DX(デジタルトランスフォーメーション)が求められる現代において、一元管理は重要な要素です。
これにより、情報の整合性を保ち、業務プロセスを円滑に進めることが可能になります。特に建設業においては、多岐にわたるプロジェクトの情報や関連データを一元管理することで、さまざまなメリットが生まれます。
ERP(統合基幹業務システム)などのシステムを活用したデータの一元管理は、業務効率化やコスト削減、経営判断の迅速化に大きく貢献します。
本記事では、一元管理の概念やメリット、そして建設業におけるERPを活用した具体的なデータ管理方法について詳しく解説します。
目次
一元管理とは?一括管理や集中管理との違い
一元管理とは、社内の各部門に分散している人事、営業、経理などの様々な種類のデータを一つの場所に集約して管理することです。
建設業においては、顧客情報や見積もり、施工、入金など、あらゆる業務で発生するデータを個人や部門ごとにバラバラに管理するのではなく、統合して管理する手法を指します。
一括管理や集中管理といった類似の言葉もありますが、これらはデータを一カ所に集める点では共通しています。しかし、一元管理はデータを集約するだけでなく、集約したデータの管理方法やルールも統一し、組織全体で情報を共有・活用することに重点を置いています。
一方、一括管理は単にデータを集めることを指し、集中管理もデータを一箇所に集約する意味合いが強いですが、一元管理のように管理方法の統一までを含むわけではありません。したがって、一元管理はデータを集約し、さらにその管理方法までを標準化・統一するという、より広範な概念と言えます。
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一元管理が必要な理由
建設業界では、各プロジェクトで多種多様なデータが発生し、各部門や現場で個別に管理されることが多く、この状況が様々な問題を引き起こす要因となります。設計図や施工計画、進捗状況、コスト情報などが分散していると、必要な情報の検索に時間がかかったり、古いデータを使ってしまったりするリスクが高まります。これにより、手戻りやミスの発生、コスト増加、そしてプロジェクト全体の遅延に繋がる可能性があります。
情報を一元管理することで、情報のサイロ化を防ぎ、部門間のスムーズな情報共有を可能になり、業務プロセスの標準化と効率化が図ることができるようになります。
建設業ERPで扱う主要なデータと対象
建設業ERPは、建設プロジェクトに関連する多岐にわたるデータを一元管理することで、業務効率化や意思決定の迅速化を支援します。
管理対象となるデータは、プロジェクトの最初から最後まで発生する様々な情報を含みます。具体的には、プロジェクト全体の管理に関するデータ、工事のコストに関わる原価データ、資材や機材の動きを示す購買・調達データ、現場で働く人員の労務に関するデータ、使用する建設機械や工具などの機材・資産データ、取引先との契約や金銭のやり取りに関する契約・請求・入金データ、現場の品質や安全、環境に関するデータ、そして会社全体の経営状況を示す財務・会計データなどが挙げられます。
原価管理データ
建設業における原価管理データは、各建設プロジェクトを対象とし、プロジェクト名やコード、工期(開始日・終了日)、工事場所、工事種別(新築、改修など)、プロジェクトステータス(計画中、進行中、完了など)といった情報を含みます。現場では、これらのデータに基づき、予算内で工事が進められているか、遅延なく完了できるかなどを日々確認します。例えば、プロジェクトの進捗状況と照らし合わせながら、予定通りに作業が進んでいるか、予算超過のリスクはないかなどを把握するために活用されます。ERPにこれらのデータを蓄積することで、各プロジェクトの状況をリアルタイムで把握し、予算と実績の比較分析が可能となります。これにより、問題の早期発見や対策につながり、プロジェクトの採算性を向上させることができます。
購買・調達データ
購買・調達データは、建設資材や機材の調達、および外注先との取引を対象とするデータです。具体的には、発注書や納品書、請求書などの書類情報、資材や機材を供給するサプライヤーの情報、過去の購買履歴や単価管理に関するデータが含まれます。現場では、これらのデータを活用し、必要な資材や機材を適切なタイミングで予算内で調達します。ERPに購買・調達データを蓄積することで、調達プロセスの可視化が進み、発注ミスを防ぐことが可能です。また、サプライヤー情報や購買履歴を一元管理することで、有利な条件での交渉や、資材価格の変動リスクへの対応にも役立ちます。
労務管理データ
労務管理データは、現場で働く作業員や技術者を対象とし、勤怠情報(出勤、残業、休暇)、日々の作業内容を記録した作業日報、保有する資格や技能に関する情報、そして安全教育の受講履歴などが含まれます。
現場では、作業員の配置計画や進捗管理、そして安全管理のためにこれらのデータが活用されます。例えば、作業日報を通じて日々の作業内容や進捗を確認したり、資格情報を基に適切な人員を配置したりします。ERPに労務管理データを蓄積することで、各作業員の勤務状況やスキル、現場での活動状況を一元的に把握することが可能になります。これにより、適切な人員配置による効率的な作業体制を構築したり、安全管理教育の徹底に役立てたりすることができます。
また、正確な勤怠管理は、適切な給与計算にも繋がります。
契約・請求・入金管理データ
契約・請求・入金管理は、発注者、元請け、下請けといった取引先との金銭に関わるやり取りを対象とします。
このデータには、契約金額や契約条件、工事の進捗に応じた請求スケジュール、そして実際に入金された状況や未収金に関する情報などが含まれます。現場や経理部門では、契約内容に基づいて適切な時期に請求が行われているか、そして期日までに入金が確認できているかなどを管理するためにこれらのデータを利用します。ERPに契約・請求・入金データを蓄積することで、請求漏れや入金遅延といったリスクを減らし、資金繰りを円滑に行うことが可能になります。また、未収金の状況をリアルタイムで把握できるため、迅速な督促や対策を講じることができ、キャッシュフローの改善にもつながります。
財務・会計データ
財務・会計データは、日々の取引記録である仕訳や元帳、月次・年次決算データ、キャッシュフロー管理など、会社全体の経営状況を把握するために不可欠な情報です。これらの情報は主に経理部門で扱われますが、経営層が会社の収益性や財務状況を分析し、今後の経営戦略を立てる上で重要な役割を果たします。ERPに財務・会計データを蓄積することで、リアルタイムで正確な経営状況を把握できるようになり、迅速かつ適切な経営判断を下すことが可能です。建設業に特化したERPであれば、建設業会計に対応しているため、より正確な原価計算や収益認識が可能になります。
一元管理のメリット
データの一元管理には、業務効率化やコスト削減など様々なメリットがあり、建設業においてもこれらの効果は顕著に現れます。情報を一カ所に集約し、部門間でリアルタイムに共有できる仕組みを構築することで、組織全体の生産性向上に繋がります。
業務効率化
データを一箇所に集めることで、重複入力を排除できます。これにより、入力作業にかかる時間や手間が大幅に削減され、ヒューマンエラーの可能性も低減します。
また、必要な情報に迅速にアクセスできるようになるため、資料を探す手間が省け、本来の業務に集中できる時間が増えます。情報共有もスムーズになり、部門間の連携が強化されることで、業務プロセス全体が円滑に進みます。
コストの削減
データを集約することで、様々な角度からコスト削減のメリットが生まれます。紙媒体での情報管理にかかっていた印刷費や保管費を抑えることが可能です。
さらに、情報入力や検索にかかる時間、労力が削減されることで、人件費の抑制にも繋がります。情報の重複や古いデータによる作業ミスが減少し、手戻りによる材料費や追加工事費の発生リスクを低減できます。これらの効率化とミスの削減は、最終的にプロジェクト全体のコスト抑制効果が期待できます。
情報の正確性向上
情報の一元管理は、データの正確性を向上させる効果があります。
複数の場所に同じような情報が点在している場合、それぞれの情報が最新の状態に保たれているか確認が難しく、異なるバージョンのデータが存在してしまう「情報のサイロ化」が発生しやすくなります。
一つの情報源を参照する仕組みを構築することで、常に最新かつ正確なデータに基づいた業務遂行が可能となります。
特に建設業では、設計図や仕様書、進捗状況など、情報の正確性が品質や安全に直結するため、非常に重要なメリットと言えます。正確な情報は、適切な判断や作業指示に繋がり、ミスの発生を抑制し、手戻りやそれに伴う追加コストの発生を防ぐ効果も期待できます。
経営判断の迅速化
経営資源に関する様々なデータが統合され、リアルタイムでアクセス可能となるため、経営判断の迅速化という大きな効果が得られます。
散在していた情報が集約されることで、経営層は会社の全体像や各プロジェクトの状況を網羅的に把握できます。これにより、市場の変化や予期せぬ問題発生時にも、根拠に基づいた迅速な意思決定が可能となります。
例えば、各プロジェクトの原価状況や進捗がリアルタイムで把握できれば、問題のあるプロジェクトに早期にリソースを集中させるなどの対策を迅速に講じることができます。
このように、データの収集・分析プロセスを効率化し、タイムリーな情報提供を可能にすることで、競争の激しい建設業界において機動的な経営を支援するメリットがあります。
データ活用効果
集約されたデータは、様々な分析や活用が可能となり、ビジネスに大きな効果をもたらします。
統合されたデータを分析することで、これまで見えにくかった傾向や課題が明らかになります。
例えば、過去のプロジェクトデータから、どのような条件のプロジェクトで利益率が高いか、あるいはコスト超過が発生しやすいかといった情報を抽出できます。
これらの分析結果を基に、将来のプロジェクト計画の精度を高めたり、リスクの高いプロジェクトに対して事前に対策を講じたりすることが可能になります。
また、蓄積された情報やノウハウを組織全体で共有することで、個人の経験や知識に依存しない標準化された業務プロセスを構築し、組織全体のスキル向上や属人化の解消にも繋がります。
集約されたデータは、単なる記録ではなく、未来の意思決定や改善活動のための貴重な経営資源となるメリットがあるのです。
一元管理によるデメリットとは
一元管理は多くのメリットがある一方で、デメリットも存在します。主なデメリットとして、まず仕組みを構築するための多大なコストと工数がかかる点が挙げられます。新しいシステムを導入する場合、初期費用だけでなく、既存システムとの連携費用やカスタマイズ費用も発生することがあります。
仕組みを構築するためのコストと工数がかかる
データの一元管理を実現するには、新たな仕組みを構築するための多大なコストと工数がかかります。例えば、システムを導入する際には初期費用だけでなく、既存システムとの連携費用やカスタマイズ費用などが発生する場合があります。また、これらのシステムを安定的に運用していくための保守費用も考慮しなければなりません。そのため、事前に十分な予算を確保し、費用対効果を慎重に検討することが重要です。導入後の従業員へのトレーニングにかかる時間や、新しい業務フローへの移行に伴う一時的な生産性低下なども考慮すべき工数となります。
建設業ERPでの一元管理の事例
建設業界においても、ERPを導入しデータの一元管理を実現することで、様々な業務効率化やコスト削減といったメリットを享受している事例が見られます。
ある建設会社では、資材の購買管理システムを導入し、発注先や発注方法が分散していた状況を改善しました。これにより、購買に関するデータを一元管理できるようになり、データ抽出にかかる労力や人的コストを削減することに成功しています。
年間で数千万円規模のコスト削減を実現した事例も報告されており、ERPによる一元管理の大きな効果が示されています。
また、別の事例では、ERPによってプロジェクト単位での労務費や経費の実績、案件の進捗状況などをリアルタイムで把握できるようになり、正確な原価管理や迅速な意思決定に繋がっています。
建設業特有の複雑な会計処理や商習慣に対応したERPは、これらの管理業務を効率化し、企業の内部統制強化にも寄与しています。これらの事例は、ERPを活用したデータの一元管理が、建設業の抱える課題解決と競争力強化に有効であることを示しています。

株式会社笹川組事業内容 建設工事、不動産管理、損害保険業ほか 設立 1952年4月 資本金 1億円 社員数 59名(2024年4月時点・パート社員含) 所在地 滋賀県大津市打出浜13番15号 Webサイト https://www.sasakawa.co.jp/ 導入...

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まとめ
一元管理とは、複数の場所に分散した情報を一つの場所に集約し、体系的に管理することを指します。
建設業において、プロジェクト管理、原価管理、購買管理、労務管理、契約・請求・入金管理、財務・会計管理など、多岐にわたるデータを一元管理することで、業務効率化、コスト削減、情報の正確性向上、経営判断の迅速化、そしてデータ活用の促進といった多くのメリットが期待できます。
従来の紙ベースや部門ごとの個別管理による非効率性やミスの発生といったデメリットを克服する方法として、建設業に特化したERPシステムなどの導入が有効です。
一元管理を成功させるには、自社の課題を明確にし、それに合ったシステムを選定することが重要です。
ERP導入を検討する際には、システムが提供する機能やサポート体制、そしてコストなどを総合的に比較検討する必要があります。
一元管理は、建設業のDXを推進し、変化の激しいビジネス環境で競争力を維持・強化していく上で不可欠な取り組みと言えるでしょう。より詳細な情報や具体的なシステムについては、オンデマンドセミナーにて製品概要をご説明しておりますので是非ご参照ください。
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