予算編成の見直しで不安の声/国土強靱化予算を含めた公共事業関係費の着実な確保を

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     高市早苗首相が掲げる「責任のある積極財政」の実現に向け、政府は予算編成のあり方を抜本的に見直す。2027年度予算要求で各省庁の予算要求に上限を設けない考えで、通常の政策はすべて当初予算に計上し、「補正予算ありき」の財政からの転換をはかる。ただ、建設業界からは「当初予算で必要な予算額を確保するのはありがたいが、これまで補正予算で手当されてきた国土強靱化予算が本当に確保されるのか」という不安の声が漏れる。ここ数年、国土強靱化予算も含め公共事業予算額は一定額が確保されていたが、資材費や人件費の高騰で実質的な事業量は減少している。公共事業予算は今後もきちんと確保されるのか……。

    補正予算は緊要性の高いものに限定し、必要なものは当初予算で

     2026年6月25日に開かれた経済財政諮問会議。片山さつき財務相は危機管理投資・成長投資のための「強く豊かな日本」投資枠を創設する考えを示した。同時に2027年度の各省庁の予算要求で上限を設けない方針を明らかにした。一方、民間委員は「補正予算は緊要性の高いものに限定し、恒常的、反復的、予見可能な施策については原則として当初予算で措置することで、補正予算依存から脱却すべき」と提案した。高市首相も同様の考えと言われ、必要な予算は当初予算でできるだけ確保する方針だ。

     「強く豊かな日本」投資枠は、高市政権が提唱する「戦略17分野」に関する予算に充てる。17分野には「AI・半導体」や「エネルギー安全保障・GX」、「次世代型太陽電池」、「水素等」、「洋上風力」などがあり、「防災・国土強靱化」も含まれている。すでに官民投資の想定規模が発表されており、投資規模は2040年度までの累計で370兆円超が想定されている。

     17分野の「防災・国土強靱化」は2030年度までで2・6兆円超を想定。この中には2025年6月に閣議決定された第1次国土強靱化実施中期計画の「推進が特に必要となる施策」の事業規模「おおむね20兆円強程度」の一部が加わるとされている。具体的には防災・国土強靱化を加速させる自動施工・遠隔施工、老朽化対策の技術・製品や、洋上風力の風車製造拠点創出などへの投資を支援する。

    戦略分野の「防災・国土強靱化」は「防災技術」への投資

     ただ、2027年度補正予算での国土強靱化予算や、戦略17分野の「防災・国土強靱化」の官民投資への手当て分とも「扱いは未定」(内閣官房幹部)で、不透明な状況にある。建設業界が懸念を抱いているのは、ここ数年、国土強靱化予算が補正予算で手当されていて、全額当初予算でこれまで以上の予算額が確保されるのかということだ。さらに、戦略17分野の「防災・国土強靱化」がインフラ整備そのものの投資ではなく、「防災技術」への投資となることで、インフラ整備とは違うものだということだ。

     このため、本年度の補正予算で国土強靱化予算がどの程度計上されるのか見通しが立っておらず、さらに来春から消費税税率が下げられた場合、その財源確保の議論が進んでいないため、当初予算に国土強靱化予算を計上するにしても、何らかの影響が出るのではないかという心配もある。

    本年度から国土強靱化中期実施計画がスタート

     国土強靱化対策は、毎年のように発生する自然災害を踏まえ、2013年12月に議員立法で成立した「強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靱(きょうじん)化基本法」に基づいて実施されている。2014年3月に閣議決定された基本計画が最初の計画で、その後2018年度から2020年度までの3カ年を対象にした「3カ年緊急対策」が策定された。3カ年で約7兆円の事業規模(国費ベースでは約2・5兆円)が示された。この緊急3カ年計画は当初予算に別枠で予算が計上され、安定的な措置が執られた。

     次に打ち出されたのが「国土強靱化のための5か年加速化対策」(対象期間は2021~2025年度)。事業規模は約15兆円。国費ベースでは概ね7兆円台半ばとされた。2025年6月に内閣官房が示した国土強靱化年次計画2025によると、事業規模は5年間総額で約15・6兆円、うち国費は8・0兆円で、いずれも当初計画を上回ったとしている。ただ、予算措置は当初予算ではなく、すべて補正予算で手当てされた。

     国土強靱化5か年加速化対策は、国土強靱化の計画について閣議決定されていたものの、事業規模などの法的な裏付けがなかった。このため、国土強靱化の「実施中期計画」の策定や期間、事業規模の明示などを盛り込んだ改正国土強靱化基本法が2023年に成立した。本年度からスタートした「第1次国土強靱化実施中期計画」は、この法律に基づいて初めて策定されたもので、2026~2030年度の5カ年が対象期間となる。

     事業規模は「おおむね20兆円強程度」。これまでの計画の国費分の扱いを勘案すると、新計画の国費は10兆円程度になりそうだ。さらに、新計画では資材価格や人件費の高騰を「毎年の予算編成で適切に反映する」とし、事業費の上乗せに含みも待たせている。

     事業内容は▽災害外力・耐力の変化へ対応▽人口減少等の社会状況の変化への対応▽事業実施環境の変化への対応―を基本的な考え方として示し、この5年間に実施すべき326施策と、特に推進が必要な114施策を明示している。

    2025年度は2兆円強には及ばない1兆5500億円

     ただ、2025年度補正予算では、国土強靱化関係は国費が2兆5095億円で、うち公共事業関係費は1兆6539億円にとどまった。2026年度からの第1次国土強靱化実施中期計画の初年度分として「推進が特に必要となる施策(114施策)」には1兆9159億円を計上。うち公共事業関係費は1兆5500億円。仮に国費が5年で10兆となるのであれば、年間2兆円が最低でも必要となるが、その2兆円にはまったく及んでいない。

     2026年度当初予算をみても、国土強靱化関係予算額は5兆3510億円で、うち公共事業関係費は4兆1106億円。前年度に比べてわずか1%増でしかない。建設費や人件費などが高騰していることを考慮すると、国土強靱化対策事業費は、実質的には減少していやると言えるだろう。

    年間の公共事業関係予算額(国土強靱化予算も含む)を9兆円以上に

     2019年度から国の当初予算に占める公共事業関係費は約6・1兆円で推移している。一方、補正予算は公共事業関係費と国土強靱化予算で毎年度約2・0兆円~約3・25兆円が計上されている。当初予算と補正予算を合算した各年度の公共事業関係予算額(国土強靱化予算も含む)は約8・1兆円~約9・35兆円となる。

     この合計額を上回る公共事業関係費を本当に2027年度当初予算で全額確保できるのだろうか。まずは本年度補正予算で国土強靱化予算の一部を計上する必要があるのではないのか。特に資材費や人件費などの高騰で、実質的に使える予算は減少しているため、2025年度と同等額程度の計上が求められる気がする。

     日本建設業連合会や全国建設業協会らは予算確保に対する危機感を抱き、政府関係者などを訪ね、国土強靱化実施中期計画に係る予算や物価上昇分も含め、2025年度補正予算と2026年度当初予算の合計を大きく上回る公共事業費の確保を訴えている。この危機感は建設業界全体が持つべきであり、業界が一丸となって今こそ行動に移して行かなければ、必要な予算が確保されるのかどうか、不安は拭えない。

    坂川 博志 氏
    執筆者
    日刊建設工業新聞社
    専務取締役事業本部長
    坂川 博志 

    1963年生まれ。法政大社会学部卒。日刊建設工業新聞社入社。記者としてゼネコンや業界団体、国土交通省などを担当し、2009年に編集局長、2011年取締役編集兼メディア出版担当、2016年取締役名古屋支社長、2020年5月常務取締役事業本部長を経て、2025年4月から現職。著書に「建設業はなぜISOが必要なのか」(共著)、「公共工事品確法と総合評価方式」(同)などがある。山口県出身。
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