが、土工やコンクリート工の生産性はあまり変わっていません。土工・コンクリート工の生産性を上げないことには生産力は維持できないという危機感が国土交通省にはあります。

i-Constructionの導入:生産性革命の実現

 このような背景があって、国土交通省は「生産性革命の実現」に取り組み始めました。具体的には、より少ない工事日数、より少ない人数で、現在の工事量をこなすことです。人・日あたりの仕事量は増えます。それを実現させるのが「i-Construction」です。

i-Constructionの導入:取り組みの視点

 建設業で生産性向上が、なかなか実現しない理由は3つあります。1つは一品受注生産、2つ目は現地屋外生産、3つ目に労働集約型生産であることです。これらは宿命のようなもので、製造業のようなライン生産やセル生産、自動化・ロボット化は建設業とは無縁とされてきました。ここにIoTなどの新しい技術を使い、建設現場を最先端工場化するといった革命を起こそうというのが国土交通省の考えです。

i-Constructionの導入:取り組みの視点

i-Constructionの導入:コンカレントエンジニアリングとフロントローディング

 では、具体的にどういうことをやるのか。「コンカレントエンジニアリング」「フロントローディング」という聞き慣れない英語が出てくるのですが、調査・測量→設計→施工→検査→維持管理・更新の建設生産システムの一連の流れの各段階に、いろいろな情報通信技術やシステムを入れ込んでいく、できるだけ前工程で後工程の問題を解決していこうということです。

 例えば、調査・測量の段階ではドローンを使って空中から測量し、3次元測量点群データを集めます。3次元CADによる設計で図面の枚数も圧倒的に減り、施工段階も含めてかなり省力化ができます。施工段階ではICT建機の導入で熟練のオペレーターでなくても操作が可能になります。維持管理・更新も航空レーザー測量による土工監視などを駆使することで非常に楽になります。

i-Constructionの導入:サプライチェーンマネジメント

 建設プロセスだけでなく、サプライチェーン全体にも-Constructionを導入し、サプライチェーン革命を起こそうとしています。

i-Constructionの導入:サプライチェーンマネジメント

i-Constructionの導入:推進コンソーシアムの設置

 国土交通省が設置したi-Construction推進コンソーシアムは国、自治体、建設業界だけでなく、IoT、ロボット、AI、金融など建設業界外も参加しています。国や自治体、建設業界が課題やニーズを出し、建設業界外から解決策を提案してもらう。そういう構図が描かれています。

 2017年12月時点で800者以上が参加。ワーキンググループでニーズとシーズのマッチングや3次元データの流通・利活用などの検討が盛んに行われています。

海外の先進事例

イギリスの取り組み:Construction2025

 海外の取り組みを見てみましょう。イギリスは「Construction2025」を進めています。BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を本格的に導入、設計図や施工図を3次元でモデル化し、部材情報などを取り込むことで効率的に施工・管理していこうというものです。

 コスト削減を目標として設定。2016年までにBIMを義務化しましたが、2025年までに、さらに33%のコスト削減、50%の工期短縮という非常に大きな目標を立てています。

イギリスの取り組み:Construction2025

イギリスの取り組み:Crossrailプロジェクト

 現在、ロンドンを中心に「Crossrailプロジェクト」という大規模な鉄道工事が進行中です。都市内を掘削する非常に複雑な工事で、BIMがふんだんに利用されています。すべてを3次元で図面化して情報共有することで、リスクの低下、安全性向上、ミスやロスの減少など、いろいろなメリットが出てきています。

シンガポールの取り組み:BIMデータの提出を義務化

 実はイギリスよりも早く取り組みを始めたのがシンガポールで、BIMの電子申請を2009年に導入しました。2015年、5,000㎡以上の建築申請の際、意匠・構造・設備のBIMデータ提出を義務づけました。

 「バーチャル・シンガポール」プロジェクトは2018年にシンガポール全土のバーチャル化を実現しようというもの。国土全体の3Dモデル上に属性情報をはめこみ、集約したプラットフォームの構築をねらっています。

シンガポールの取り組み:BIMデータの提出を義務化

民間のビジネス機会

ビジネス機会のポイント:建設生産システムの大改革

 従来、各工程で最適化が図られていたのが全体最適に変わります。しかも、フロントローディングです。要は前工程で、できるだけ後工程まで決めてしまおうというのが建設生産システムの大改革の要点です。調査・測量、設計段階の付加価値が非常に大きくなります。

 もともと一品受注、現地屋外、労働集約型生産で工場化は無理だといわれていた建設の世界で、オーダーメイドで在庫ゼロのオートメーション化を実現しようとしているのが「i-Construction」です。従来の発想が根本から覆(くつがえ)ります。

ビジネス機会のポイント:建設業界のゲームチェンジ

 発注者である顧客が何に価値を見出すか。例えばエレベーター業者がIT企業と組んで待ち時間なしのエレベーターを開発すれば、顧客は、そこに大きな価値を見出します。構造体そのものよりエレベーターのほうを評価するわけです。そうすると、従来は、付属品のように思われていた設備や内装が主役になる。

 i-Construction推進コンソーシアムに建設業界以外が入るということは国も、そうした業界にブレークスルーを求めていることを意味しますが、裏を返せば、そういう人たちに建設市場を牛耳られるリスクがあるとも言えます。

ビジネス機会のポイント:最終目標は働き方改革

 国土交通省は2025年までに生産性を20%向上させるべく、i-Constructionを進めています。工事日数を10%減らし、作業員を10%減らし、出来高は同じだとすると自動的に20%向上します。ただ、具体的に何をすればいいのかが分からない。

 要するに、これは働き方改革です。現場は4週8休を原則にする、ある工事に関しては完全に無人化にする、現場にワークシェアリングを導入するといった働き方改革に結びつく具体的な絵姿を描き、それを実現するために技術開発やシステム構築に取り組むことが必要です。

ビジネス機会のポイント:時空を超えた建設コミュニケーション

 BIMによって2次元が3次元になります。実は世界ではBIM-2D、BIM-3D にとどまらず、4D、5D、6Dという言い方をしている人たちがいます。4Dでは時間、5Dではコスト、6Dでは、いわゆるファシリティーマネジメントが加わります。7Dがあるなら、おそらくAIです。

 BIMは何のために使うのかが最も大事です。ひとつの姿は円滑なコミュニケーションと意思決定への貢献です。まったく別のところにいる人たちがバーチャルの3D空間に集まって打ち合わせし、施工方法などのアイデアを戦わせながら、その場で意思決定していく。生産性は劇的に向上します。BIMは、そうした場を提供します。

ビジネス機会のポイント:土木の主戦場はメンテナンス

 国の発注工事は土木が圧倒的に多い。建築に比べて土木は、コンクリートも現場打ちが多く、プレキャスト化による生産性向上には限界があります。土木がi-Constructionの効果を得るのはメンテナンスです。

 土木の場合、道路、トンネル、港湾など長期間使わなければいけないので、メンテナンスを効果的・効率的に実施する必要があります。そこで施工段階で、いろいろな仕掛けをしておく。例えばICT、IoTを活用しセンサーなどを埋め込んでおいて、痛んでいるところ、痛みやすそうなところをコンクリート構造物自体が教えてくれるようなそうしたシステムがあると、メンテナンスが楽になります。

 土木ではメンテナンス市場がこれからどんどん広がっていきます。ここに着目した生産性革命を考えていくのが重要だと思います。

国際標準への対応:海外への進出を視野に入れる

 日本でi-Constructionを推進して、システムが構築できたならば、それを海外に売っていかないといけません。そのときに障壁になるのがISOなどの「国際標準」です。

 日本でどんなに優れたシステムをつくっても、国内で閉じた仕組みは国内市場が小さくなったときに終わってしまいます。国際標準を意識し、海外への進出を視野に入れて、システムを構築しなければいけません。

 ISO55000シリーズというアセットマネジメントの国際規格があり、日本も積極的に関わっています。メンテンナンスの領域ではi-Constructionとアセットマネジメントは重なり合います。日本のアセットマネジメントの技術やシステムを海外に売っていく意味で国際標準は非常に重要ですし、アセットマネジメントは近い将来、i-ConstructionやBIM/CIMの世界と融合する可能性が高いです。

竹末 直樹 氏
 講師ご紹介 

株式会社三菱総合研究所
次世代インフラ事業本部 主席研究員
竹末 直樹 氏

1986年京都大学工学部土木工学科卒業。1991年マサチューセッツ工科大学大学院土木工学研究科(コンストラクションマネジメントプログラム)修了。建設会社勤務を経て、1999年に㈱三菱総合研究所入社。社会資本マネジメントにかかる政策形成、海外展開に関する調査・コンサルティングに従事。東京工業大学環境・社会理工学院非常勤講師。(一社)日本アセットマネジメント協会理事。

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