建設キャリアアップシステムのご紹介~2019年度本運用開始~

建設キャリアアップシステムのご紹介~2019年度本運用開始~
佐藤 正樹 氏

一般財団法人 建設業振興基金
建設キャリアアップシステム
事業推進センター 次長
佐藤 正樹 氏

 建設キャリアアップシステムの2019年度本運用が目前に迫っています。

 本セミナーでは、2019年1月からの限定運用における検証も踏まえ、「現場登録」の進め方など現場での利用方法などを詳しく解説します。また、本システムを活用した政策展開「技能者の能力評価」「専門工事企業の施工能力等の見える化」についても説明します。

建設キャリアアップシステムの概要

建設キャリアアップシステムの構築

 建設キャリアアップシステムは2019年4月から本運用が始まります。現場の建設技能者のキャリアアップを支援し処遇改善をしていくための仕組みです。まず技能者が資格、社会保険の加入状況などの個人情報を登録します。技能者には1人1枚ずつキャリアアップカードが配布されます。このカードを携帯し、現場に設置してあるカードリーダーにタッチすると、いつ・どこで・誰が・どういう立場で、どういう仕事をしたのかという情報が蓄積されます。

 そのデータをもとに技能者の能力評価を行います。レベルに応じて4種類のカードが発行されます。レベル3やレベル4の技能者が多ければ、その会社は高く評価されるというような制度作りを国土交通省が進めています。

建設キャリアアップシステムの構築

出典:「~若手入職者へのキャリアパスの見える化~ 2019年度本運用開始︕建設キャリアアップシステムのご紹介」セミナー資料より

建設キャリアアップシステムの開発・運用スケジュール

建設キャリアアップシステムの開発スケジュール

 運営主体は建設業振興基金です。2019年1月以降、限定運用をスタートさせ、そこで得た知見をもとに改善・改良し、4月から本運用を開始します。運用開始初年度に100万人の技能者を登録し、5年間で、すべての技能者(330万人)登録を完了するという目標です。

建設キャリアアップシステムの開発スケジュール

出典:「~若手入職者へのキャリアパスの見える化~ 2019年度本運用開始︕建設キャリアアップシステムのご紹介」セミナー資料より

建設キャリアアップシステム「限定運用」対象現場

 限定運用の対象現場は下記の通りです。パソコンに接続したカードリーダーにカードをタッチすることで就業履歴が蓄積されます。機器の盗難防止のため守衛ボックスにカードリーダーを置いてガラス越しにタッチするところもあれば、導線を意識して入り口から詰め所に向かう途中にカードリーダーを置いたところもあり、各現場工夫をしています。

建設キャリアアップシステム「限定運用」対象現場

出典:「~若手入職者へのキャリアパスの見える化~ 2019年度本運用開始︕建設キャリアアップシステムのご紹介」セミナー資料より

建設キャリアアップシステムの利用手順とメリット

建設キャリアアップシステムの利用手順

 利用手順をご紹介します。上が技能者、下が事業者です。技能者は情報の登録→カードの取得→就業履歴の蓄積→経験の見える化、事業者は情報の登録→現場の登録→施工体制の登録→経験の見える化の順に進めます。

建設キャリアアップシステムの利用手順

出典:「~若手入職者へのキャリアパスの見える化~ 2019年度本運用開始︕建設キャリアアップシステムのご紹介」セミナー資料より

建設キャリアアップカードのデザイン

 4種類のカードを発行する予定ですが、カードの色分け、基準については現在、国土交通省の委員会で検討されています。既に、登録基幹技能者にはゴールドカードを発行することは決まっています。カードのICチップには技能者番号のみが記録され、それ以外の情報はサーバー側に記録されます。カードを紛失しても個人情報が漏れることはありません。

カードリーダーの設置例

 2つのパターンがあります。Windows パソコンにUSBで接続するパターンとiPhone、iPadに無線で接続するパターンです。インターネット環境がない場合、いったんパソコンやiPadに情報をため込み、通信が可能になった時点で本体システムに飛ばすことも可能です。カードリーダーと接続するパソコンやiPad向けに「建レコ」という就業履歴登録アプリケーションを無料で提供します。

建設キャリアアップシステムのメリット

 一番のメリットは技能者の処遇改善と現場管理の効率化です。カードを持ったから、ただちに処遇が改善されるわけではありませんが、情報を活用し、ユーザーや発注者が評価することで処遇改善の実現に向けて進んでいきます。データはサーバーに蓄積されますから、うまく使えばいろいろな事務作業の効率化につながります。

建設キャリアアップシステムのメリット

出典:「~若手入職者へのキャリアパスの見える化~ 2019年度本運用開始︕建設キャリアアップシステムのご紹介」セミナー資料より

建設キャリアアップシステムの現場管理の効率化

 システムが本格的に稼働すると、毎日、就業履歴情報が蓄積されていきます。実際に事業者や技能者が登録をしてログインすると、どのような情報が見られるのかというと、下記のような画面が立ち上がります。所属している技能者の情報は見ることができますし、何日働いたのかといった情報も一元管理できますので、労務管理などの業務の効率化を図れます。実際の現場で元請が下請の技能者の保有資格や社会保険の加入状況を確認することも簡単にできます。

建設キャリアアップシステムの現場管理の効率化

出典:「~若手入職者へのキャリアパスの見える化~ 2019年度本運用開始︕建設キャリアアップシステムのご紹介」セミナー資料より

CCUSと既存民間システムとの連携による更なる活用

 すでに賃金管理や安全管理のサービスは民間事業者も提供しており、就業履歴に近いデータを蓄積しています。二度手間になってしまうので、民間システムとのAPI連携という仕組みを取り入れました。

CCUS:建設キャリアアップシステムの略称(Construction Career Up System)

既存民間システムとCCUSの連携メリット

 民間事業者が建設キャリアアップシステムとの連携を希望する場合、必要な書類を建設業振興基金に提出してもらい、セキュリティ上の監査などを経て認定されるという流れです。現時点で20社ほどから応募があります。もちろん、技能者の就業履歴を蓄積する機能がないところは認定を受けられません。

既存民間システムとCCUSの連携メリット

出典:「~若手入職者へのキャリアパスの見える化~ 2019年度本運用開始︕建設キャリアアップシステムのご紹介」セミナー資料より

登録申請の概要

建設キャリアアップシステム登録のポイント

 3つのポイントがあります。

 1つ目は登録申請手続きは書面またはインターネットで受け付けしています。書面の場合、郵送申請と受付窓口申請の2通りの方法があります。建設キャリアアップシステムのホームページにガイダンス動画がありますので、参照してください。登録料は紙申請3,500円、インターネット申請2,500円です。事業者が先に登録すると、自社の技能者情報をexcelのフォーマットに一括して登録する機能も用意しました。ただし、本人確認書類などの証明書類の添付は一人ずつ必要です。

 2つ目はインターネット申請の場合、資格情報などの添付書類はJPEG(ジェイペグ)形式で登録していただきます。人数が多いと手間がかかりますから、個人ごとのフォルダーに分けて登録するとスムーズにいくと思います。

 3つ目は申請手続きは事業者登録を先に行い、次に技能者情報を登録申請するほうが効率的です。技能者の就業履歴を蓄積することが、このシステムの一番の目的です。事業者と技能者の所属がひもづけられないと施工体制に登録するとき、その技能者を会社が呼び出せません。技能者が登録するとき、事業者番号(事業者ID)を書く欄があるので(空白でも登録は可能です)、技能者が登録する時点で事業者がIDを持っていれば、その欄が埋まるのでひもづけが容易になります。

建設キャリアアップシステムを活用した政策展開

建設キャリアアップシステムを活用した技能者の処遇改善に向けた取組

 このシステムは技能者の処遇を改善し、建設業に若い人を呼び込むことをねらっています。もちろん、今、働いている人が今後も建設業界で働き続けられるよう処遇を改善し、離職を防ぐねらいもあります。技能者は経験や知識・技能、マネジメント能力などでレベル分けされます。

 建設キャリアアップシステムは業界横断的に統一的な基準で行いますから、たとえば「経験は就業日数で」「知識・技能は保有資格で」「マネジメント能力は職長等として働いた日数で」といったシステムに登録・蓄積された客観的データを元にします。それに応じて専門職種団体ごとに能力評価基準を作成すれば、技能者を4段階で評価することができます。所属している企業に、どのレベルの人が何人いるのかが客観的にわかりますから、専門工事企業の評価制度に利用することができます。

特定技能外国人の受入れについて<

 国交省の建設キャリアアップシステムと関連する施策として外国人労働者の受け入れ拡大があります。建設関係の特定技能外国人を雇用する事業者と、その外国人は建設キャリアアップシステムの登録が義務づけられています。監理団体に提出された就労計画が、きちんと実行されているかどうかを、このシステムと連携して確認していく仕組みを今、国土交通省が構築しています。

システムを活用した社会保険加入対策

 事業者と技能者でひもづけた情報を見れば、適切な社会保険に加入しているか、適用除外なども含めて一定の判定ができます。未加入の場合、元請企業が指導を行ったり、現場入場を認めなかったりといった加入対策を実施します。

建設キャリアアップシステムを活用した働き方改革への対応

 民間事業者が建設キャリアアップシステムとの連携を希望する場合、必要な書類を建設業振興基金に提出してもらい、セキュリティ上の監査などを経て認定されるという流れです。現時点で20社ほどから応募があります。もちろん、技能者の就業履歴を蓄積する機能がないところは認定を受けられません。

既存民間システムとCCUSの連携メリット

出典:「~若手入職者へのキャリアパスの見える化~ 2019年度本運用開始︕建設キャリアアップシステムのご紹介」セミナー資料より

現場での建設キャリアアップシステム利用手順(ポイント)

建設キャリアアップシステム利用手順(全体像)

 4月の運用開始に向けてマニュアル類の書き替えや画像の入れ替えなど必要な情報の補充作業を急ピッチで進めています。ホームページでも全9章を3月1日に公開する予定です。

ポイント1 組織情報の登録(対象:元請・下請)

 システムにログインするためには管理者IDが必要です。管理者IDを複数取得することも可能で、第1階層から第3階層まで階層分けすることもできます。たとえば本社が第1階層で、支店を第2階層、支店内の部門を第3階層とし、第2・第3階層の管理者IDには閲覧制限をかけることも可能です。

ポイント2 現場・契約情報の登録(対象:元請)

 管理者を設定した後、現場の情報をどのように登録するか。3パターンご用意しました。「こうしてください」ではなく、「こういうパターンがありますので、自社の状況に合わせてお使いください」ということです。パターン1は、それぞれの現場で登録するもの、パターン3は複数の契約・現場をまとめて登録するもの、パターン2は両者の中間で、工事は1カ所だが、A棟・B棟・C棟と分かれている場合などを想定しています。

ポイント2 現場・契約情報の登録(対象:元請)

出典:「~若手入職者へのキャリアパスの見える化~ 2019年度本運用開始︕建設キャリアアップシステムのご紹介」セミナー資料より

ポイント3  施工体制の登録(対象:元請及び下請)1

 元請が登録した後、元請・下請が協力して施工体制情報を登録します。元請がこのシステムに参加していなければ、下請は施工体制を登録できないので、現場では就業履歴の蓄積はできません。

ポイント3  施工体制の登録(対象:元請及び下請)2

 毎回、施工体制を登録するのは手間がかかりますので、施工体制のパターン登録や上位の事業者による代理手続きなど簡便な方法を用意しました。

ポイント3  施工体制の登録(対象:元請及び下請)3

 具体的に、どのような情報を登録するか。図の左下の「作業員名簿への技能者の登録時に設定する項目」を参照してください。同じ技能者が複数の事業者に登録される可能性があるので、カードリーダーにタッチしたとき、その情報がどちらに登録されるのか迷子にならないように施工体制を指定する項目も設けられています。

ポイント3  施工体制の登録(対象:元請及び下請)3

出典:「~若手入職者へのキャリアパスの見える化~ 2019年度本運用開始︕建設キャリアアップシステムのご紹介」セミナー資料より

ポイント4 カードリーダーなどの手配(対象:元請)

 情報を登録してカードリーダーを設置するのは元請の役割です。カードリーダーにタッチして就業履歴の情報を登録するごとに人日単位で3円が課金されます。この3円は元請に請求する仕組みになっています。用意する環境は右下にある通り。これらに加えて就業履歴登録アプリ「建レコ」が必要です。小さい現場で、カードリーダーを用意するのは大変な場合、就業履歴を、手入力することもできます。

ポイント5 就業履歴登録(対象:元請及び技能者)

 「建レコ」をダウンロードし、アプリを立ち上げ、「就業履歴登録開始」というボタンを押します。1日が終わり、技能者の退場を確認したら登録終了ボタンを押すと、その日の就業履歴がサーバーに飛ぶ仕組みになっています。

 個別に入力した情報は元請の承認が必要です。例えば、直接入力をすると所属事業者、1次下請事業者、元請に確認・承認してくださいというメールが飛びます。インターネット環境に不具合がある場合、技能者がキャリアアップカードを忘れた場合、小規模現場でカードリーダーを設置できない場合などを想定しています。 

建設キャリアアップシステムの利用料金

建設キャリアアップシステムの利用料金

 「システムの利用料金」は下記の通りです。技能者の登録料は、いくつか割引措置があり、2019年3月までにインターネット申請した場合、500円値引きし、60歳以上の技能者も同様に500円割引きされます。事業者は登録料と利用料がかかります。登録料は資本金によって異なります。管理者ID利用料は1IDあたり2,400円ですが、2019年3月までは利用数に関わらず無料、2019年4月~2020年3月の期間、1ID分は無料です。現場利用料は元請のみにかかる費用で、就業履歴回数1回(1人1日単位)で3円です。 

建設キャリアアップシステムの利用料金

出典:「~若手入職者へのキャリアパスの見える化~ 2019年度本運用開始︕建設キャリアアップシステムのご紹介」セミナー資料より

佐藤 正樹 氏
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一般財団法人 建設業振興基金
建設キャリアアップシステム事業推進センター 次長
佐藤 正樹 氏

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➡ https://www.ccus.jp/(外部サイト)

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