2030年問題とは? 建設業の人手不足、対策とおすすめソリューション

公開日:2025.6.13
更新日:2025.6.27

建設業が直面する2030年問題、どう乗り越えるか?

以前、ご紹介した2024年問題2025年問題に続く年問題として、現在、2030年問題が取り沙汰されています。本問題の影響は、やはり労働力の不足という形で色濃く顕れるでしょう。特に建設業では、深刻な人手不足に加え、時間外労働の上限規制によって工事処理能力が大幅に低下しています。さらなる労働力の不足は業界そのものを揺るがしかねません。本稿では、2030年問題で深刻化する建設業の人手不足問題について、実態から対策までをわかりやすく解説します!


2030年問題とは?

わが国では、少子化による人口構造の変化が急速に進むなかで、2030年には国内人口の三人に一人が65歳以上に達すると推計されています。それに伴う諸問題は、2030年問題と総称されます。

以前ご紹介した2025年問題では、1947~49年(昭和22~24年)に生まれた団塊の世代が2025年(令和7年)に75歳以上となり、人口の約五人に一人が後期高齢者になることをお伝えしました。

内閣府の発表によれば、2023年(令和5年)10月1日時点での高齢化率(65歳以上人口比率)は29.1%75歳以上人口比率は16.1%で、すでにわが国が高齢化社会や高齢社会ではなく、未曽有の超高齢社会にあることがわかります(表1)。

表1 高齢化社会・高齢社会・超高齢社会それぞれの基準
高齢化率の基準 由来
高齢化社会 7% 1956年の国連の報告書において、当時の欧米先進国の水準をもとにしつつ7%以上を「高齢化した(aged)」人口と呼んでいたことに由来
高齢社会 14% 国際比較において高齢化率が7%から14%に到達するまでの倍化年数が高齢化進展速度を示す指標として使われていることから、高齢化率14%を超えたものを高齢社会と呼んでいるものと考えられる
超高齢社会 21% 国連では、高齢化社会の高齢化率7%を基準にして、3倍すなわち21%を超える社会を超高齢社会と呼称している

2030年には、労働力の獲得競争をはじめとして、さまざまな影響が出ることは避けられません。


建設業における人手不足の現状

こうした人口動態を受けて、とりわけ建設業では深刻な影響が予想されます。もとより人手不足・担い手不足と高齢化の傾向が著しい建設業では、労働力獲得競争のさらなる激化は業界の持続的成長を脅かしかねません。

本項では、建設業の人手不足・担い手不足の現状についておさらいしてみましょう。

内閣府が発表する建設業の労働需給をみると、全産業と比べて雇用人員判断D.I.の不足超幅が大きく、関連職種の有効求人倍率も職業計に比べて高水準の状況が続いています(図1)。

図1 人手不足の現状

雇用人員判断D.I.とは?

雇用人員判断D.I.(Diffusion Index)とは、日本銀行の短観(全国企業短期経済観測調査)で用いられる、企業における雇用人員の過不足についての判断を示す指数。

雇用人員判断D.I.=(過剰と回答した企業の割合)-(不足と回答した企業の割合)

D.I.がマイナスであれば人手不足、D.I.がプラスであれば人余りと考えることができる。

現在、建設業従事者は全体でみても減少傾向にありますが、特に若年層の建設業離れが加速しています。

建設業従事者数の 2007年差を年齢階級別に内閣府がまとめた資料をご覧ください(図2)。64歳以下が大きく減少し、65歳以上が年齢層を押上げていることがわかります。

続いて、若年層の建設業離れの原因を探るべく厚生労働省が離職者に行なったアンケート調査をみてみましょう(図3)。休みの少なさや賃金の低さ雇用の不安定さなどに票が集まっていることがわかります。

図2 建設業従事者の年齢別動向
図3 若手の技能労働者が定着しない主な原因

全業種で人手不足が進むなか、好条件を求めて異業種へ人材流出することは避けられない流れといえるでしょう。

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令和7年(2025年)6月8日、日本経済新聞が「縮む建設業、工事さばけず 未完了が15兆円超え過去最大」と題する記事を発表しました。わが国を牽引する基幹産業に現在進行形で起こるかつてない危機に、各方面で大きな反応があったことは記憶に新しいところです。

記事では、昨今の人手不足と残業規制を受けて建設工事の処理能力が激減し、受注できても着工できない現状が生々しく伝えられています。建設業は労働集約型の産業であるため、まずなによりも「人」がいなければ成り立ちません。

傾向として、現場技能者の減少のほかにも、現場監督(施工管理技術者)の不足が顕著です。ご存じのとおり、建設業法第26条では、建設工事の現場に施工管理・監督を行なうため、一定の資格・経験を有する技術者を配置する必要があることが定められています(図4)。人手不足と建設需要の高まりが相まり、こうしたハイスキル人材を確保することは、難化の一途を辿っています。

図4 建設業法第26条

2030年問題、建設業への影響とリスクは?

前項までで、2030年問題に伴う人口動態の激変と建設業における人手不足の現状を解説しました。本項では、2030年問題によって、建設業にどんな変化が起こるのか? その影響とリスクについて解説します。

総務省の「労働力調査」(令和4年平均)をもとにしたグラフをご覧ください(図5)。建設業従事者の25.7%が60歳以上となっており、構成比率では65歳以上が最多です。

2030年、こうした年齢層の熟達した従事者の大量離職が予想される一方で、若手世代の入職は思うように進んでいません。過疎地は当然として、都心部でも、いま以上の人手不足になることは間違いないでしょう。そのため、建設業事業者の多くがDXICT活用に活路を見出し、さまざまな取組みを進めています(後述します)。

図5 年齢階層別の技能者数

すでにご存じのように、政府の賃上げの方針を受けて、建設現場で働く技能労働者の賃金もあらゆる職種で軒並み上昇しています。日本建設業連合会の資料によれば、公共工事設計労務単価は令和3年(2021年)3月から令和7年(2025年)3月までのわずか49カ月で22.9%も上昇しているとのこと(図6)。

公共工事設計労務単価とは?

建設技能者の賃金相当として積算される。全国の労働市場の実勢価格をもとに、毎年政府において決定する。

図6 公共工事設計労務単価の引上率

このまま労働力不足が進めば、より待遇のよい他業種との間で労働力の争奪戦になることは避けがたく、そうなれば労務費・人件費の上昇に歯止めをかけることは、実質的に不可能です。

建設業従事者の処遇改善は、当然ながら必要ですが、一方で、価格転嫁を進めながら業績の悪化を避けなければならない経営者の負担は小さくありません。

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建設業は、作業工程や成果物に関わる人びとの安全がなにより求められるため、高度な品質管理、また、それを裏打ちするたしかな技術と知識が求められる業種です。そうしたスキルは、現場での経験を積んでこそ身につくものであるため、情報資産として残しづらい分野でもあります。

ベテランの技術者が大量に離職することで、業界の財産ともいうべき貴重な技術が失われることは、施工の品質管理に関わる大問題です。若手の入職が滞るなか、ベテランのスキルを如何に継承するかは、建設業にとって喫緊の課題といえるでしょう。

帝国データバンクの資料では、令和6年(2024年)上半期(1~6月)に発生した182件の人手不足倒産のうち、建設業が55件を占めていることが報告されています。

国策となる半導体工場の建設ラッシュや高度経済成長期に建設され老朽化が進むインフラ整備など、建設需要自体は旺盛ながら、人手不足によって応えられず、少なからぬ企業でキャッシュフローが破綻する現状が浮き彫りになっています。

2030年に向け、今後も人手不足がさらに進めば、建設業における人手不足倒産件数はさらに増加するでしょう。

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道路橋、トンネル、下水道、港湾など、わが国の社会資本は高度経済成長期に集中的に整備されました。そのため、今後、一斉に老朽化することが懸念されており、その維持管理と更新は業界にとって喫緊の課題です。

国土交通省のインフラメンテナンス情報によれば、2030年には道路橋の54%、港湾施設の44%、トンネルの35%が建設後50年以上に達します(表2)。

表2 建設後50年以上経過する社会資本の割合
2023年3月 2030年3月
道路橋 約37% 約54%
トンネル 約25% 約35%
河川管理施設 約22% 約42%
水道管路 約9% 約21%
下水道管路 約7% 約16%
港湾施設 約27% 約44%


建設業での人手不足対策は?

建設業の人手不足を食い止めるべく、現在、官民挙げてさまざまな取組みが実施されています。本項では、3つのセクションに分けて、その一例をご紹介しましょう。

いうまでもなく、建設業の労働環境の改善はまず取組むべき課題です。賃金や休日数、労働時間などで他業種に見劣りする現在、若年層の建設業離れは無理からぬことといえます。

例えば労働時間では、2022年(令和4年)の調査で建設業における年間労働時間は1,986時間、調査産業計に比べて約270時間の長時間労働となっています(図7)。

キンタイ画面ロゴ

基幹システムと連携する、建設業向け勤怠管理システム。

業種別年間休日日数の調査でも、建設業は113日と少なく、建設工事現場で技術者の約4割が4週4休以下で就業していることがわかります。理想は週休2日が確保される4週8閉所の定着ですが、実現まではまだ時間がかかるでしょう。

屋外業務がつきものである建設業では、炎天下や厳寒のなかでの作業を避けられません。従業員の安全のためにも、他業種以上に勤怠管理が重要になります。

業界で深刻さを増す人手不足、また、それを受けての特定技能制度などの法整備を受けて、わが国で建設業に従事する外国人材は急速な増加傾向にあります。

建設分野で活躍する外国人の数は2024年(令和6年)時点で約14万人、これは全産業の約7.1%にあたる数字です。国別受け入れ状況でみるとベトナムが最も多く、フィリピン、インドネシア、中国と続きます。こうした外国人材は、わが国の人手不足問題に対する大きな助けになると期待されています。

特定技能制度とは?

深刻化する人手不足で人材確保が困難な産業において、一定の専門性・技能を有する外国人を日本人と同等の待遇で受け入れる制度。2018年(平成30年)に新たな在留資格として創設。受け入れ可能な分野は16にわたり、建設業もその対象に含まれている。

一方で、マイナビグローバルの2024年の調査では「現在の在留資格が切れたあとも日本で働きたい」と回答した人は91.0%で、前回調査の2022年よりも5.8pt減少しています。外国人材の日本での就労意欲がやや低下していることがみてとれます。

日本で働きたくない理由としては「円安」と回答した人が38.5%と最も多く、自国通貨に換算した際の収入が目減りしていることも大きな要因であることがわかります。今後も外国人材から選ばれるために、日本の建設業が就労先として魅力的であることを継続的に発信していく必要があるといえるでしょう。

外国人材とともに建設業の人手不足解消の要と目されているのが、建設DXです。以前の記事でお伝えしたように、建設DXはあらゆる領域に及びますが、本項では人手不足解消に特に威力を発揮するであろう3つのポイントに絞って解説します。

現場技術者の専任義務の合理化

すでにご存じのとおり、建設業の担い手確保・業務効率化のために、第三次・担い手3法に代表される法整備が進められています。

建設業法第26条では、施工水準を担保するために技術力を有する技術者(監理技術者・主任技術者)を工事現場ごとに配置することが求められています。従来、こうした技術者には、特定の工事に対し、専任であることが求められてきました。

ただ、令和6年(2024年)12月13日以降、ICTなどにより工事現場の状況確認ができる場合、請負代金が1億円未満(建築一式工事については2億円未満)の工事について、2現場まで兼務できるようになっています。監理技術者・主任技術者不足解消の糸口になることが期待されます。

ここでいうICTとは、BIM/CIMなど測量・設計データの電子化、施工データのクラウド化、遠隔臨場などによる集中管理を指すものと解釈できます。

第三次・担い手3法
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第三次・担い手3法(建設業法等改正2024-2025年)3つのポイント、
事業者の対応は


技術継承

建設現場の技術継承問題を解決すべく、注目されているのがXRCross Reality技術です。XRとは、AR(拡張現実、Augmented Reality)、MR(複合現実、Mixed Reality)、VR(仮想現実、Virtual Reality)などの総称であり、閲覧教育教材などへの活用が進んでいます。

また、地域密着型の建設業では、現場技術者の持つ地理情報や構造物の把握といった暗黙知をデータ化することで次世代に継承する動きも報告されています。オープンソースを活用した安価なGISGeographic Information System)を開発し、台帳図の構造物をポリゴン化、全員で共有するというもので、カーナビのようにパト車に搭載されているようすが紹介されています。

バックオフィスのDX

建設DXは、現場だけのものではありません。国土交通省が公表した「情報通信技術を活用した建設工事の適正な施工を確保するための基本的な指針ICT指針)」では、バックオフィスのICT化についても大きく頁が割かれています。

例えば電子入札電子契約について、本指針では建設業の業務効率化に大きく資するものと位置づけられており、下請事業者における導入を促進するとともに、公共発注者についても導入が遅れている市区町村を中心に取組みを強化すべきである旨が記載されています。

DXによるバックオフィスの省人・省力化は、初期費用も比較的安価である一方で効果を見込みやすいことから、多くの事業者が積極的に取り組んでいます。

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基幹システムや文書管理システムと連携する、
建設業向け電子契約サービス。

建設業ERP、PROCES.Sのご紹介

前述のように、建設業の業務効率化、人手不足対策においては、現場とオフィス両面のDXがきわめて有効です。建設IT NAVIでは、バックオフィスの業務効率化に最適のソリューションとして、建設業ERP “PROCES.S”をおすすめしています。

PROCES.S

業界特有の建設業会計を前提に開発され、工事原価管理や給与労賃管理、請求入金管理など、多岐にわたる煩雑なバックオフィス業務をワンパッケージでカバー。前項まででご紹介した電子契約サービス“UC+ケイヤク”、勤怠管理システム“UC+キンタイ”などの周辺システムともシームレスに連携します。ひとつのシステムで基幹業務を網羅するため、担当者の習熟も容易で、二重入力に代表される非効率も発生しません。

PROCES.Sを導入したことで、経理業務を半分の人員で行なえるようになった池田建設さまの導入事例と、残業時間29.7%カットに成功した工成舎さまの導入事例をご紹介します。ご関心のある方は、こちらもぜひご覧ください!


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【参考】
・内閣府「令和6年版高齢社会白書
・内閣府「今週の指標 No. 1334 建設業の労働供給について
・国土交通省「建設業の働き方として目指していくべき方向性
・国土交通省「建設業を巡る現状と課題
・国土交通省「インフラメンテナンス情報
・国土交通省「建設分野における外国人材の受入れ
・国土交通省「概要、関係資料【特定技能制度(建設分野)】
・国土交通省「現場技術者配置要件の合理化について
・国土交通省「ii. XR技術(視覚拡張技術)の調査
・国土交通省「ICT技術を使った熟練技術者の技術継承
・国土交通省「建設業におけるICTの導入・活用に向けた施策について(ICT指針・ICT指針事例集・中小企業省力化投資補助金)
・国土交通省関東地方整備局「5.現場配置技術者 ①(監理技術者等の配置) 建設業法第26条
・国土交通省東北地方整備局「建設分野における外国人材の受入れ状況等について
・国際連合日本政府代表部「Presentation by H.E. Mr. Yoshifumi Okamura,Ambassador and Deputy Representative of Japan to the United NationsAt a side event to the High Level Political Forum“Mainstreaming Gender and Aging in the SDGs”
・一般社団法人 日本建設業連合会「建設工事を発注する民間事業者・施主の皆様に対するお願い(2025年5月版)
・株式会社マイナビグローバル「日本在留外国人の日本での就労意欲・特定技能への意識に関する調査
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