JV(ジョイントベンチャー)の会計処理とは?建設業のJV工事に対応したい

JV(ジョイントベンチャー)・共同企業体制度とは

JV(ジョイントベンチャー)・共同企業体制度とは、複数の建設企業が協力して一つの建設工事を受注し、施工するために結成される事業組織体のことを指します。この制度は、単独では受注や施工が難しい大規模な建設工事に対応するためのものです。
通常、建設企業は単独でプロジェクトを進めますが、JVを組織することで、自社だけでは不足する資金力や労働力を補い合い、大規模なプロジェクトを遂行することが可能になります。

JVを形成する企業の数はプロジェクトの規模や性質により異なりますが、一般的には2~5社が参加します。複数の企業が協力することで、各企業が持つ専門知識や技術を結集し、効率的かつ効果的にプロジェクトを遂行することができます。また、リスクを分散することができる点も大きな利点です。大規模プロジェクトにおいては、資金や人材の確保、技術的な課題への対応など、単独企業では困難な問題が多く存在しますが、JVを結成することで自社だけでは受ける事のできない資金力や労働力などが求められる大規模な建設工事を受注・施工できるというメリットがあります。


建設業におけるJVの区分

JVは結成目的によって区分が異なります。

特定建設工事共同企業体(特定JV)

特定建設工事共同企業体(特定JV)

特定建設工事共同企業体(特定JV)は、主に大規模な建設プロジェクトにおいて形成される共同企業体のことです。各企業の専門性やリソースを結集し、効率的なプロジェクト遂行やリスク分散を図るために結成されます。

経常建設共同企業体(経常JV)

経常建設共同企業体(経常JV)

経常建設共同企業体(経常JV)は、中小・中堅建設業者が継続的な協力関係を確保することにより、マーケットシェアの拡大や競争力の向上を目指し、経済的な利益を追求することを目的として結成されます。

地域維持型建設共同企業体(地域維持型JV)

地域維持型建設共同企業体(地域維持型JV)

地域維持型建設共同企業体(地域維持型JV)は、地域の維持管理に不可欠な建設プロジェクトにおいて、地域の建設業者や関連企業が連携して地域の建設需要に対応し、安定確保を図る目的で結成されます。
具体的には、除雪や除草、道路の舗装や管理などです。

復旧・復興建設工事共同企業体(復旧・復興JV)

復旧・復興建設工事共同企業体(復旧・復興JV)は、大規模災害からの円滑かつ迅速な復旧・復興を目指すために結成される共同企業体を指します。
これにより、技術者や技能者の不足や建設工事需要の急増などに柔軟に対応できます。復旧・復興JVは、発注機関の入札参加資格申請時または必要に応じて結成され、一定期間、有資格業者として登録されます。

幹事会社(スポンサー企業)と構成会社(サブ企業)とは

JV会社は、構成員(複数会社)からなる共同事業体です。構成員は、幹事会社(スポンサー企業)とそれ以外の構成会社(サブ企業)に分類されます。

幹事会社(スポンサー企業)とは

幹事会社(スポンサー企業)とは、ジョイントベンチャー(JV)の運営において中心的な役割を担う企業のことを指します。この企業は、工事発注者との交渉、資金管理、構成員の取りまとめ、予算作成などの事務手続き、そしてJV会社の会計処理を行います。これにより、円滑な共同施工を確保する責任があります。
幹事会社は、施工能力が大きい企業が務めることが多く、その出資金比率も構成員の中で最大となります。これにより、プロジェクト全体の統制と成功に寄与します。

構成会社(サブ企業)とは

構成会社(サブ企業)は、ジョイントベンチャーにおいて幹事会社を支援し、特定の技術的専門知識やリソースを提供する企業です。彼らは共同施工の過程で具体的な業務や工程を遂行し、プロジェクトの円滑な進行と成功に貢献します。構成会社はそれぞれの専門分野で役割を果たし、プロジェクト全体の品質と効率を向上させる重要な役割を担っています。

JVの施工方式による区分

JVは複数の施工方式があり、施工方式によって会計処理方法が異なります。

共同施工方式(甲型共同企業体・甲型JV)

甲型は、1つの工事について、あらかじめ定めた出資比率に応じて、各構成員が資金、人員、機械等を拠出して共同施工する方式です。出資比率は、各構成員が取り交わす協定書において定められます。

分担施工方式(乙型共同企業体・乙型JV)

分担施工方式のJVです。乙型は、1つの工事について、複数の工区に分割し、各構成員がそれぞれ分担する工区を責任を持って施工する方式です。分担工事額が、各構成員が取り交わす協定書において定められます。

JVの会計処理について

JV(ジョイントベンチャー)の会計処理は、幹事会社(スポンサー企業)構成会社(サブ企業)に分かれますが、本質的には大きな違いはありません。それぞれの処理内容と目的は、各構成員が出資割合に基づいて完成工事高や工事原価の発生を記録することにあります。

構成会社は、幹事会社からの出資金の請求に応じて支払いを行います。また、幹事会社から提供される原価明細に基づいて会計処理を行います。この過程では、幹事会社から受け取る詳細なコスト情報を基に、自社の会計帳簿に適切な記録を反映させることが求められます。

一方、幹事会社は、全体の資材の購入先や下請け業者への支払い処理を担当します。さらに、構成会社への出資金の請求処理も行います。幹事会社はプロジェクト全体の会計管理を行い、資金の流れを把握し、各構成員との円滑な資金のやり取りを確保します。

これらの会計処理により、各企業はプロジェクトに関わる財務状況を正確に把握し、適切な管理を行うことができます。JVにおける透明性の高い会計処理は、プロジェクト全体の成功と円滑な進行を支える重要な要素となります。各構成員がその役割を果たすことで、プロジェクトの信頼性と効率性が向上します。

JVの二つの会計方式

JVの会計方式には「取込会計方式」と「独立会計方式」の二つがあります。建設省(現:国土交通省)の告示によると、「共同企業体は、原則として独立した会計単位として経理する」とされています。このため、多くのJVでは独立会計方式が採用され、各構成員が独自の会計処理を行います。

取込会計方式とは

取込会計方式とは共同体の代表者の会計に全ての取引を取り込んで処理する方式です。
取込会計方式では、共同体の代表者が全ての取引を自身の会計に取り込んで処理します。これにより、代表会社の財務諸表にJVの会計が組み込まれるため、出資割合に応じた修正が発生するのが特徴です。この方式は、代表会社が一括して会計管理を行うため、各構成員の会計処理が簡略化されるメリットがあります。

独立会計方式とは

独立会計方式とは、共同事業やジョイントベンチャー(JV)において、各参加企業がJVを独立した共同企業体として捉え、独自の会計処理を行う方式です。これにより、各企業は自社の会計基準に基づいてJVの取引を記録し、財務諸表に反映させます。独立会計方式は、各構成員が自律的に会計管理を行うため、透明性と責任の明確化が図られます。

共同企業体(JV)における資金管理

発注者からの取下金(入金)の受領や工事原価の支払は基本的に幹事会社(スポンサー企業)が行います。
幹事会社が構成会社に必要資金の請求を行う出資請求の場合、反対に構成会社に対して発注者から受領した取下金(入金)を分配する取下分配の場合には、幹事会社と構成会社の間で資金の移動が行われます。

組成目的施工方式
①分配方式月次で幹事会社から構成会社に対して、発生した工事原価について出資割合に応じた出資金を請求し発注者から取下金を受領する都度、構成会社に対して出資割合に応じた取下金の分配を行う方法です。
②プール方式工事に必要な資金を幹事会社が立て替える一方で、取下金(入金)の分配を行わずにJV資金としてプールし、竣工後にまとめて精算する方法です。(他企業への出資請求はしない。)
プール方式には構成会社の倒産等により出資金が回収されないリスクの低減、幹事会社による自己資金負担の軽減などのメリットがあります。
③折衷方式プール方式を採用している場合、発注者からの取下げが工程の後半に偏る場合には、幹事会社は構成会社の出資金の立替えが大きくなるため資金負担を強いられます。これを回避するために、出資金が取下分配金を超えてしまった場合は出資請求を行うという、プール方式と分配方式の折衷方式です。

PROCES.Sで行うJV管理とは

建設業ERPシステムPROCES.S(プロセス)では、JVの会計処理に対応する「JV管理」モジュールを用意しています。システムを利用することでJVの会計処理を正しく的確に管理することを後押しします。

「独立会計方式」「取込会計方式」2つの会計方式に対応

JVを企業から切り離し、独立した会計を行う「独立会計方式」、JVの会計処理をスポンサーの会計に取り込んで処理する「取込会計方式」の両方の方式に対応しています。

出資金を自動で計算

JVの構成員比率を元に出資金を自動で計算します。前受金の取り崩しや、端数の処理を踏まえた出資金請求書を発行する事ができます。

JVや自社工事の原価管理を効率化

構成員比率により原価情報を自動振替。JV会社と自社分のデータを重複入力することなく、効率の良い作業が可能です。
JV工事における全体の原価の把握や、枝番管理による協定給与等の管理も可能です。

【機能一覧】JV管理モジュール

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PROCES.Sでは、受注した工事を工種別に予算登録することでそれに対する原価実績を把握したり、材料や外注委託先への発注を管理し工事原価へ連動ができます。複雑なJVの会計処理にも対応しているため経理部や経理担当の負担を大きく減らすことができます。
未だエクセルで管理をしている企業や、JVへの参加が定期的にある企業は、ぜひ導入をご検討してみてはいかがでしょうか。

よくある質問

Q:JVとはどういう意味ですか?
Joint Venture(共同企業体)の略で、通常は企業が単独で受注及び施工を行うが、複数の建設企業が、1つの建設工事を受注・施工することを目的として形成する事業組織体のことです。

Q:JV(共同企業体)の納税義務はどこが負うのですか?
消費税においても、共同企業体が行う資産の譲渡等や課税仕入れは、各出資金等の割合に応じてそれぞれの構成員が支払います。
参考:No.6129 共同企業体の納税義務

Q:インボイス制度において、構成員は幹事会社が発行した精算書を保存すれば仕入税額控除を行うことができますか?
JV工事等の共同事業として、課税仕入れを行った場合に、幹事会社が課税仕入れの名義人となっていること等の事由により各構成員の持分に応じた適格請求書の交付を受けることができない場合、各構成員は、幹事会社が仕入先から交付を受けた適格請求書のコピー及び幹事会社が作成した各構成員の出資金等の割合に応じた課税仕入れに係る支払対価の額の配分内容を記載した精算書の交付を受け、これらを併せて保存することにより、仕入税額控除のための請求書等の保存要件を満たすことになります。
参考:JV工事に係る請求書等

Q:JV会計処理ガイドラインとは?
財団法人建設業振興基金が当該信頼性と透明性に資する情報として公開している、建設工事共同企業体(JV)の会計処理ガイドラインのことです。下記ページからご確認ください。
「建設工事共同企業体(JV)の会計処理-会計処理の実態調査とガイドライン-」(財団法人建設業振興基金)

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